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EPCとucode、複数のRFIDコードを1つのシステムで相互運用する実証実験


「SFC Open Research Forum 2006」の入場券。中にRFIDが挟み込まれている
 Auto-ID Lab.Jpananは22日、ユビキタスIDセンターの協力を得て、「EPC(Electronic Product Code)」と「ucode」という複数のコード体系によるRFIDの相互運用プラットフォームの実証実験を実施すると発表した。まずは、同日より開催されている慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)の研究成果発表イベントにおいて、来場者に配布する入場券にRFIDを導入して実験を行なっている。

 EPCとucodeはいずれも、ユニークなIDが割り当てられた電子タグよって個々のモノを識別する仕組みだが、コード体系や目的、推進母体が異なっている。

 EPCは主に商品の流通の効率化を目指すための仕組みで、現在のバーコードに代わるものと言える。メーカー番号、商品番号、シリアル番号などの情報によって96bitで構成されている。かつて「Auto-ID」と呼ばれていた技術が前身であり、現在は、世界の7大学に拠点を持つAuto ID Labsが技術開発を、EPC Globalという組織がEPCの普及・啓蒙活動を担当している。Auto-ID Lab.Jpananは慶應義塾大学が拠点で、同大学環境情報学部の村井純教授が所長を務めている。

 一方のucodeは、ユビキタスコンピューティング環境において、あらゆるモノや場所を識別するために提唱されているコードだ。128bitで構成され、番号が重複しないよう発番されるが、発番された数字には意味を含まない方式だという。東京大学の坂村健教授が主催するT-Engineフォーラムに設置されたユビキタスIDセンターが標準化を進めている。なお、ucodeはRFIDだけでなく、バーコードや2次元コードなど利用状況に応じたタグが使えるとしている。

 今回の実験は、このように複数の体系が存在する場合でも、アプリケーション側がその違いを気にすることなくシステムを運用できるプラットフォームを検証するものだ。Auto-ID Lab.Jpanan、ユビキタスIDセンター、日本ユニシスの共同で進められており、経済産業省の2006年度の電子タグ実証実験事業にも採択されている。

 東京・丸の内で22日・23日の両日開催されている「SFC Open Research Forum 2006」では、入場券6,000枚にUHF帯のRFIDが挟み込まれている。内訳は、EPCを割り当てた入場券が5,500枚、ucodeが400枚のほか、独自コードを割り当てたものも100枚用意した。一方、会場となっている各ビルには、10カ所にRFIDリーダーが設置され、入場者がゲートを通過するたびにそのエリアの展示情報などを携帯メールに配信するサービスなどを提供するという。


ISO準拠のRFIDリーダーで、コード体系に依存しないシステムが可能に

Auto-ID Lab.Jpananの所長を務める慶應義塾大学環境情報学部の村井純教授

実証実験で使われている3種類のコードの構成
 SFC Open Research Forum 2006で22日に行なわれたパネルディスカッション「UIDセンターとAuto-IDラボの仲良しセッション in 2006」では、村井教授や、Auto-ID Lab.Jpananの副所長である慶應義塾大学環境情報学部の中村修教授らが参加して、今回の実験の概要や目的などを説明した。

 中村教授は、実験では「2つのコードを1つのシステムで扱えることを実証した」と説明する。中村教授によると、今回使用しているRFIDは「ISO18000-6type C」というUHF帯を使うタグ。このISOの標準の中ではヘッダの中でコード体系の種類を示すことが提案がされており、それを見ればEPCなのかucodeなのか区別できるようになっているという。

 しかしながら従来のRFIDリーダーは、EPCなら96bit、ucodeなら128bitというようにコード本体の部分だけを固定長で読む傾向があったと指摘する。その結果、ヘッダ情報をもとに次の96bitを読むのか、128bitを読むのかをダイナミックに変更するのは難しいのではないかとして、業界全体で「食べず嫌いをしていた」と語る。

 それが今回、きちんとヘッダを見た上で96bitを読み込むのか128bitを読み込むのかを変更できるRFIDリーダーを三菱電機とパナソニックコミュニケーションズが開発。「言ってしまえば、本当にISOに準拠したRFIDリーダを作ってもらったということ」だと述べる。実験では独自コードのRFIDも混在しているが、EPCとucodeだけでなく、企業などがすでに導入している社内コードとの互換性確保も実現できるようになるという。

 中村教授によれば、同日朝より使い始めているが、ハードウェア的なオーバーヘッドもなく「最初のつかみとしては『これは行けるだろう』というようなニュアンスを得た」としている。


「どっちが標準か?」は本質的な問題ではない

東京大学の越塚登氏
 ユビキタスIDセンターとの共同実験について村井教授は、「RFIDの夢見ている世界ではすさまじいスケールのタグがあり、電波が飛び交い、システムが非常に大規模になってくる。その中で、いろいろな意味で解決しなければならない課題がある。『どっちが標準化か?』ということが言われるが、そういうことは本質ではない。問題は、人間社会が新しいテクノロジーをどのように普及させていくのかということ。その点は、坂村先生とも共通している」とコメントした。

 パネルディスカッションには、ユビキタスIDセンター側から、東京大学の越塚登氏も参加。「RFIDを利活用している分野では、日本は世界の最先端を切っている状況で、世界もそのことを認識している。さらに産業力に結び付けるところにまで盛り上げ、それを次の国家の社会基盤にしていくというところまで持っていくべきだ。今回の共同実験を小さな契機として、もっと大きなものを盛り上げていきたい」とコメントした。

 なお、同様の実験が、12月5日からT-Engineフォーラムらの主催で開催される「TRONSHOW2007」の中でも行なわれる。3種類のコードが混じったタグを使って、講演の入退室管理や情報配信を行なうという。


関連情報

URL
  Auto-ID Lab.Jpanan
  http://www.autoidlab.jp/
  SFC Open Research Forum 2006
  http://orf.sfc.keio.ac.jp/

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( 永沢 茂 )
2006/11/22 21:20

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