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補償金の支払い義務者はメーカーとすべき、権利者団体が主張

「私的録音録画小委員会」の第8回会合

私的録音録画小委員会の2007年第8回会合
 私的録音録画補償金制度の抜本的な見直しを図るために、文化審議会著作権分科会に設けられた「私的録音録画小委員会」の2007年第8回会合が、26日に行なわれた。今回の会合では、補償金の対象となる機器・記録媒体の範囲や補償金の支払い義務者について議論が交わされ、権利者団体からは、携帯音楽プレーヤーやHDDビデオレコーダーなども対象機器に含めた上で、メーカーが支払い義務者となって、これらの機器を販売して得た利益を権利者に還元すべきなどとする意見が寄せられた。

 補償金の対象となる機器・記録媒体の範囲については、日本芸能実演家団体協議会実演家著作隣接権センターの椎名和夫氏が、「私的録音の実態は、専用機器で行なわれているわけではない」として、携帯音楽プレーヤーやPCなど私的複製に使われる汎用機器を補償金対象とすべきと主張した。

 また、日本民間放送連盟の大寺廣幸氏は、HDDビデオレコーダーが補償金対象外になっていることについて、「これは明らかに録画専用機器」と指摘。日本映画製作者連盟の華頂尚隆氏も、録音録画機能を宣伝している機器が数多く販売されているとして、これらの機器も補償金の対象にすべきとの考えを示した。

 補償金の支払い義務者に関する議論では、消費者ではなく、メーカーが負担すべきとの意見が権利者団体や識者から多く寄せられた。

 なお、現行制度では、補償金込みの価格で対象機器・記録媒体を購入するというかたちで、消費者が負担している。対象製品で私的録音録画を行なわない場合、購入者が補償金を返還できる制度があるが、返還額が少額すぎたり、対象製品で私的複製をしないことを消費者が立証しなければならないなど、実質的には機能していないという問題がある。

 このようなことから東京大学教授の森田宏樹氏は、メーカーが支払い義務者になれば、私的複製を行なわない消費者から補償金を徴収することがなくなると指摘。さらに、「機器を購入したユーザーが一度も複製をしなくても、メーカーには販売した時点で利益が発生している。この利益から補償金の原資を還元する方法が最善」(華頂氏)、「補償金も機器販売のためのコストとして位置づけてほしい」(椎名氏)など、メーカーが支払い義務者になるべきとの考えが示された。

 これらの意見に対して、IT・音楽ジャーナリストの津田大介氏は、「メーカーが負担した方がスッキリすると思うが、ユーザーが支払う価格に上乗せされるだけ。実質的な負担者がユーザーであるのは、今と変わらない」と指摘。電子情報技術産業協会(JEITA)の亀井正博氏は、「複製機能をうたう機器があり、これらの機器が売れてメーカーが何らかの利益を得られるのも事実」と認めたものの、その利益を還元しなければならないという理屈はわからないと反論。「少なくとも、補償金というかたちで還元することは認められない」と述べた。

 次回の小委員会は、8月8日に開催される予定だ。


関連情報

URL
  私的録音録画小委員会(第8回)の開催について
  http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/kaisai/07071202.htm

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「どこまでが補償金の対象?」私的録音録画小委員会で議論(2007/07/11)


( 増田 覚 )
2007/07/27 11:05

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