ADSLの上り帯域拡張方式としてITU-Tで審議が進められているG.992.3/992.5 AnnexM方式の標準化に対し、ソフトバンクBBが反対の意見書を提出していた件について、同方式の標準化のために進められていたAAP(Alternative Approval Process)手続きが一旦停止され、4月に予定されているITU-T SG15(Study Group 15)の次回会合において同方式の標準化について改めて審議が行なわれることになったことが明らかになった。これは29日に行なわれたTTC・スペクトル管理SWG会合終了後に、ソフトバンクBBの筒井多圭志CTOが語ったもの。
筒井氏によれば、同社が提出した同方式の標準化に対する反対の意見書に対して、他のADSL方式を利用した既存回線に対する影響が大きすぎるとして米GlobeSpanVirataなどが賛同する意思を示したほか、一方で標準化に参加するADSL事業者の中から「同方式も含めて矢継ぎ早に新方式を標準化していく現在のITU-T SG15のやり方は、次々に新方式に対応した製品を買わせたいベンダー側の意向に沿ったもので、ADSL事業者の利益に反する」との意見も出たため、再度同方式の標準化について議論を行なうべきだとの空気が強まったという。
そのため1月19~23日までシンガポールで行なわれた、SG15の中でもADSL関連の話題を扱う「Question 4」の中間会合での議論の結果も受け、SG15では昨年10月の会合後進行していたAAP手続きを議長権限で一旦中止させ、同方式の標準化ステータスをAAP手続き前の状態に戻すことを決定。その上で審議を改めてQuestion 4に差し戻し、4月のSG15会合において再度議論を行なうようにとの指示が下った、と筒井氏は語った。
果たして4月の会合でどのような審議が行なわれるのか、またその結果標準化内容にどういう変更が加えられるのかなど、まだ流動的な部分が大きい。いずれにせよ、同方式の標準化に遅れが生じることだけは間違いなく、日本でのADSLの上り高速化サービスの提供にも少なからず影響を与えそうだ。
【18:55追記】
一方、同じITU-T SG15に参加しているイー・アクセスに、本件についてコメントを求めたところ、上記の記述とは異なる見解が寄せられた。イー・アクセスによれば、次回のSG15で検討されるのはAnnex Mとは無関係の部分の記述であり、Annex Mについては変更を加える必要がないと議長により決定されている、ということだ。
イー・アクセスからのコメントは以下の通り。「G.992.3 A2とG.992.5 A1が次回SG15の議論に付された、との点ですが、それはAnnex Mとは無関係のeditorialな部分を検討するために取られたプロセスであり、Annex Mについては何ら変更を加える必要はない、とQuestion 4の議長により決定されております。従って、『再度Annex M方式の標準化について議論を行うべきだとの空気が強まった』との記述は事実に反しております。」
関連情報
・ TTCスペクトル管理SWG、上り帯域拡大方式問題が議論されるが結論出ず(2004/01/29)
・ ソフトバンクBB、ITU-TにおいてADSL上り帯域拡張方式の標準化に反対を表明(2003/12/16)
・ TTCスペクトル管理SWG、上り帯域拡大方式への干渉を巡り会議が紛糾(2003/11/21)
( 三柳英樹, 松林庵洋風 )
2004/01/30 10:38
- ページの先頭へ-
|