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検索クエリーの提出は不要、米司法省との裁判でGoogleが実質勝訴


 米司法省が米Googleに対してサーチエンジンの一部のデータを提出するよう求めていた裁判で、カリフォルニア州北部地裁は17日、司法省の要求を大幅に減殺し、URLデータ5万件の提出のみにとどめる判決を下した。

 当初、司法省は「2005年7月31日に、ある検索クエリーに対して参照されたすべてのURL」と、「2005年6月1日から2005年7月31日までにGoogleに入力されたすべての検索クエリー」を提出するよう求めていた。しかし今回の判決によって検索クエリーデータの提出は却下され、5万件のURLの提出を命ずるのみとなった。これについてGoogleは「これは我々のユーザーと我々の会社にとって明白な勝利である」とコメントしている。

 そもそも今回の裁判はGoogleと司法省が直接争っていたわけではなかった。きっかけとなったのは、米市民団体のACLUが司法省に対して起こした裁判である。その裁判の中でACLUは、1998年に米国議会が採択した法律「Child Online Protection Act(COPA)」を問題にした。COPAは、子供に害を及ぼすインターネット上のコンテンツを商業目的で提示することを禁じるという内容の法律である。ACLUは米国憲法修正第1条に基づき、この内容が大人の保有する権利を侵害するとして司法省に対して訴えを起こしていた。

 裁判所はこの件を審理していく中で、子供にとって害になるコンテンツを阻むために法律ではなくフィルタリングソフトのようなテクノロジーに基づく方法に効力があるのかどうかを調べることになった。司法省側は自らの主張を立証するためにフィルタリングソフトの実際的な効果性について自ら調べる必要に迫られ、米国の大手サーチエンジン企業であるGoogle、AOL、Yahoo!、Microsoftに対して、先に述べたようなデータの提出を求める召喚状を発行した。

 これに対してAOL、Yahoo!、Microsoftは政府の要求に大方応じたが、Googleはこれを拒絶したために今回の裁判となった。従って今回の裁判はGoogleの保有するプライバシー情報が直接問題となったものではなく、あくまでもフィルタリングソフトの有効性を立証するためのサンプルデータとしてサーチエンジンが標的にされた側面がある。


 興味深いことに、カリフォルニア州北部地裁の判決はGoogleのプライバシーポリシーに触れ、同社が氏名、メールアドレス、決済に必要な情報などの個人情報のみを保護するとしており、今回政府が要求したような非個人情報を保護すると明記しているわけではないことを指摘した。しかしながらGoogle側が論じたように、すべてのインターネット検索の4分の1がポルノ関係であるとのデータを記した学術論文などを挙げ、Googleのユーザーはプライバシーが守られることを期待する合理性があると認めた。そして、もしこのようなプライバシーが守られなければGoogleがユーザーからの信頼を得られなくなり、同社の損失につながることについても指摘した。また、データの提供の仕方によっては、これがGoogleの企業秘密を侵すことになるとも指摘している。

 特に検索クエリーの提出を却下した理由について、判決はクエリーそのものの中に個人情報が含まれる危険性について指摘した。例えば、クエリーとして社会保障番号やクレジットカード番号を入力して、そのような情報がインターネットで入手できるかどうかを試す人がいるかもしれないという例を挙げた。さらに「大学名 サークル名」というように深刻なプライバシーの問題を引き起こさないクエリーが存在する一方で、「氏名 3学期 中絶 サンノゼ」というように中絶手術を行なった学生を特定しようとするような深刻なプライバシーの侵害を引き起こしかねないクエリーも存在しうることを指摘した。

 こうした議論の結果として判決では、Googleが5万件のURLを司法省に提出すること、その提出方法を定めるプロトコルとその実装について決める際にGoogleは企業秘密を明かす必要がないこと、米政府がこれにかかる費用を負担することなどが決定された。Google側は17日付の公式ブログで、この判決に従うことを明らかにしている。


関連情報

URL
  Google公式ブログの該当記事(英文)
  http://googleblog.blogspot.com/2006/03/judge-tells-doj-no-on-search-queries.html

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米Google、検索データの提供を求める米司法省に反論する文書(2006/02/20)


( 青木大我 taiga@scientist.com )
2006/03/20 12:43

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