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ソフトバンクBBの入部氏と山口氏
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昨年来ITU-Tにおいて、ADSLの上り拡張方式の1つであるG.992.3/992.5 AnnexM(以下「AnnexM方式」)の標準化に対してソフトバンクBBが反対意見を表明、標準化作業が事実上ストップしていた問題について、先月ジュネーブで行なわれたITU-T SG15会合においてソフトバンクBBが反対意見を取り下げたことから同方式の標準化が認められたものの、ソフトバンクBBがAnnexM方式の勧告書に付帯意見を付すことを要求し、これが認められたことが判明した。これは14日に行なわれたTTCスペクトル管理SWG会合後、ソフトバンクBBの入部良也・山口繁徳の両氏が明らかにしたもの。
AnnexM方式の標準化に関しては、2003年10月のITU-T SG15会合において一度標準化に向けた基本合意(コンセント)が行なわれていたものの、ソフトバンクBBが「既存ADSL回線への影響が大きすぎる」ことを理由にその後のAAP(Alternative Approval Process)手続きにおいて反対を表明。その後2回に渡り行なわれた中間会合においても結論が出なかったことから、SG15議長の判断で最終結論が4月のSG15会合に持ち越しとなっていた。
4月19日から30日にかけて開催されたSG15会合では、ソフトバンクBB、アッカ・ネットワークス、Conexantらが、AnnexM方式の上りスペクトラムとして、従来方式の代わりにConexantの「EU-G2方式」を導入することを提案したものの、「まずは原案を標準として一度成立させることを優先させ、この追加提案は(成立済みの標準に対する修正提案として)次回会合に向けて検討を行なうこととすべき」との意見が大勢を占めたため、最終日に開かれた全体会合の席上でソフトバンクBBは反対意見を取り下げることを表明した。
ソフトバンクBBは同時に、AnnexM方式の勧告書に対してAAP手続きの中で認められている「Concern(懸念)」を付与する権利を行使することを表明。これにConexant、UTStarcomの両社が賛同し、3社の連名で「AnnexMベースのADSL回線がAnnexAベースのADSLと同一ケーブルに収容された場合には、AnnexA側の品質が大きく低下する恐れがある」という趣旨の注釈が勧告書に記載される見通しとなったという。
このConcern自体は「標準化過程で合意に至らなかった部分の記録を取ったものに過ぎない」(イー・アクセス小畑至弘氏)ということで特に標準として拘束力を持つものではないが、入部氏は「勧告書を読んだISPに対して一定の注意を喚起する効果があり、これによりAnnexM方式が実際のサービスで使われる可能性は大きく減るのではないか」と語り、このConcernの存在により既存のADSLに対する速度低下などの影響を最小限に食い止められるとの見解を示した。
なお、今回のSG15会合で標準化されたAnnexM方式は北米向けのG.992.3/992.5 AnnexA方式をベースとしているもので、日本向け仕様の標準化は次回の会合以降に行なわれる予定だが、ソフトバンクBBでは「日本向け仕様についても積極的に標準化作業に関与していきたい」との意向を示している。
またTTC・スペクトル管理SWGにおけるADSLのバンドプランに関する議論についても、ソフトバンクBBでは「今回EU-G2方式を上りスペクトラムとして提案したところ、欧州の複数の大手ISPを含む多数の支持を得た」として、今後EU-G2方式のスペクトルマスク(25~276kHzを使用)をバンドプランの上限として合意に持っていきたいとの考えを示した。この点はイーアクセスらと対立している部分であり、ソフトバンクBBの思惑通り事が運ぶかは微妙な状況といえるだろう。
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( 松林庵洋風 )
2004/05/17 15:33
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