中国の検索サイト「百度」の日本版「Baidu.jp」が23日に本格オープンした。同日、百度日本法人は都内で記者発表会を開催し、中国での成功理由や日本市場向け戦略を説明した。
● 中国で成功した理由は「検索精度」
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登壇者一同
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百度公司のロビン・リー総裁兼CEO
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百度公司のロビン・リー総裁兼CEOは、「我々はテクノロジーベースのメディアカンパニー。主なプロダクトは検索サービスで、Webページやニュース、動画、MP3検索などを提供している。ナレッジサービスなどのコミュニティも運営している」と説明した。
検索サイト「百度」については、「中国で検索トラフィック1位(シェア7割)、世界では3位(米comScore調査)となっている。ユーザーの多くはエンターテイメントコンテンツを中心に検索サービスを利用している」と紹介した。
また、売上も好調であるとし、「毎年100%以上成長を続け、2007年第3四半期の売上は6,600万ドルだった」と説明。2005年8月には米NASDAQに上場しており、「株式公開初日は350%も株価が上昇してNASDAQの最高記録となった」とアピール。2007年12月にはNASDAQの100指数に算入した。
中国での成功理由については、誤解されている部分も多いという。「検閲の影響や政府の支援があったわけではない。中国は著作権に甘いからと言われるが、問題のあるリンクは除外している。また、先行者優位でもないし、コマーシャルのためでもない。検索精度をユーザーが判断した結果」とした。
競合他社との違いとしては、「他社はよくグローバルなサービスを視野にしているが、我々はその国のユーザーに適したローカルなサービスを展開していく。また、他社を超えるサービスが作りたいのではなく、ユーザーにとって良いサービスを考えている。さらに、他社は最新技術を格好良く見せるようなサービスを作るが、我々は市場を把握し、ユーザーに必要なサービスを作っている」と説明した。
百度が中国以外で展開するのは、日本が初めてとなる。日本市場へ進出した理由としては、「日本は世界第2位の経済大国であり、魅力のある市場。日本と中国は言語や文化が似ており、2バイト文字での検索エンジンに強い我々は、現在シェアを占めている2社よりも検索精度の高いサービスを提供できる」とした。最後にリーCEOは、「8年前、中国語の検索エンジンを多くの人に使ってもらいたいと事業を始めたように、今度は、日本語の検索エンジンをより多くの日本のユーザーに使ってもらいたいと思う」と意気込みを語った。
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中国版「百度」のサービス
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検索サイトの世界シェア
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● 「セカンドサーチエンジン」として利用してもらいたい
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百度公司の出井伸之社外取締役
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百度日本法人の舛田淳取締役
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百度日本法人の舛田淳取締役は、「Baidu.jp」の方向性やサービスについて話した。
「現在、日本の検索市場は『Yahoo!』『Google』の完全2強時代になっている。自社調査によれば、ユーザーの7割が複数の検索サイトを利用しており、さらに8割は利用中のサイトに不満はないと回答している」と説明。ただし、「他に高い検索精度を持つサービスがあれば、乗り換えたいとの意向もある。ユーザーは、現在の検索サイトに潜在的な不満を感じているのではないか」と指摘した。
そこで百度では、複数の検索サイトを使うユーザーに対し、Baidu.jpを「セカンドサーチエンジン」として利用してもらいたい考えだ。また、「MP3検索がうけたと思われがちだが、Webページ検索精度の高さが成功の要因」と述べ、高度な技術をアピール。さらに、検索精度をベースに「遊ぶサーチエンジン」を提案。画像・動画検索を強化することで「使って楽しい検索サイトにしていく」という。
舛田氏は、従来の検索エンジンについて、「以前はキーワードマッチングに力を入れていたが、スパムワードなどが増え、検索結果の順位が正常に機能しない例も出てきた。次に、サイトへのリンクを分析するハイパーリンク主体の評価アルゴリズムが主体になってきた。ただし、これもSEO対策などでやたらとリンクを増やす会社などがあり、意味がなくなっている」と説明する。
これに対し、Baidu.jpでは、「ユーザーとともに成長する検索エンジンを目指す」という。「漢字などの2バイト文字は多義性がある。我々は2バイト文字での検索技術開発に注力しており、単にキーワード(字面)の一致を理解するだけでなく、キーワードの持つ意味を理解できる技術がある。また、Webページのプログラム構造を視覚的に分析して、サイトを評価している。さらに、ユーザーの行動プロセス(入力ワードやクリック)も分析する」と説明した。
バックエンド技術も強化し、検索結果の処理速度向上も目指す。「日本でのプロジェクト、および中国のネット人口増加により、数年以内に世界最大の検索回数を処理することになるだろう。それに向けて、パートナー企業と共同で検索技術プラットフォームを構築する」と述べた。
今後は、各検索サービスの精度向上を図りつつ、ユーザーの検索行動を支援するサービスやコミュニティサービスにも取り組む考え。日本独自の展開としては、Baidu.jpを検索プラットフォーム化し、モバイルや家電など、外部デバイスとの連携も検討する。このほか、「Baidu Labプロジェクト」を立ち上げ、ユーザーニーズを反映したサービスを開発する。
舛田氏は、「2007年は基盤技術を構築した。2008年はサービスに注力し、2009年はトラフィックと認知度の向上に努める。そして、2010年に広告によるビジネスモデルに取り組む」と説明。「まずはユーザーとのコミュニケーションにフォーカスして、技術やトラフィックを向上させたい。段階を経て、日本市場での認知度を上げ、その先でビジネス化を展開したい」とした。
最後に、百度公司の出井伸之社外取締役(ソニー最高顧問)は、「今までインターネットは米国発のサービスが多かった。百度は、中国で成功して日本に進出するということで、新しいネットの世界が広がるだろう。日本のユーザーおよび企業から見ても、日本と中国の距離を縮める機会になる」とコメント。また、「NASDAQのコーポレートガバナンスの仕組みにおいて、グローバルな感覚で企業を運営していく中で、私なりの役割を果たしていきたい」と話した。
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複数の検索サイトを利用するユーザーは合計で7割
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今の検索サイトに不満はないが、乗り換える可能性も
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高い検索精度があれば乗り換えたいとの意向は8割以上
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検索エンジンを支えるバックエンド
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検索サービスをコアにした今後の展開
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日本独自のオープンサーチプラットフォーム展開
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関連情報
■URL
ニュースリリース
http://www.baidu.jp/search/s080123.html
Baidu.jp
http://www.baidu.jp/
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( 野津 誠 )
2008/01/23 19:13
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