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マイクロソフト、Blasterウイルスの記者説明会開催

~緊急対策にCD-ROMの配布も実施

取締役経営戦略担当 東 貴彦氏
 マイクロソフトは、都内でBlasterウイルスの状況について記者会見を行なった。冒頭、取締役経営戦略担当 東 貴彦氏が現状について説明した。企業や産業への被害が予想よりも拡がらなかったとし、「各企業のシステム担当者の努力や、セキュリティに対する理解、各対策ソフトベンダーなどのパートナー企業の協力が得られたのは良かった。また、岡山ではボランティアによる取り組みが起こり、我々も総務省や経済産業省とコミュニケーションを適宜とれたので、被害の拡大を防げたのでは」と分析した。

 一方、一般ユーザーについては「必ずしも十分な対応ができなかった」という。「メールやWebサイトで対応はしていたが、そもそもウイルスによりインターネットにアクセスできない状況に陥ったユーザーにとっては意味のないこと。ネットワークを使った告知に依存しすぎてしまった」とし、今後は修正プログラムなどをCD-ROMで配布することなども計画しているという。


脆弱性の発見から、Blasterウイルス検出、被害拡大まで

グローバルテクニカルサポートセンターセキュリティレスポンスチームマネージャ 奥天陽司氏
 続いてグローバルテクニカルサポートセンターセキュリティレスポンスチームマネージャ 奥天陽司氏が、脆弱性の発見からBlasterウイルス被害の拡大にかけての経緯を述べた。

 奥天氏によれば、最初に脆弱性が発見されたのは2003年6月27日。L.S.D.からマイクロソフトに連絡が入り、問題の明確化、修正プログラムの検討、過負荷テストなどを約2週間、7月14日まで行なった。その後、7月17日に26番目の脆弱性として「MS03-026」を公開。脆弱性の重大さから、Webサイトや新聞、雑誌など各媒体で報道された。

 脆弱性「MS03-026」を攻撃するプログラムが発見されたのが7月末。奥天氏は「この時期に攻撃プログラムが開発されているとは思わず、開発の早さに驚いた」とコメントしている。攻撃プログラムの発見を受け、マイクロソフトでは7月25日に「MS03-026」の再告知と対策用特別ページを用意。製品登録ユーザーなどに総計146万通のメールを送信した。

 8月には「MS03-026」対策の緊急体制が敷かれた。具体的にはシマンテックやトレンドマイクロといったアンチウイルスソフトベンダーや、セキュリティコンサルティング会社ラックなどセキュリティパートナーとホットラインを開設し、攻撃に対する事前調査などが開始された。8月6日には、STPP(Strategic Technology Protection Program)の会合も開催され、大規模被害時の対応方法を検討するなど意見交換も行なわれたという。

 マイクロソフトでは、最初にBlasterウイルスが検出されたのは日本時間で8月12日。同日対策ページと再度メールでの告知を行なった。翌13日には法人顧客への緊急対応を実施へ。14日・15日と報道機関に対し、セキュリティ窓口の24時間対応や特設Webページのアナウンスを行ない、パソコン以外のアクセス方法として、FAX対応やiモードサイトなどもスタート。全国紙に“対策告知広告”も掲載した。奥天氏によれば、「全国紙の広告は、最小限の方法を告知したもので簡単に安心して行なえるものにした」という。

 同社によれば18日現在、窓口で受け付けた問い合わせは、通常の40倍以上にもなっているという。また、Webアクセスも通常の5倍以上。修正プログラムのダウンロード数については実数は明らかにされていないが、「桁違いのダウンロード数」(奥天氏)という。


2003年に判明した脆弱性 脆弱性「MS03-026」についてはL.S.D.の通報により判明

脆弱性「MS03-026」の発表は7月中旬になった 7月下旬には攻撃プログラムがインターネット上で発見された

攻撃プログラム発見を受け、8月から緊急体制が敷かれた Blasterウイルスが検出されたのは、日本時間で8月12日

検出後、各媒体やWebサイトでアナウンス。FAXなどパソコン以外のアクセス方法も講じられた 12日からの問い合わせ状況。深夜を除きひっきりなしの状態だったという

Blasterは収束に向かっているが新種の亜種が替わって猛威を振るっている

株式会社ラック JSOC事業本部取締役本部長 西本逸郎氏
 株式会社ラック JSOC事業本部取締役本部長 西本逸郎氏が、Blasterウイルスやその亜種に関して解説した。

 まず、簡単なウイルスの分類を表示。今回のBlasterウイルスはクライアントPCをリモート攻撃する新しい種類のものだという認識を示した。続いてBlasterウイルスの特徴を語り、「インターネットで公開されたコードの流用が大半と考えられることと、隠しメッセージが入っていることなどから技術レベルが比較的低い愉快犯ではないか。通常はファイアウオールで防御される135番ポートを攻撃することや、SlammerやCODE REDのようなランダム生成が行なわれないことから、個人のPCがターゲットとされ、さらに組織内部への侵入、特に感染したノートPCの持込を意識した悪質なワームである」と推測。また、再起動が連続して起こる症状はあくまでBlasterウイルスのバグで、本来の機能は「windowsupdate.com」へのsysflood攻撃であるとした。

 さらにその経緯についても、「中国系サイトで7月末に公開されたようだ。ただし、それ以前、MS03-026の脆弱性が発表されてから、我々の調査では135番ポートへの攻撃は少なからずあることから、Blasterウイルスの元になるものはあったのではないか」との見解を示した。

 西本氏は、今後注目すべき亜種としてBlaster.Dを挙げた。Blaster.Dは、Blasterと同じWindowsの脆弱性「MS03-026」に加えて、「MS03-007」を利用して感染を拡大するウイルスで、Blasterの実行ファイルである「MSBLAST.EXE」を終了させる点や、「MS03-026」の修正プログラムを自動的に適用する点が特徴となっている。なお、日本語OSについては修正プログラムは適用されない。

 Blaster.Dは、Blasterと異なりパソコンに侵入後もバックドアが開かれたままICMP(PING)による探索活動を行なう。会社などのLAN環境では、探索活動の活発なBlaster.Dの方が脅威だという。「Blaster.Dは、Blasterから置き換わると、パソコンの再起動が連続しなくなり、ユーザーに“パソコンが直った”と感じさせるため、より悪質だ」(西本氏)としている。

 同氏は、8月18日ごろからBlaster.Dの活動が活発化しているとし、「今後、さらに別な亜種も含め警戒が必要だ」という。ラックでは、駆除だけでなくDCOMの設定なども行なう対策ツールキット「SNS-ABM」をCD-ROMで配布する予定だ。


ウイルスの分類 Blasterの特徴

Blasterの亜種を説明。画像中Welchiaとあるのが「Blaster.D」 今後は対策ツールもCD-ROMで配布予定

今後の製品では初期設定からセキュアに~Windows Updateも仕様変更へ

製品マーケティング本部Windows Server製品部プラットフォームマーケティンググループ シニアプロダクトマネージャ古川勝也氏
 最後に、製品マーケティング本部Windows Server製品部プラットフォームマーケティンググループ シニアプロダクトマネージャ古川勝也氏から、今後の取り組みと見通しが語られた。

 古川氏によれば、短期的な計画と長期的な計画が考えられているという。まず、短期的には、修正プログラムとウイルス対策ソフトが入ったCD-ROMを、パートナー企業など各社と協力して無償配布する。配布開始日やウイルス対策ソフトの利用期間などの詳細は後日発表されるが、当初約20万枚用意され、早ければ今週末にも量販店などの店頭に登場するという。

 同社によれば「一時的な対策」としているが、当面、CD-ROMによる修正プログラム配布を続ける。プレスされた版ごとに内容も異なり、その時の最新のプログラムに更新していくという。サポートの24時間対応も当面継続するほか、マスコミを通じた告知も随時行なう。

 一方長期的には、今後の製品では初期設定をセキュアなものに変更していくという。開発中の次期OSでは、「利便性よりもセキュリティをある程度優先する」(古川氏)としている。セキュリティの優先度はユーザーからの意見を参考にするとしているが、詳細は明らかにされていない。また、時期は未定だが、Windows Updateの仕様変更を予定している。「今回通常の何倍ものアクセスがあったWindows Updateだが、裏を返せば普段は利用されていない証だ。現在予定している仕様変更では、名称がMicrosoft Updateに変更され、Windowsだけでなくマイクロソフト製品全てのアップデートが可能になる予定だ」という。

 会場からは、脆弱性そのものが問題だとする質問もあったが、「脆弱性そのものは簡単に無くせるわけではない。脆弱性対策に向けた研究開発費を20%増やすなど、企業としての努力はしている」と述べた。


関連情報

URL
  マイクロソフト
  http://www.microsoft.com/japan/
  ラック
  http://www.lac.co.jp/

トレンドマイクロ、ウイルス「Blaster」に関するセミナー実施(2003/08/20)
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( 鷹木 創 )
2003/08/20 21:34

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