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「エレクトロニクスの復興なくしてソニー復活はない」新役員が就任会見


 ソニーは23日、代表執行役会長兼グループCEOに就任したハワード・ストリンガー氏と代表執行役社長兼エレクトロニクスCEOに就任した中鉢良治氏の記者会見を開催した。会見では、口を揃えて「エレクトロニクス事業の復興」を掲げた。なお、具体的な数値目標については、「長期的な成長戦略を考えるので、目標が決定する9月末まで答えられない」(ストリンガー氏)とした。


ソニー会長のハワード・ストリンガー氏(左)と社長の中鉢良治氏(右) 会場には多数の報道陣が詰めかけた

既存カテゴリでは、テレビ、DVD、携帯電話ウォークマンが強化領域

 冒頭、挨拶したストリンガー会長は、「ソニーに入社して8年経つが、米国の代表としてエレクトロニクス分野だけでなく、映画や音楽などのエンターテイメント分野も担当してきた。それと同時に30年来のソニーの顧客でもあり、顧客の視点からもソニーの優秀さを実感している」と前置いた上で、今後は「エレクトロニクス事業を復活させることが重要となる」とコメントした。さらに、「サッカーチームみたいな話だが、1,000人の幹部社員には、『ソニーユナイテッド』になるべきだと伝えている」と述べ、複数の事業部間の壁を取り払っていく考えを示した。

 ストリンガー氏に続いて挨拶した中鉢氏も、「ソニーの復活はエレクトロニクスの復活なくしてありえない」ことを強調。分野を絞って経営を進める競合他社に対応することが問われているとし、「総合家電で派を競ってきたかつてのソニー」からの脱却を訴え、事業の選択と集中を図るとした。また、今後強化する領域としては、「既存カテゴリの中では、テレビ、DVD、携帯電話ウォークマン。モバイルとの融合領域に対しても新たなビジネスチャンスがあると思う」とコメントした。

 ソニーの中期経営計画「TR60」について中鉢氏は、固定費削減などを中心とした競争戦略はある程度の成果は収められたとしながらも、「成長戦略について十分な成果を見い出すことができなかった」と振り返った。さらに、「今後もTR60を進め、新しい時代に適応した構造改革を図りたい。それは商品力、技術力、オペレーション能力の強化に要約される」と課題を挙げ、「これをマネジメントするにあたっては、一貫性、選択と集中の徹底、対話を通して取り組んでいく。エレクトロニクスの復権は、現場と経営層の信頼の復活が鍵だと思う」として、ストリンガー氏と同じくコミュニケーションの重要性を訴えた。


ソニーの現場の力は衰えていないが、技術に固執しすぎる面も

 商品開発について中鉢氏は「ソニーの現場の力は衰えていないと言い続けてきた。現場を見てきたが、ポテンシャルはある。だが、どうしてメガヒット商品が出ないのか。その原因を探ってみると、理由の1つは、技術に固執するあまり、顧客の視線をそらしてしまっていること。我々は世界最小、最軽量といったものを追求することに関しては、世界最大の技術力を誇っているが、メーカーである限り、顧客に買っていただいて成立しているビジネスであり、もう一度その原点に立ち返るべき」とした。

 質疑応答では今後撤退する事業はあるのかという質問が寄せられた。これに対して、ストリンガー氏は「英国では『ラズベリージャムの法則』というものがあり、パンにジャムを塗る際に全体に広げようとすると、1カ所に塗る量は薄くなる。ソニーにはさまざまな製品があるが、そのすべてを継続するのではなく、プライオリティを慎重に決める必要がある」と答えた。

 なお、次世代DVD規格について、中鉢氏は「消費者の利便性を考えると、統一規格が望ましいと思っている。統一のプロセスがどのようになるかはわからないが、そのための努力は惜しまない」とコメントした。


毎月2週間は東京で勤務するストリンガー会長は、「妻よりも中鉢社長と食事をする機会の方が多くなった」という 「ソニーの現場の力は衰えていない」と訴える中鉢社長

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URL
  ソニー
  http://www.sony.co.jp/

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( 増田 覚 )
2005/06/23 20:43

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