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個人情報保護法への「過剰反応」が被害者救済の壁に〜国民生活センター


 「駅のエスカレーターで転倒した人の巻き添えになり怪我をしたが、鉄道会社は個人情報保護のためとし、連絡先を教えない」「娘が通っている公立中学校では、自分の連絡先が含まれた6人程度のグループしか記載されていない連絡網表が配布された」「自治会で作成する防災マップの住宅地図に、各住民の名前を記載し、コピーしたものを配ろうと思っている。個人情報保護法上問題はないか」――。

 個人情報保護法が全面施行されてから6カ月が経過した。国民生活センターでは、各企業・団体のWebサイトなどでプライバシーポリシーや個人情報の利用目的が公表されるなど、「個人情報保護法が有効に機能しつつあることが窺える」と一定の評価。その一方で、同センターの相談窓口には「戸惑いの声も目立つようになった」という。

 7日、国民生活センターがまとめた資料によると、4月から9月までに同センターの相談窓口に対して寄せられた苦情は695件。複数回答の内訳では「同意のない提供」が209件(30.1%)と最多で、「不適正な取得」が198件(28.5%)、「開示等」が165件(23.7%)と続く。次いで「目的外利用」が140件(20.1%)、「漏えい・紛失」が136件(19.6%)、「苦情などの窓口対応」が131件(18.8%)となっている。


「個人情報保護法によりできない」と回答されがちな現状

 国民生活センターに寄せられた相談には、個人情報保護法への過剰反応や無理解などに基づく事業者の対応に対して戸惑いの声も寄せられている。

 駅のエスカレーターで転倒した人の巻き添えになり怪我をしたという60歳代の男性からの相談は、「事故時の状況について責任関係を相手と話をしたいが鉄道会社が個人情報保護の為といい連絡先を教えない」という内容だ。この場合、加害者の個人情報を相談者に提供することを「本人の同意ない第三者への個人情報の提供」と捉えていると考えられる。

 国民生活センターでは、個人情報保護法は「全ての場合において、本人の同意なく個人情報を第三者へ提供することを禁じているわけではない」と指摘。例えば「人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難なとき」(法第23条第1項第2号)には、本人の同意なく第三者へ個人情報を提供できるという。また、鉄道会社が当事者に同意を求めたり「相談者へ連絡をとるよう」伝えるという方法も取れないわけではない。

 ただし現実的には、同意を必要としない状況かどうかの判断が難しく、「結局、法律違反となるリスクを負うよりも、個人情報の提供を行なわないという対応につながっている」。さらに「法律の遵守と円滑な事故処理の狭間で『個人情報保護法によりできない』との回答がなされがち」と分析し、個人情報保護法に対する「過剰反応」ではないかとの批判も生まれているという。

 国民生活センターでは、こうした過剰反応のケースとして「保育園での写真販売の中止について」「クラス全員の連絡先がない連絡網表」「個人名入りの防災マップの配布について」などの類例を列挙。オプトアウトの仕組みや関係者による同意を取り付けられれば可能な事例も少なくないが、実際には関係者から「個人情報保護法上、問題ではないか」との指摘を受けて中止せざる得ない場合も多いという。


個人情報保護法ではしつこい勧誘電話を止められない

 国民生活センターでは、消費者側に対しても「個人情報保護法に強制力のある規制を求めたり誤解をしていると思われるケースも多い」と指摘する。個人情報の利用停止に関するものでは、「マンション購入の勧誘電話が自宅にしつこくかかってくる。何度も断っているが、断ると嫌がらせをされる。出回っている名簿を基に電話かけているようだが、個人情報保護法でなんとかならないのか」との相談もあった。

 しかし、個人情報保護法で個人情報取扱事業者に対し利用停止を求めることができるのは、同法で定められている「利用目的による制限」と「適正な取得」の規定に違反している場合だ。

 国民生活センターでは「顧客対応としてダイレクトメールの停止などに応ずる業者もあるが、法的には、電話勧誘等をしている業者が個人情報取扱事業者であり、個人情報の不適正な取得または目的外利用といったことが明らかにならなければ、利用停止を求めることができないなど、相談対応が難しい面もある」と解説。いわゆる名簿業者を介した名簿の売買も、利用目的を通知・公表し、第三者提供の規定を遵守していれば、個人情報保護法上問題とは言えない。しつこい電話勧誘への対処方法については、従来通り、発信電話番号通知サービスや着信拒否サービスなどの利用や、特定商取引法、宅地建物取引業法や商品取引所法などによる電話勧誘に関する規制を活用することになると説明している。

 このほか、個人情報の入手経路や個人情報保護法への無理解や軽視などの事例を紹介。「過剰反応」に対しては「明確な解釈基準や、個人情報提供の必要性についての理解が求められる」こと、消費者の信頼獲得のためには「トレーサビリティーの確保とオプトアウトの周知・徹底等が求められる」ことなどを今後の課題として提言している。


関連情報

URL
  最近の個人情報相談事例にみる動向と問題点
  http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20051107_2.html

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個人情報に関する苦情が3カ月で398件、国民生活センターの相談窓口(2005/07/21)


( 鷹木 創 )
2005/11/10 13:57

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