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JASRAC、著作権使用料は微増するも「ネット配信は足踏み状態」


使用料徴収額
 日本音楽著作権協会(JASRAC)は17日、2005年度の事業概要を発表した。2005年度の音楽著作権使用料の徴収額は1,135億8,000万円で、前年度に比べて2.5%増加。着うたや音楽配信がそれぞれ2倍近く伸びたが、「これまで徴収額を引き上げていたネット配信は、足踏み状態」という。

 使用料徴収額を分野別に見ると、CDが含まれる「オーディオディスク」分野の徴収額は260億4,598万円で、前年度比では2.7%の減少。減少傾向にあったCDの生産実績が、前年並みに止まった。

 なお、日本レコード協会が発表した2006年1月から3月までのオーディオレコード生産実績は対前年比で6%増えたが、JASRACでは「CD生産実績が下げ止まったとは言い切れない」と見ている。

 DVDが含まれる「ビデオグラム」分野の徴収額は146億9,841万円で、前年度比5.64%の増加。音楽DVDやDVD-BOXなどが好調だった。

 着信メロディなどの「インタラクティブ配信」分野の徴収額は149億5,944万円で、前年度比で1.7%減少した。これまで好調な伸びを維持してきた「着メロ」が前年度比22.5%と大幅にマイナスだった。一方、「着うた」が前年度比120.1%増、ダウンロード形式の音楽配信が同90.2%増と堅調だった。

 なお、2005年8月に開始した音楽配信サービス「iTunes Music Store」からの徴収額については、「Appleとの事務手続きが完了していない」ため、今回の徴収額には含まれていない。


徴収額構成比 インタラクティブ配信の内訳

ダウンロード形式ではなくレンタル形式の音楽配信が新たな市場を作る

JASRACの加藤衛常務理事
 好調な伸びを示す音楽配信について、JASRACの加藤衛常務理事は「これまでは徴収額を牽引していたが、現在は足踏みしている状態。ネット配信市場が縮小しているわけではないが、エンドユーザーの好みが多様化してきた」と指摘。「今後は、ダウンロード形式で提供する従来型の音楽配信だけでなく、視聴可能期間を設定するレンタル形式による音楽配信が新しい市場を作るのでは」との考えを示した。

 国際活動としては、中国の音楽著作権協会(MCSC)への支援・連携強化により、同団体からの著作権使用料が前年度の6倍を超える約630万円の送金があった。そのほか、2002年10月から各ISPに対して、違法音楽ファイルの送信停止措置を請求しているが、2006年3月末までに請求に基づいて削除されたファイル数は185,439に上るという。送信停止措置の請求から侵害が停止されるまでの期間は平均10.79日。

 ネットワーク上の音楽利用への対応としては、2005年3月に日本経団連が各著作権団体が放送番組のストリーム配信に関する暫定料率を確認したが、JASRACではこの暫定料率の適用を今年度も延長することを関係団体に通知している。また、Podcastingにおける音楽利用については、1曲ごとの許諾ではなく番組単位での許諾ができるようにした。


iPod課金の結論が先送りになったのは「非常に遺憾」

 質疑応答では、私的録音録画補償金制度の見直しに対するJASRACの見解について質問があった。文化審議会では2006年1月、デジタルオーディオプレーヤーを補償金制度の対象とする、いわゆる“iPod課金”に関して、現時点では見送るという結論を出している。

 泉川常任理事は「(iPod課金の)結論が先送りになったのは非常に遺憾。一方、文化審議会では2年後までに、iPodに限らずPCに代表される汎用機の取り扱いについて抜本的に見直すとしている。汎用機を使った私的録音も多いことから、この点については歓迎したい。JASRACとしては、専用機と汎用機をトータルに考えて問題に取り組むのことは当然のこととして受け入れる」との考えを示した。


関連情報

URL
  JASRAC
  http://www.jasrac.or.jp/

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2004年度の著作権使用料は微増、ビデオ・DVDの落ち込みに不安~JASRAC発表(2005/05/18)
iPodなども補償金制度の対象にすることを強く求めていく~JASRAC事業報告(2005/05/18)


( 増田 覚 )
2006/05/17 18:50

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