シックス・アパートは3日、米Six Apart創業者のベン・トロットとミナ・トロット、CEOのバラック・バーコビッツを迎えたラウンドテーブルを開催した。ラウンドテーブルでは米Six Apartの今後の展開と取り組みの概要が示された。
● LiveJournalの買収でより多くのユーザーへサービスを提供
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左からミナ・トロットとベン・トロット
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ミナ・トロットは初めに、Movable Typeの開発に至った経緯を説明。もともとは自分たちが使っていたブログツールの機能や拡張性に抱えていた不満を解消する同時に、いろいろな人に使ってもらえるブログツールを作りたい、との考えからMovable Typeを開発したのだという。
現在Six Apartでは、ブログツールとしてMovable Typeを、ブログサービスとしてTypePadを展開しており、前者は企業や組織、パワーユーザー向けに、後者はエンドユーザー向けにという方針でサービスを展開。2005年1月6日には、ブログサービス「LiveJournal」を提供する米Danga Interactiveを買収、ブログによるビジネス展開を拡充している。各サービスのユーザー数は明らかにされていないが、3サービス全体では全世界で700万で、そのうち600万がLiveJournalのユーザーだという。
LiveJournalを買収した理由としてミナ・トロットは、「いくつかの要素がある」とした上で、「LiveJournalの技術は非常に高く評価しており、刺激を受けてもいた。また、1999年から運営しているという経験によるノウハウを持っている点も大きかった。さらにLiverJournalの創業者も『(SixApartと)一緒にやりたい』という意志を持っていた」と説明。「14歳から20代のユーザーが多く、プライベートなコミュニケーション機能を持っているLiveJournalを買収することで、より多くのユーザーへサービスを提供することが可能になる」と語った。
Movable Typeがブログツールとして成功を収めた理由としては「9.11の同時多発テロにおけるブログの盛り上がりなど、我々にもコントロールできない要素の影響も大きかった」とした上で、「製品をユーザーが好んでくれたことや、ネオテニーの出資といった要素のほか、CEOのバラック・バーコビッツが加わったことも大きい。開発ノウハウはあっても会社を育てるノウハウのない我々の中に、そういったノウハウを持つ人物を迎え入れることができたのが成長の要因だろう」と語った。
● トラックバックの機能拡張など新機能は積極的に取り組む
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CEOのバラック・バーコビッツ
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Six Apartの今後については「成長しているがまだまだ小さい企業。何でも手を出すのではなく、機に応じた展開が重要な戦略になるだろう」とコメント。「我々は収益も大事にしている。ユーザーを集めてからビジネスを考えるのではなく、どうしたらコストをまかなえるか、社員に給料を払えるかといった商業的な理念で動いている」と続けた。
MSNやYahoo! Korea、Yahoo! JAPANといった大手ポータルもブログサービスを開始しているが、ミナ・トロットは「彼らにとってのブログはさまざまなサービスの一環であって、ブログ専門の企業ではない」と指摘。「我々はブログに関してのみサービスを提供している点が差別化の材料になるだろう」とした上で、「Movable Type、TypePad、LiveJournalはフリーライセンスもあるが基本は有料。ユーザーが実際にお金を支払っていることで、アクティブユーザーとしての強みがあるだろう」との違いを語った。
ミナ・トロットはブログを「人と人を繋げるコミュニケーションツールで、Eメールと同じ通信メディア」と説明。「メールを見ればわかるように、企業ユーザーのメールとプライベートのメールは違うものだが、それはユーザーが成熟していく過程でそういう形になったのであって、最初から区別されていたわけではない」と指摘した上で、「ブログの使われ方も、時間をかけて習得されていくだろう。ブログとはこういうもの、と定義しようとは思わない」との考えを述べた。
Six Apartでは今後、フォトシェアリングやモバイル対応といった機能拡充を予定するほか、ブログを利用したデータマイニングも計画する。「どんなカメラで撮影した画像が人気なのか、そういった見えない情報も多い。サービスの拡張性は常に考えている(バラック・バーコビッツ氏)」。Flickrやdel.icio.usといったSNS機能を持つサービスも「尊敬しているし、インスピレーションも受けているが、こういった新しい機能やサービスがブログとは関係ないところで育つとは考えていない」とし、新機能も積極的に取り組んでいく姿勢を示した。
トラックバックについても「最初は『あったらいいね』という感覚で実装した機能が、今ではブログを定義するような存在になったことは驚き。オープンソースとして公開したトラックバックをさまざまなサービスが利用してくれている」との感想を示したのち、「トラックバックの仕様は、ローカライズやセキュリティといった面でもう少し成長する必要があるだろう。それは我々独自で開発するのではなく、協調しながら機能拡充を図っていきたい」とコメント。「トラックバックの標準化組織、とまでは考えていないが、トラックバックを成熟させるための取り組みは積極的に進めていく」との方針を示した。
関連情報
■URL
シックス・アパート
http://www.sixapart.jp/
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( 甲斐祐樹 )
2005/02/03 21:27
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