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「オーマイニュース」編集長の鳥越俊太郎氏ら、報道陣と一問一答

「政治的・思想的に偏りが生じる心配はない」

 オーマイニュース・インターナショナルは28日、市民参加型ニュースサイト「オーマイニュース(日本版)」を創刊した。これに伴い同日、報道関係者向けにブリーフィングを開催。同社代表取締役兼CEOのオ・ヨンホ氏と、オーマイニュース編集長の鳥越俊太郎氏が出席し、報道陣からの質問に答えた。


匿名で好きなことを書くことだけが日本人の文化ではない

オーマイニュース編集長の鳥越俊太郎氏(左)とオーマイニュース・インターナショナル代表取締役兼CEOのオ・ヨンホ氏
 冒頭の挨拶でオ・ヨンホ氏は、「オーマイニュースは、市民が自由に参加できるプラットフォーム。市民記者は、資本や権力だけでなく、オーマイニュース編集局からも自由。政治的にも理念的にも中立を守っていく」と、オーマイニュースのコンセプトを訴えた。

 鳥越氏は、「“市民みんなが記者”というオーマイニュースのコンセプトにより、従来のマスコミとは異なる双方向のメディアが成立するという可能性にかけてみたかった」と、編集長に就任した理由を説明した。

 また、記者が匿名でなく実名で記事を投稿することについては、「日本では、実名で本音をいうと角が立つことから、本音は匿名で語るようになった。実名で発言する文化を日本に定着させるために寄与したい」とコメント。「匿名で好きなことを書くだけが、日本人の文化ではないということを証明したい」との考えを示した。

 なお、質疑応答におけるやりとりは次の通り。


オーマイニュースが資本に縛られるようになったら編集長を辞める

「オーマイニュースが資本に縛られるようになったら編集長を辞める」と語る鳥越俊太郎氏
――現在、掲載されている記事はどのくらい?

オ・ヨンホ氏:創刊前の段階で、市民記者から50〜60本の記事が投稿された。今日は、6名から記事を投稿してもらった。ソフトバンクの孫正義社長からも、市民記者として記事が届いた。当初は、1日15本くらいの記事を集めたい。

――サイトの収益はどこから得るのか?

オ・ヨンホ氏:最初の段階では、バナー広告など伝統的な方法に頼る。今後、ページビューや影響力が増えてきたら、多様な形式の広告も検討したい。

――「資本からの自由」を謳っているが、(株主でもある)ソフトバンクの孫社長に記者を依頼したことに対して、整合性が取れていないのでは?

鳥越氏:孫さんからは、「あらゆる権力や資本から自由な言論の場を作ってほしい」という要請をいただいた。ソフトバンクに不祥事があった場合には、記事として取り上げると伝えたが、「もちろんそれで結構です」という会話を交わした。孫さんは、「オーマイニュースに出資することで、言論の自由に貢献したい」と話していた。もし、オーマイニュースが資本に縛られるようになれば、私は(編集長を)辞める。

――株主であるソフトバンク系列企業が運営するのWebサイトへの記事配信は考えているか?

オ・ヨンホ氏:Yahoo! JAPANやソフトバンクモバイルとも協力はしていきたい。具体的には、他のニュースサイトと同じような条件で、記事を配信していくことになるだろう。

――トップページに掲載する記事の選択基準は?

鳥越氏:今のところ、市民記者の記事を中心にトップに掲載している。今後は、編集部が他のメディアと異なるアングルで取材した記事をトップに掲載することもある。他のメディアが触れていないテーマについても、積極的に掲載したい。


政治的・思想的に偏りが生じる心配はない

――オーマイニュースでは、「政治的・思想的に中立を守る」ことを掲げているが、今日掲載されている記事について、ネットでは思想的に偏りがあるという指摘がある。これについてどう思うか?

鳥越氏:多くの記事が掲載されているので、それを偏っているとか、偏っていないとか言われるのは仕方がない。「政治的・思想的に中立」というのは、編集部では特別な政治的な立場を表明することはないということ。編集部員が一記者として意見を表明することはあるが、編集部が意見を表明したり、特定の意見を排除したりすることはない。今まで掲載された記事を見て、「偏っている」とおっしゃる方もいるかもしれないが、そのうちそうでない記事も出てくることが予想されるので、心配していない。

オ・ヨンホ氏:オーマイニュースを提供するにあたって、自由で、責任のあるプラットフォームをどのように手がけるか悩んだ。我々は、「最小の編集」と「最大限の事実確認」という理念を掲げている。最小の編集とは、記者の文体や個性をできる限り生かすということ。どういう主張であれ、常識に則った記事であれば掲載する。

――市民記者の記事を採用する際の判断基準は?

鳥越氏:常識的に考えて一定のレベルに達していれば、掲載する。事実関係がでたらめであれば、不採用になる。


自らの利益につながる記事に対しては、実名投稿が抑止力に

「良い情報を発信しているブロガーとは、積極的に協力していきたい」と語るオ・ヨンホ氏
――誰でも市民記者として登録できるということだが、特定の団体・企業に所属する人が、自らの利益につながるような記事を投稿する可能性はないのか?

鳥越氏:可能性としてはある。編集部が、そういった記事を見逃すこともあるかもしれないが、ある程度は判断できる。ある一定の方向を持った記事が大量に投稿されたら、おかしいとわかるからだ。その際は何らかの処置が必要になる。その判断ができないようでは、我々もプロではない。

オ・ヨンホ氏:自分の利益のために記事を投稿するということについては、韓国でも懸念された。そのため、市民記者の倫理綱領の中では、「記事を誇張しない」ということを明記している。自分の利益につながる記事を書くときには、自らの所属も明らかにさせている。また、韓国のオーマイニュースにおいて、市民記者の記事で訴訟に発展したのは6〜7件程度だが、訴訟自体はひどいものではなかった。市民記者が実名で書くことから、記事を書く前から慎重に書いてくれると思っている。

――ある会社の株主が、その会社に対して好意的な記事を書くときには、株主であることを明らかにしなければいけないという綱領はあるのか?

鳥越氏:市民記者がどの会社の株主であるかは、なかなかわからない。どうすればいいか、教えてほしい。ある会社について肯定的な記事を書く前に、その株をすでに買い占めておくとか、批判的な記事を書く際に、あらかじめ株を空売りしたりすることも想定される。そういう場合については、リトマス試験紙があるわけではないので、編集部の職業的な直感で嗅ぎ分けるしかない。


記者クラブに加盟する必要はない

会見の模様はストリーミングで生放送された
――韓国のオーマイニュースとの連携は?

オ・ヨンホ氏:韓国と日本の記事の交流は行なう。日本版では、韓国文化を紹介するコーナーを作る予定。鳥越編集長の創刊に関する記事も、すでに韓国で紹介している。オーマイニュースは、韓国で7年前にスタートした。今では、100カ国をこえる市民記者が、英語で記事を書いている。オーマイニュースでは、日韓にかぎらず、100カ国以上の人々が交流できる場にしたい。最近、鳥越編集長がある有力な政治家にインタビューしたが、できればそういう記事が出たときに、韓国語や英語に訳して世界に発信していきたい。

――(韓国のオーマイニュースは、記者クラブの解放を求めるような働きかけを行なったが、)記者クラブに対するスタンスは?

鳥越氏:韓国で記者クラブというのは、既存メディアの特権。この壁を突破することは、新しいメディアとして意味があった。しかし、日本で記者クラブに入る意味はそこまでないと思う。編集長としては、記者クラブに入らなくてもいいと考えている。

――鳥越氏のITに対する知識はどのくらいあるのか?

鳥越氏:全く知らないわけではない。1999年から4年間、「ほぼ日刊イトイ新聞」で毎日記事を書き続けていた。その頃から、ある程度はインターネットに関する知識はある。ただ、最近の日本における複雑なIT事情については、詳しくないというのが正直なところ。そこは、勉強していく。


良い情報を発信しているブロガーとは、積極的に協力していきたい

――ページビュー数やユニークユーザー数に関する目標は?

オ・ヨンホ氏:内部目標はあるが、現在は公表しない。まずは、市民記者の数を重要視する。年末までに5,000人、2年以内には韓国と同じ4万人を目指す。

――原稿料は?

オ・ヨンホ氏:トップページのトップ記事については2,000円、その下にある第2トップ記事については1,000円、その下にある記事が300円。ただ、韓国では、お金のために記事を書くケースは少ない。参加することで何かが変えられるという「参加の楽しみ」ということだと思う。市民記者には、意味のある参加の面白さを提供したい。

――ブログとはどう接するのか? 鳥越氏のインタビューでは、「彼らの書きたいように書いておけばよい」としているが。

オ・ヨンホ氏:インターネット空間には、さまざまな参加方法がある。オーマイニュースのように、実名の市民記者としての方法、ブロガーのようなパーソナルメディアもある。mixiや2ちゃんねるのように、自由に発言できる空間もあり、それぞれ共存している。他のメディアのいい点は学んで、短所は直していきたい。日本ではブロガーが増えているが、オーマイニュースでは、良い情報を発信しているブロガーとは、積極的に協力していきたい。伝統的なメディアとブログには隔たりがあるが、オーマイニュースがその橋渡しとなればと思っている。


関連情報

URL
  オーマイニュース
  http://www.ohmynews.co.jp/

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( 増田 覚 )
2006/08/28 20:27

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