Internet Watch logo
記事検索
最新ニュース

通信・放送の法制を一本化、総務省が研究会の最終報告書を公表


 総務省は6日、通信と放送の融合・連携に対応した法体系のあり方について検討を進めてきた「通信・放送の総合的な法体系に関する研究会」の最終報告書を公表した。報告書では、通信・放送に関わる現行法制を「情報通信法(仮称)」として一本化し、通信と放送という縦割りの構造から、インフラやコンテンツといったレイヤー構造への転換を打ち出している。

 総務省では2006年8月から、通信と放送の融合・連携に対応する法制度のあり方を検討するため、「通信・放送の総合的な法体系に関する研究会」を開催。これまでに行なった20回の会合や意見募集などを踏まえて、最終報告書をとりまとめた。

 最終報告書では、情報通信インフラの進展により通信と放送の融合が進みつつあり、利用者も自分が利用しているサービスが通信であるのか放送であるのかを意識しなくなりつつあると指摘。こうした状況を踏まえて、法制度についても、通信分野では電気通信事業法、放送分野では放送法といった形で分かれている現行法制を、「情報通信法(仮称)」として一本化することを提言している。

 一本化する情報通信法は、通信・放送の区別なくコンテンツが流通する時代に合わせて、伝送インフラ(伝送設備、伝送サービス)、プラットフォーム、コンテンツといった「レイヤー構造」の法体系とすることを提言。見直しの基本的な考え方としては、急速な技術革新に対応できる技術中立性の重視、規制の緩和・集約化による多様な事業展開、整合性・統一性のある利用者保護対策などを挙げている。

 その上で、情報通信ネットワークを流通するコンテンツについては、私信など特定間の通信にあたる「公然性を有しないもの」と、不特定多数に受信されることを目的とする「公然性を有するもの」に分類。公然性を有しないものについては「通信の秘密」を保障する一方、公然性を有するものについては「表現の自由」を保障することを重視すべきとしている。

 また、公然性を有するコンテンツについては、表現の自由と他者の人権との調整のために規律が必要となるが、規制についてはコンテンツの社会的影響力の大きさに応じた形にすることを提言。テレビのように特別な社会的影響力を有するものと、そうでないものに分類し、将来的に放送に匹敵するようなコンテンツ配信サービスが登場した場合に対応できるようにする。

 規制の方向性としては、現在の地上テレビ放送に相当する「特別メディアサービス(仮称)」については現状の規制を維持、現在のCS放送に相当する「一般メディアサービス(仮称)」については現行の放送規制を緩和する。また、Webページなどの「オープンメディアコンテンツ(仮称)」については、表現の自由を最大限確保することとした上で、表現の自由と公共の福祉を調整する規律として、違法コンテンツの最低限の流通対策を講ずるとともに、有害コンテンツについても規律の可能性について検討すべきとしている。


 伝送インフラについては、通信と放送、有線と無線といった形で分かれていた法制度の一本化により、柔軟かつ自由な事業展開を促進するとともに、公正競争と利用者保護に重点を置くとしている。

 事業者がコンテンツと伝送インフラといったレイヤーを超えた事業展開を進めることは原則自由とした上で、メディアの多元性の確保や公正競争促進のためのレイヤー間規律の必要性については検討すると説明。また、コンテンツ配信と伝送インフラの中間にあたる「プラットフォーム」レイヤーについても、こうしたレイヤーが新たなボトルネックとなるおそれがある場合には、オープン性確保のための措置について検討するとしている。

 総務省では、今回の報告書の内容を踏まえ、情報通信審議会の諮問・答申を経て、2010年通常国会への法案提出を目指すとしている。


関連情報

URL
  ニュースリリース
  http://www.soumu.go.jp/s-news/2007/071206_2.html
  通信・放送の総合的な法体系に関する研究会
  http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/chousa/tsushin_houseikikaku/index.html

関連記事
総務省、「通信・放送の総合的な法体系に関する研究会」を開催(2006/08/25)
通信・放送の融合に対応する新法体系案、総務省が中間とりまとめ公表(2007/06/20)


( 三柳英樹 )
2007/12/06 20:31

- ページの先頭へ-

INTERNET Watch ホームページ
Copyright (c) 2007 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.