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増加するインフラコストをどこで回収するかの議論が必要〜IIJセミナー


 インターネットイニシアティブ(IIJ)は23日、通信インフラの現状に関する記者セミナーを開催した。セミナーでは、日本のトラフィックの増加状況や、「GyaO」などのコンテンツプロバイダーが通信事業者のコストを圧迫しているとする“インフラただ乗り論”に対する考え方などが示された。


“インフラただ乗り論”は急増するトラフィックへの危機感の表われ

IIJの三膳孝通取締役戦略企画部長

IIJの鈴木幸一代表取締役社長
 IIJの取締役戦略企画部長を務める三膳孝通氏は、日本の通信インフラの現状と課題について説明した。三膳氏は、IIJなどISP7社が参加して総務省がまとめた国内トラフィック総量の調査を紹介。2005年11月現在で約468Gbpsのトラフィックが流れており、若干増加ペースは鈍っているが、トラフィックは現在も増え続けているという状況を説明した。

 こうした状況が続いた場合に想定される危機としては、ファイバーインフラの枯渇や消費電力の急増など、既存の社会インフラを超える欲求が発生する可能性を挙げた。また、ルータ等の装置が性能限界を迎えつつある問題も深刻だと指摘。「これまでは、1Gbpsで足りなくなれば10Gbpsの装置を導入するといった手法を用いてきたが、装置の性能向上は限界を迎えつつある。そうなれば複数台の装置を並べて使うしかなく、コストがリニアにかかるようになってくる」という。

 GyaOなどのコンテンツプロバイダーや、SkypeのようなIP電話に対して、トラフィックの増大に見合うだけのコストを負担していないという、いわゆる“インフラただ乗り論”については、通信事業者側のトラフィック急増に対する危機感が背景にあると説明。かつてWebが登場した時にもトラフィックが急増したように、基本的にはインターネットの使われ方の変化としてとらえるべきだが、こうした変化が無視できないインパクトになりつつあることから、こうした問題が話題になっているとした。

 三膳氏は、「すべての産業はよりネットワークを活用する方向に変化しており、ネットワークやインフラはサービスを制限するようなものであってはいけない」としつつも、「コンテンツやコマーシャルの収益でインフラを支えるという形で本当にいいのかということは議論していかなければならない」と述べた。

 IIJの鈴木幸一社長は、「インターネットは『みんなで使うから安くなる』という統計多重の考えに基づいて作られたネットワークだが、そこに矛盾も出てきた。こうしたネットワークのコストを誰がどういう形で負担するのかということについて、これまで決め事がなかった。使う人がコストを負担するのか、ビジネスでやっている人が負担するのかといったことを決めるのはなかなか難しい問題」とコメント。“インフラただ乗り論”については、「インフラコストをどこで回収するかという、これまで真面目に議論されてこなかった問題が表面化したもの」として、一部のコンテンツプロバイダーやサービスだけの問題ではなく、より広範囲な議論が必要だと語った。


P2Pトラフィックが全体の62%を占める

IIJ技術研究所の長健二朗氏
 IIJ技術研究所の長健二朗氏は、トラフィックの動向についてより詳細な分析結果を解説した。主要IXにおけるトラフィックの分析では、2003年までは1年に2倍のペースで増加してきたが、2003年以降はこのペースが変化し、2005年は1年間で約1.5倍の増加となった。また、IIJも参加したISP7社によるトラフィック量の分析でも、2005年のブロードバンドユーザーのトラフィック増加率は上り側が26%、下り側が46%にとどまった。また、こうした傾向は香港や米国の同様の調査にも見られるという。

 長氏は、「これまでのように1年に2倍のペースで増加すると10年では約1,000倍となり、技術的には厳しいが、1年に1.5倍であれば10年でも約58倍で、既存技術の延長でも対応できる可能性がある」と指摘。ただし、こうした傾向が続くかについては、さらに今後の動向を見る必要があるとした。

 2005年11月時点で、ブロードバンドユーザーのトラフィック量の平均は下り側で約200Gbpsに達し、最低でも150Gbps程度が常に流れ続けているという。1日のピークは21時から23時頃で、この時間帯の増加は帰宅した人が利用しているということで説明がつくが、その他の時間帯でも常に一定のトラフィックが流れており、この部分がP2Pファイル交換ソフトなどで自動的に生成されるトラフィックではないかと分析した。

 さらに、自社のブロードバンドユーザーを対象にして詳細な分析を実施したところ、一部のヘビーユーザーによるトラフィックが多数を占めているものの、ヘビーユーザーと一般ユーザーの間には明確な境界はなく、ユーザーのトラフィック使用量は統計的に幅広く分布しているという。

 ヘビーユーザーの定義を、1日に2.5GBのトラフィックを発生しているユーザー(平均230kbps)とすると、ヘビーユーザーの割合は全体の4%で、ADSLユーザーの2%、FTTHユーザーの10%に相当する。この4%のヘビーユーザーが使用するトラフィックが全体の約75%(上り側)を占めるという。ただし、ヘビーユーザーと一般ユーザーの境界はあいまいで、ほとんどトラフィックを使用しないユーザーから大量に使用するユーザーまで、まんべんなく存在するというのが実態だとしている。

 また、パケットの発信元・送信先IPアドレスからの分析では、ブロードバンドユーザー同士の通信が全体の62.2%を占めており、ファイル交換ソフトなどのP2Pによるトラフィックが大半を占めていると考えられるという。

 長氏は、「ユーザー間トラフィックの増加については、ISPやコンテンツプロバイダーはこれまであまり考えていなかった」として、今後はネットワーク構造の見直しも含めた新たなインフラ構築が必要になると指摘。ファイル共有ソフトについては、「ブロードバンド初期の産物で、いつまでも続かないのではないか」としつつも、ストリーミングやビデオチャットなども増加しており、新しいアプリケーションの登場により事態がさらに一変する可能性もあるとして、ISPや通信事業者にはこうした変化を受け止める準備が必要だと語った。


ユーザーのトラフィック使用量の分布 ブロードバンドユーザー(RBB)間の通信が全体の62.2%を占める

関連情報

URL
  IIJ
  http://www.iij.ad.jp/

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( 三柳英樹 )
2006/03/23 19:27

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