Internet Watch logo
記事検索
最新ニュース

私的録音録画小委員会、これまでの議論を整理した資料提出


「私的録音録画小委員会」の2007年第10回会合
 私的録音録画補償金制度の抜本的な見直しを図るために、文化審議会著作権分科会に設けられた「私的録音録画小委員会」の2007年第10回会合が、24日に行なわれた。今回の会合では、これまでの議論を整理した資料が提出された。

 今回提出された「議論の整理メモ(1)」では、大きく分けて「私的録音録画問題の解決方法に関する基本的視点」「著作権法第30条の適用範囲の見直しについて」「補償の必要性について」「(仮に補償の必要性があるとして)補償措置の方法について」の4項目に関する議論を整理。意見が対立して合意に至らなかった点についても、原則として両論併記というかたちで反映されているという。

 このうち、第30条の適用範囲の見直しでは、「権利者に著しい経済的不利益を生じさせ、著作物の通常の利用を妨げる利用形態との指摘があった形態」として、1)違法複製物や違法サイトからの私的録音、2)他人から借りた音楽CDからの私的録音――が挙げられた。

 1)については、これまでの会合で提出されたファイル交換ソフトや携帯電話向け違法配信に関する実態調査などから、違法な配信や利用者の複製の実態が明らかになり、正規商品の流通や適法ネット配信などを阻害し、権利者に深刻な被害を与えているとして、「第30条の適用範囲から除外すべきという意見が大勢であったと記載。ただし、利用者保護の観点から、適用除外する範囲について、「違法サイトと承知の上で録音録画する場合」や「明らかな違法録音録画物からの録音録画」に限定するなど、一定の条件を課すべきという意見なども反映された。

 2)については、正規品購入の代替品といえるので権利者に大きな影響を与えるとの意見があったが、私的領域で行なわれる録音行為について、利用者との契約により管理することは事実上不可能であると指摘。仮に第30条の適用範囲から除外しても違法状態が放置されるだけであることから、除外することについて慎重な意見が多かったと記された。


 また、「著作物の提供事業として私的録音録画の対価も確保できる可能性があり、補償金との二重取りの懸念から指摘があった形態」として、a)適法配信事業者から入手した著作物の録音録画物からの私的録音録画、b)レンタル店から借りた音楽CDからの私的録音、c)適法放送のうち有料放送からの録画――が挙げられた。

 a)については、配信事業者の一定の管理下で私的録音録画が許容されており、それに伴う対価には私的録音録画の対価も含まれうるとすれば、契約による解決に委ねる趣旨から、第30条の適用範囲から除外することが適当という意見が多かったと記載。さらに、今後も著作権保護技術が発展し、利用秩序に混乱を生じさせずに、権利者が契約によって私的録音録画から使用料を徴収できることになれば、権利制限(第30条)の存在がかえってビジネスを阻害することにもなりうるとして、必要に応じて第30条を縮小する必要があるとの意見も反映された。

 b)については、権利者とレンタル事業者間の貸与使用料を決める際に、日本音楽著作権協会(JASRAC)の録音使用料を参考に決められた事実は認められるが、私的録音の対価が含まれていることは確認できなかったと記載。さらに、レンタル店と利用者の契約(会員規約)では私的録音に関する条項はなく、レンタル業界としては利用者の支払うレンタル料には私的録音の対価は含まれていないとの認識があるとした。ただし、仮に第30条の適用範囲から除外するとしても、新たな許諾ルールを構築することは困難なほか、違法状態が放置される状態を生み出すだけであることから、除外することについては慎重な意見が多かったと記載している。

 c)については、映画会社と有料放送事業者の契約、有料放送事業者と視聴者との契約約款においても、視聴者が行なう録画に関する記述は一切ないことから、私的録画の対価が含まれていることは確認できなかったと指摘。なお、仮に第30条の範囲から除外する場合は、放送番組は多種多様な著作物などを利用することから、新たな許諾ルールの構築は困難であるとしている。

 なお、次回の会合(9月5日)では、仮に補償の必要性があるとした場合における補償金制度の基本的なあり方について、これまでの議論をまとめた「整理メモ(2)」が提出される。

 今後のスケジュールとしては、9月26日に開催される小委員会で「中間整理(案)」がまとめられ、10月12日の文化審議会著作権分科会で、中間整理が了承される。その後、中間整理に関するパブリックコメントを募集し、これを踏まえてさらに検討が進められる。最終的な報告書は2008年1月に小委員会でまとめられ、1月または2月に文化審議会に提出される。


関連情報

URL
  私的録音録画小委員会(第10回)の開催について
  http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/kaisai/07080903.htm

関連記事
「DRM普及でも補償金制度は必要」権利者側がメーカーに利益還元求める(2007/08/08)
私的録音録画小委員会、「私的複製」の範囲見直しを議論(2007/04/17)


( 増田 覚 )
2007/08/24 19:05

- ページの先頭へ-

INTERNET Watch ホームページ
Copyright (c) 2007 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.