文化庁の文化審議会著作権分科会は30日、著作権法が認めている「私的複製」の見直しなど、これまで審議を続けてきた課題の検討結果を報告書案としてとりまとめた。現行法では私的複製の範囲外とするように明文化されていないファイル交換ソフトによる著作物のダウンロード行為について、私的複製の範囲から除外する必要性などが盛り込まれている。
文化庁の文化審議会著作権分科会では、技術革新や新たなビジネスの登場、国際的な動向などに対応するため、著作権に関する様々な課題を検討している。2005年3月には、著作権法制のあり方を審議する「法制問題小委員会」、私的録音録画に関する制度のあり方を審議する「私的録音録画小委員会」、国際的なルール作りへの参画のあり方を審議する「国際小委員会」を設置。以降、各事項について審議してきた。
今回は、法制問題小委員会と国際小委員会の検討結果が報告書として公表された。私的録音録画小委員会については、2007年度中に結論を出す予定であるため、今後も引き続き検討が続けられる。
法制問題小委員会では、著作権法第30条で認められている、個人または家庭内の使用を目的とする「私的複製」の見直しに関する検討結果がまとめられた。私的複製については、複製技術が発達したことにより、高品質の複製物が大量に作成可能な状況にあることから、適切な権利保護のあり方が検討されていた。
検討課題としては、著作者の許諾を得ずに複製・交換される著作物をファイル交換ソフトでダウンロードする行為について、私的複製の範囲から明文化して除外する規定を設ける必要性が議論された。
現行の著作権法では、私的複製した著作物をファイル交換ソフトを利用してアップロードした場合には、「目的外使用」として著作者などの許諾が必要となる。さらに、無許諾でアップロードすること自体、送信可能化権(著作権法92条)を侵害する行為とされている。その一方で、アップロードされた著作物をダウンロードする行為については、現行法では私的複製の対象から除外するとは明文化されていない。
ファイル交換ソフトなどで著作物をダウンロードする行為について法制問題小委員会では、「著作権者の利益を不当に害するか」などの観点に十分留意して、私的複製の範囲外にするかどうか検討する必要があるとした。また、私的複製の範囲にかかわる検討課題は、私的録音録画補償金のあり方と密接に関係することから、私的録音録画小委員会における検討の状況を見守り、その検討を踏まえて私的複製のあり方全般について検討することが適当であるとした。
そのほか、著作権保護技術のルールに従って複製する場合では、私的複製の範囲内とするかといった解釈上の課題の検討結果もとりまとめられた。この課題については、複製可能な範囲内の私的複製は、著作権法が定める私的複製の枠内にあるものとして位置づけられるとした。ただし、権利者の利益が害されていると言える場合があるかどうかについては、実態に照らして別途検討される必要があることから、私的録音録画小委員会でこの点に留意した検討が進められる必要があるとしている。
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■URL
文化庁
http://www.bunka.go.jp/
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( 増田 覚 )
2007/01/30 16:48
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