情報処理推進機構(IPA)のソフトウェア・エンジニアリング・センター(SEC)は16日、「2005年版組込みソフトウェア産業実態統計調査」の結果を発表した。
SECは、経済産業省の支援を受けて2004年10月に設立された組織。「エンタープライズ系ソフトウェアの開発力強化」「組込みソフトウェアの開発力強化」「先進ソフトウェア開発プロジェクト」に関するノウハウを産学官共同で共有化している。
● 組込みソフト開発の外部委託は品質を下げる!?
|
SEC組込み系プロジェクト・サブリーダの田丸氏
|
この調査は、182社236事業部門の経営者や事業責任者、289の開発プロジェクト責任者、技術者1,339人が回答したアンケートなどをまとめたもの。中国やインド、米国、英国など海外18カ国の企業に対して153件のインタビュー調査も行なっている。
まず、経営者や事業責任者への調査によれば、組込みソフト開発を外部に委託しているとの回答は82.6%に達した。外部委託先と製品出荷後の不具合発生率との関連を見ると、「外部委託すると品質が下がるという結果になってしまった。内容を詳しくみると、グループ会社や社内の別部署に委託している場合は、他の会社に委託する場合より不具合率が高い傾向になった」(SEC組込み系プロジェクト・サブリーダの田丸喜一郎氏)という。外部に委託していない企業では不具合「なし」との回答が2割弱あったのに対して、外部委託している企業では、グループ会社や社内の別部署、他の会社いずれも不具合「なし」は1割を下回った。
「組込みソフトの開発ではハードウェアのバグも問題だ」(田丸氏)という。ハードの不具合をソフトで回避したとの回答が6割を超えている。また、ハードの不具合を開発プロセスに組込んでいないため、技術者個人レベルでは「開発計画がずさん」「開発プロセスが明確ではない」として認識されていると分析した。
|
|
外部委託率
|
外部委託先と製品出荷後の不具合発生率との関連性
|
● 「システム・エンジニア」か「ソフトウェア・アーキテクト」か?
技術者向けアンケートでは、「現在の仕事を自分ではどのように思っているか」を聞いた。「お金がもうかる」「かっこいい」「トレンディである」といったキーワードに対しては「そのようには思わない」と回答したケースが多かったという。一方で、「非常に忙しい」「やりがいがある」「おもしろい」「知的である」などのキーワードには、多くが「そのように思う」と回答している。
さらに、「現在の自分の仕事をどのような名称で呼ばれたいか」について聞いた。今回は、例えば「システム・エンジニア」という場合の、担当する業務の概念(「システム」の部分)と人格(「エンジニア」の部分)の2つに分けて調査している。概念では「システム」が42.1%と最も多く、次いで「ソフトウェア」が19.4%、「組込み」が9.2%などの順となっている。「ファームウェア」(1.7%)、「ユーザビリティ」(1.4%)、「マイコン」(0.9%)といった回答もあった。人格では「エンジニア」が49.0%とほぼ半数を占め、「アーキテクト」が11.1%、「プログラマ」が7.4%など続いている。「エキスパート」(4.6%)、「スペシャリスト」(1.6%)などの回答もあった。田丸氏は「できるだけ、呼ばれたい名称で呼んであげたいために調査した」とコメントしている。
|
|
技術者は「現在の仕事を自分ではどのように思っているか」
|
呼ばれたい名称は?
|
SECではこのほか、「1000プロジェクトの分析から見るソフトウェア開発実態」「プロジェクト成功のための先進的見積り手法」という報告書もとりまとめた。イントラネット/インターネット関連の、いわゆるWeb系開発プロジェクトが300件を超えて案件別で最多になったことや、見積りがプロジェクトマネジメントの中核であることなどを調査結果を交えて説明している。なお、SECでは20日から開催する「SEC Forum 2005」で、これらの調査結果について詳細に解説するとしている。
|
|
いわゆるWeb系開発プロジェクトが300件を超えた
|
見積りの重要性
|
関連情報
■URL
ソフトウェア・エンジニアリング・センター
http://www.ipa.go.jp/software/sec/index.php
SEC Forum 2005
http://www.ipa.go.jp/software/sec/event/20050620.php
■関連記事
・ ソフトウェア・エンジニアリング・センター設立、国内のソフト開発力強化へ(2004/09/29)
( 鷹木 創 )
2005/06/16 21:52
- ページの先頭へ-
|