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私的録音録画小委員会、見直し議論は「補償の必要がある」ことが前提?


 私的録音録画補償金制度の抜本的な見直しを図るために、文化審議会著作権分科会に設けられた「私的録音録画小委員会」の2007年第5回会合が、15日に行なわれた。

 補償制度の必要性について検討した前回の会合では、私的複製によって権利者などが受ける損失の有無について意見が対立。「議論が入口で終わっている」という声が多かったことから、今回の会合では「議論のたたき台」として、仮に補償の必要性があるとした場合の資料が提出され、議論が進められた。


「補償の必要性がある」という前提で制度設計を議論

「私的録音録画小委員会」2007年第5回会合
 同委員会事務局では、「私的録音録画に関する制度設計について」と題する資料を提出。まず前提条件の整理として、「違法複製物・違法サイトからの録音録画」「違法配信・有料放送からの録音録画」については、私的複製を認める著作権法第30条の適用範囲から除外するとしている。

 著作権保護技術と補償金制度の関係では、「保護技術の内容によっては併存可能」と定義。その上で、デジタル著作権管理技術(DRM)により私的録音録画が厳しく制限されたり、DRMと契約の組み合わせにより録音録画の対価を確保できる状況になった場合などには、補償の必要性がなくなるとの考えを示した。

 また、補償の必要性があるという前提を踏まえ、「録音録画機器・記録媒体の提供という行為に着目した制度設計」「録音源・録画源の提供という行為に着目した制度設計」という2通りの補償金制度設計案が示された。


HDDレコーダーや携帯音楽プレーヤーも補償金対象にする制度設計案

 1つ目の「録音録画機器・記録媒体の提供という行為に着目した制度設計」は、現行の補償金制度をもとにしたもの。これについては、補償金制度の対象となる機器や記録媒体の範囲や決定方法、支払い義務者などに関して幅広い議論が必要であるという。

 現行制度では、DATレコーダーやMDレコーダーなどの録音機器とD-VHSやDVD-RW/DVD-RAM方式DVDレコーダーなどの録画機器、これらの機器に用いられる記録媒体が補償金の対象となっている。しかし、現在はHDDビデオレコーダーや携帯音楽プレーヤーなどの記録媒体を内蔵した機器が主流になりつつあることから、「これを対象にしないことは、負担の公平性の観点から問題がある」として、対象機器の範囲を拡大すべきとしている。

 特にHDD搭載コンポやHDDビデオレコーダー、携帯音楽プレーヤーなどについては、「消費者の主たる用途は私的録音録画」という理由を挙げ、対象機機とすることについて課題は少ないとした。一方、パソコンについては、消費者が私的録音録画を目的に購入しているとは言い切れないことから、「論点をどのように整理するかを改めて検討する必要がある」としている。

 対象機器・記録媒体の決定方法については、現行方式で「政令で定めるもの」という条件があるが、携帯音楽プレーヤーや汎用機器を対象範囲に加えるとすると「迅速に対応できない」ことや、消費者から見て決定プロセスの透明性が確保されていないことを指摘。解決策として、まず政令で技術や用途などを定めた上で、権利者やメーカー、消費者、学識経験者で構成される「評価機関」の審議を経て、文化庁が定めるという代案を示している。


補償金制度の支払い義務者はユーザーからメーカーへ

 また、補償金の支払者については、現行制度では、補償金込みの価格で対象機器・記録媒体を購入するというかたちで、利用者が負担している。これは、購入者のほとんどが私的録音録画を行なうことを前提とした制度設計といえる。

 しかし、汎用機器を対象とした場合、購入者が著作物の録音録画を行なわないというケースも考えられると指摘。なお、対象製品で私的録音録画を行なわない場合、購入者は補償金制度の指定管理団体に対して補償金の返還を請求することが可能だが、返還額が少なすぎて実効性がないという問題点がある。そのため、汎用機器を補償金制度の対象とすると、利用者が支払い義務者では対応できないとの考えによるものだ。

 そこで、製造業者および輸入業者が支払い義務者になるという代替え案を提示。「録音録画機器等の提供があることから私的録音録画が行なわれるとの因果関係がある」「現行制度においても実質的には製造業者等が補償金を支払っている」などの理由から、著作権法第30条の存在により恩恵を受けている製造業者及び輸入業者が著作権保護のために協力を求めることが適切であるとしている。


コンテンツ提供者から補償金を徴収する「世界初」の制度設計案も

 さらに同委員会事務局では、新たな補償金制度設計として、世界で導入事例のない「録音源・録画源の提供という行為に着目した制度設計」を紹介。これは、CDの販売事業者やレンタル事業者、配信事業者、放送事業者、中古販売事業者、友人に提供する消費者など、直接消費者に録音源・録画源を提供している者を支払い義務者とする考え方だ。補償金額の徴収については、権利者が録音録画源の提供者に対して、契約時に補償金制度分を上乗せして請求することが最も一般的と考えられるという。

 この制度の背景には、録音録画源が提供されるから私的録音録画が行なわれるという因果関係があるという。また、録音録画源の提供者は、著作権法第30条により無許諾で録音録画されうることを承知していると指摘。権利者が録音録画源の提供者との契約で私的録音録画の補償金相当額を徴収できないということであれば、法制度により合法的に補償金を請求できるようにする必要があるとしている。

 ただし、この制度の問題点としては、CD購入者や放送視聴者の中には録音録画機器を所有していない人も多いことが挙げられることから、「私的録音の可能性を一切無視して補償金を徴収することなど、不合理さが目立つ制度にならざるを得ない」としている。また、レコード製作者や映画製作者などについては、同時に製造・販売事業者であることが多いため、「自分が自分に補償金を請求することになる」という矛盾点も出てくる。


「補償ありき」で進む議論に批判が続出

 委員会事務局が提出した資料については、賛成・反対を含めて多くの意見が出された。口火を切ったのは、電子情報技術産業協会(JEITA)の亀井正博委員。汎用機器・記録媒体を補償金制度の対象にするという提案について反論した。

 「前回の会合で補償の必要性について様々な議論があったが、それに一切触れずに補償金の必要性があるという前提で話を進められても素直に『はいそうですか』とは言えない。(補償の必要性があるという)ラフジャッジの上で、汎用機器を対象にすると言われても、お金が欲しいとしか聞こえない。製造業者が補償金の支払い義務者になるという意見についても、現在のような議論のプロセスでは『何をか言わんや』、全く受け入れることはできない」

 この意見に対して、日本芸能実演家団体協議会実演家著作隣接権センター(CPRA)の椎名和夫委員は、「前回の会合では『入口の議論で終わってどうする』という意見が大半。まずは、その中身の問題について議論すればよい」と話した。

 主婦連合会の河村真紀子委員は、「そもそもこの小委員会では補償金制度の抜本的な見直しについて検討する場所。制度設計の話をする前に、補償制度の必要性を考えるべき」と反論。私的録音録画によって権利者の損失が出ているという前提で議論が進むことについて「全く納得できない」と語った。

 さらに、前回の会合で椎名委員が私的複製を禁止すれば補償金制度がなくなると発言したことについて、「補償金がなければ、私的な録音録画を許さないということを権利者が決められるのであれば、このような議論の場は必要ないのでは」と疑問を投げかけた。

 また、青山学院大学教授の松田政行委員は、DRM技術の発展状況によって補償措置の対象が流動的に変わるとの考えを示し、「DRM技術で保護される部分については、補償金制度がなくなる社会が1つの理想」との考えを示した。


「現状維持」も1つの選択肢

 委員会事務局が提案した補償金制度設計において、コンテンツ提供者が補償金を支払うという提案については、日本レコード協会の生野秀年委員が反対の意を示した。「私的録音録画で不利益が出ているのは権利者だけではない。むしろレコード会社が最も被害を受けている。レコード会社が権利者に対して補償措置をうんぬんというが、こんなことはあり得るのだろうか」。

 日本記録メディア工業会著作権委員会の井田倫明委員は、汎用機器・記録媒体も補償金対象にすべきという意見について、「特に記録媒体については、ビジネスユースで使われるケースが非常に多い。私的録音録画を行なわない人からも、補償金を徴収するという論理はありえない」とコメント。補償金制度の対象機器・記録媒体を拡大することについて反対した。

 IT・音楽ジャーナリストの津田大介委員は、著作権法第30条が認める私的複製の範囲や補償金制度について、「現状維持」を提案した。「30条の範囲を縮小することについては、以前の委員会で問題があると言ったが、このような意見も(事務局の資料には)反映されていない。今後は、『現状維持』も検討事項に入れてもらいたい」。

 海賊版や違法配信からの私的複製を規制することについては、「特にインターネット上の著作物は、ユーザーが適法か違法かわからないままコピーしているケースが少なくない」と指摘。「違法行為を肯定するわけではないが、著作物の利用者を取り締まるのではなく、アップロード行為を送信可能化権の侵害として規制すれば十分」と訴えた。

 さらに、政府が正式決定した「知的財産推進計画2007」で著作権を非親告罪とする方針が示されたことを挙げ、「インターネットはコピー前提のメディア。利用すること自体が犯罪になりかねない」として、ユーザーへの萎縮効果を与えるだけと主張した。

 津田委員の意見に対しては、日本映画製作者連盟の華頂尚隆委員が「ユーザーは違法と適法の判断ができないというが、商業映画を適法配信しているのは30〜40サイト程度。また、ファイル交換ソフトで流通している映画はすべて違法」と反論。日本レコード協会の生野委員も「現在、適法配信サイトを識別する仕組みを検討中。30条の範囲については、違法配信からの複製は除外してもらいたい」と述べた。


メーカーは利益を補償金制度に還元すべき

 このほか、CPRAの椎名委員が「私的複製が自由であることから生じるメーカー等の利益について」と題する資料を読み上げ、国内におけるデジタルコンテンツ関連のプロダクト市場規模を紹介した。

 それによれば、2005年の市場規模は4兆3,638億円で、内訳としてはHDDレコーダーやDVDプレーヤーなどの「映像系」が1兆6,880億円、CD/MDプレーヤーや携帯音楽プレーヤーなどの「音声系」が1兆7,721億円などで大半を占めている。この傾向は2006年予測でも見られ、市場規模は6兆3,888億円に達する見込みだという。

 椎名委員は、「デジタルコンテンツ関連のプロダクト市場規模は、オーディオレコードの売上推移とは見事に反比例して伸びている。世界でも有数のプレイヤーでもある日本のメーカーが、フランスやドイツでは補償金を負担しているにもかかわらず、日本では負担しないという理由がわからない」と述べ、メーカーが補償金制度の対象機機・記録媒体を販売して得た利益を還元すべきであると訴えた。

 これに対してJEITAの亀井委員は、「市場規模と利益は扱いが違う。また、利益を上げたら補償金の原資にすべきという考えも理解できない」と反論。日本記録メディア工業会の井田委員も「グラフだけを見たら伸びていると感じるかもしれないが、それはハイビジョンテレビの売上が伸びているから。コンテンツを再生するプレーヤーは私的複製とは無関係」と捕捉した。

 なお、次回の小委員会は6月27日に開催。今回、小委員会が提出した資料をもとに議論が進められる予定だ。


関連情報

URL
  私的録音録画小委員会(第5回)の開催について
  http://www.bunka.go.jp/oshirase_kaigi/2007/chosaku_rokuon_070604.html

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私的録音録画小委員会、CD売上減と私的複製の関係めぐり議論は平行線(2007/05/31)


( 増田 覚 )
2007/06/18 11:52

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