TTC(社団法人情報通信技術委員会)DSL専門委員会・スペクトル管理サブワーキンググループは、12月5日に第6回会合を開催した。今回の会合では、前回会合の後11月28日に公表されたスペクトル適合性確認報告書(以下「報告書」)の内容について長野県協同電算(JANIS)が全面否定を主張、冒頭から大荒れの展開となった。
JANISはいわゆる上り帯域を拡張した方式全般について「手持ちのSDSL機材で上り帯域を280kHz前後まで拡張して実験した結果、同一カッド収容の既存のADSLの下り回線に対して1Mbps程度の速度低下をもたらすことがわかった」と述べた上で、「弊社では下り速度を1.1Mbpsに制限した低価格サービスを行なっているが、この1.1Mbpsサービスと同SDSL回線を同一カッドに収容した場合も速度低下の幅がほとんど変わらず、このままでは上り帯域拡張方式を利用したサービスが開始された場合に低価格サービスが維持できない」と主張。この原因として11月28日に改定されたばかりのJJ100.01 第2版における計算モデルが不適切であるとして挙げ、計算モデルを適切なものに改めるまでの間は(11月28日に報告書に追加された方式も含めて)全ての新システムの導入を凍結すべきだと訴えた。
これに対し、ソフトバンクBBやGlobeSpanVirata(GSV)は「11月28日付け報告書で追加されたGlobeSpanVirata提案の上り帯域拡張方式(以下EU-G方式)は、前回会合で適合性確認に関する合意を既に得ているものであり、その結論をひっくり返すのは適当ではない」と主張。一方で、前回イーアクセス・住友電工・Centillium Japanの3社が共同提案した上り帯域拡張方式(以下EU-TIF方式)について「現行のJJ100.01に照らすとスペクトル適合性があることになっている近距離でも、EU-G方式に比べて他の方式のADSL回線の下りへの干渉が大きすぎるため、(EU-TIF方式を)報告書に記載すべきではない」と主張した。
前回よりEU-TIF方式のスペクトル適合性のクラス分けを求めていたCentillium Japanらは当然これに反発、「新しいルールを作るのであればそれに従うが、現在ルールとしてはJJ100.01しか存在せず、今はそれに従い作業を進めるべきであり、EU-TIF方式も(干渉量の計算結果のクロスチェックなどの形式的要件を満たしているため)早急にクラス分けすべきだ」と主張した。
このように三つ巴の議論が繰り広げられた結果、とりあえず現行のJJ100.01のルールに従いEU-TIF方式は一旦報告書にクラス分け結果を記載することが決定。しかしEU-G/EU-TIF両方式を含む上り帯域を拡張した方式全般については報告書内に「上り帯域拡張方式については継続して取り扱いを検討する」との注釈を記載することとなり、事実上上り高速化方式の導入が一時凍結される形となった。
なお、今後の上り帯域拡張方式の取り扱いについては、ソフトバンクBB・イーアクセスを共同議長としたDSL事業者のみによるアドホックな検討グループを設置、同グループにおいて協議を行なうことが決定している。ただ上り帯域の拡張を巡っては、他にも前回会合で問題となったFBM方式の取り扱い(今回は結局時間切れで議論が行なわれず)など問題が山積しており、結論が出るのは早くても年明けになりそうだ。
関連情報
■URL
TTC「DSL専門委員会スペクトル管理SWGに関する情報」
http://www.ttc.or.jp/j/info/dsl/dsl.html
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( 松林庵洋風 )
2003/12/06 10:48
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