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私的録音録画小委員会、レンタルCDが権利者に与える影響を議論


 私的録音録画補償金制度の抜本的な見直しを図るために、文化審議会著作権分科会に設けられた「私的録音録画小委員会」の2007年第3回会合が、10日に行なわれた。今回の会合では、レンタル業界にヒアリングを実施し、日本コンパクトディスク・ビデオレンタル商業組合(CDV-JAPAN)専務理事の若松修氏が回答。レンタルCDからの私的録音が、権利者の利益に与える影響などについて見解を示した。

 ユーザーがレンタルCDを私的使用のために複製する行為については、著作権法第30条で許容範囲とされている。同委員会では、第30条が定める私的複製の範囲の見直しや、権利者への不利益が大きい複製行為に対する補償措置の必要性などを議論している。仮に、レンタルCDからの私的複製が、権利者に大きな不利益をもたらすとされた場合、CDレンタル店が、レンタル料金に私的複製の部分の対価を上乗せして徴収する補償措置が導入される可能性もある。

 こうした背景を踏まえて同委員会では、1)レンタルCD産業の実態、2)レンタル料金にはユーザーの私的複製の対価も含まれており、補償金と二重取りになっているのではないかという指摘について、どう考えるか、3)レンタルCDからの私的録音の問題について、レンタル事業者の立場としては、どのような解決が望ましいと考えるか――という3つのヒアリング事項を提起した。


レンタルCDとレコード売上減少の因果関係はない

 若松氏は、レンタルCD産業の実態について、CDV-JAPANや日本レコード協会(RIAJ)が集計したデータを用いて説明した。それによれば、国内のCDレンタル店舗数は1989年(6,150店)にピークを迎え、その後は減少傾向が続き2006年では3,187店に減少しているという。CDレンタルの総売上高については、1998年の688億円が最高だが、ここ数年間は600億円前後で推移している。

 一方、レコード生産金額は1989年の6,075億円をピークに減少傾向が続き、1997年(4,486億円)以降は毎年右肩下がりで、2006年には3,187億円まで減少した。なお、欧米諸国のレコード売上高の推移を見てみると、イギリスやフランスでは比較的堅調に推移しているものの、米国やドイツなどで1990年代中盤から終盤をピークに、その後は減少傾向が続いている。

 こうした状況について若松氏は、「世界でCDレンタルが認められているのは日本だけ。だからといって日本のレコード売上だけが落ちているのかと言いたい」と語り、CDレンタルの影響で国内レコード生産金額が減少している、という考えに対して疑問を投げかけた。


レンタルCD料金には私的複製の対価は含まれていない

 2番目のヒアリング事項に対しては、レンタルCDに関する許諾条件を設定した経緯を説明した上で、「レンタル料金には私的複製という概念が組み込まれていない」と語り、ユーザーに対して私的録音補償金と二重取りになっているという指摘を否定した。

 若松氏によれば、1984年の著作権法改正にあたって、著作者との合意形成が求められたことから、日本音楽著作権協会(JASRAC)との間で貸与使用料に関する協議が行なわれたという。「使用料の設定にあたっては終始JASRAC主導で進められ、貸与使用料を定める際に先例となるものがなかったことから、当時の録音使用料を参考にしつつ、『LP1枚あたり12曲×録音使用料(5.80円/曲)≒70円』という計算をもとに、『えいやっ』でアルバム1回の貸与につき50円とされた」。

 その1年後には、貸与許諾契約を締結したRIAJと日本芸能実演家団体協議会との間でも、JASRACが定めた金額が基礎となったとしている。しかし、若松氏によれば、当時の協議では私的複製を前提とする話は一切なかったほか、貸与許諾契約書にも私的複製に関する事項が明記されていないと指摘。「JASRACを含む3団体との契約書には、複製に係わる記述は一切なく、貸与にかかわる使用料および報酬の支払いに関する契約のみ」と語り、レンタル料金には私的複製の対価は含まれていないと強調した。


レンタルCDからの私的複製を制限しても、権利者のためにはならない

 3番目のヒアリング事項に関しては、「レンタルCDからの私的録音が、CD売上減少の原因とは言えない。一部では、レンタルCDからリッピングした音楽ファイルがファイル交換ソフトなどに流通したり、レンタルCDから数十枚のCD-Rにコピーしてばらまいているという指摘も耳にするが、これらの行為を明らかにする根拠は出ていないので事実無根だと思う。また、CD購入層はシニア層にシフトしているが、レンタルCD利用者は若年層が大半。従って、レンタルCDからの私的録音を制約しても、CD購入にはつながらない。むしろ、レンタルCDからの使用料を含めて、権利者に利益が還元されなくなる状況になりかねない。こうした実態を正しく評価した上で、今後の私的録音録画補償金制度の設計を行なって欲しい」と述べた。

 質疑応答では、主婦連合会副常任委員の河村真紀子委員が、数日前にCDV-JAPANのWebサイトから「CDレンタルの著作権使用料は、レンタルユーザーがコピーをすることへの代償およびレコードレンタルビジネスに使うことに関する使用料の2つの観点から決定された」「各権利者はユーザーおよびレンタル店双方からコピーに関する補償金を受け取っているため、早急な使用料の見直しが必要」などの記述が削除されていると指摘。レンタルCDの料金に私的複製の対価が含まれていないとする若松氏の主張に、矛盾点があるとして説明を求めた。

 こうした記述が掲載されていた経緯について若松氏は、「CDパッケージの市況が低迷してCDシングルのレンタルが急激に落ち込んだ際、JASRACに対して使用料の減額交渉を行なった。その際、二重取りの可能性があるという理屈立てをしたが、JASRACからは「レンタルCDには複製は含まれていないので、そのような値下げ交渉には応じられない」と軽く一蹴されてしまった。このような主張が、そのままホームページに残ってしまったのは不徳の致すところ」と釈明した。

 このほか、放送業界からの意見として、日本民間放送連盟事務局次長の大寺廣幸委員が「私的録音録画補償金制度はベストの制度ではないとしても、今後放送のデジタル化が進む中で視聴者による私的複製が危惧されることなどを考えると、制度そのものについては存続して欲しい」との考えを示した。


関連情報

URL
  私的録音録画小委員会(第3回)の開催について
  http://www.bunka.go.jp/oshirase_kaigi/2007/chosaku_rokuon_070419.html

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私的録音録画小委員会、「私的複製」の範囲見直しを議論(2007/04/17)


( 増田 覚 )
2007/05/10 18:41

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