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ソフトバンク代表取締役の孫正義氏
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2008年3月期連結決算
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ソフトバンクは8日、2008年3月期第3四半期(2007年4月~12月通期)の連結決算を発表した。同日行なわれた会見では孫正義代表取締役が、2008年は携帯電話の「インターネットマシン元年」と宣言。今後のインターネット業界では、「インターネット接続はパソコンからケータイへ」「中国を制したものがインターネットの世界を制す」ということが2大潮流になると述べ、これらを実現するソフトバンクが、世界ナンバーワンのインターネット企業になるとアピールした。
売上高は前年同期比13.0%増の2兆587億円、営業利益は31.9%増の2,601億円、経常利益は107.9%増の2,319億円で増収増益。当期純利益も931億円で、前年同期から3倍以上の伸びを示した。
移動体通信事業の売上高は前年同期比20.3%増の1兆2,205億円、営業利益は30.3%増の1,479億円と順調に推移。ソフトバンクモバイルの全契約数は前年同期末から211万7,000件増え、累計で1,761万3,500件。また、新規契約から解約を差し引いた月間の純増数が2007年5月以降、9カ月連続で首位になるなど、引き続き携帯電話事業が着実に成長した。
ブロードバンド・インフラ事業の売上高は前年同期比1.1%減の1,941億円、営業利益は56.0%増の302億円。2007年12月末の「Yahoo! BB ADSL」累計接続回線数は494万3,000回線、四半期ベースのARPU(ユーザー支払いベース)は4,316円。売上高は微減したが、ADSL事業の経営効率化を図ったことで、営業利益は拡大した。
● 2008年は「ケータイのインターネットマシン元年」
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インフラ、コンテンツ、ポータル/検索のすべてを持つのはソフトバンクだけとアピール
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孫社長は会見で、高速通信方式「HSDPA」に対応する機種が、2006年度の4機種から2007年度には28機種に増えたと説明。さらに、携帯電話の画面サイズとCPUが進化していることを挙げ、携帯電話が従来の「ボイスマシン」から「インターネットマシン」へ進化しつつあると力説した。「画面サイズやCPUが進化した端末は欧米でも出せるが、通信速度を担保するHSDPAを全国展開できるのは日本だけ。まさに今年の日本は、ケータイのインターネットマシン元年と呼ぶにふさわしい環境」。
「ケータイのインターネットマシン元年」には、GoogleやYahoo!、Apple、Microsoftなどインターネット業界を牽引してきた企業が、携帯電話業界への参入を図ると孫社長は指摘する。また、携帯電話向けのインターネットでは、「インフラ」「コンテンツ」「ポータル/検索」の3点が重要となるとし、これら3点を満たすのはソフトバンクだけであると訴えた。
「だからこそ、ソフトバンクはこの時期に携帯電話事業に参入した。音声やメールだけなら土管をつなげばいいが、今後はそこで何を流すかが問われる。大切なのは、インフラ、検索エンジン/ポータル、コンテンツをシームレスに提供すること。世界を見ると、Googleには検索があり、コンテンツでもYouTubeを買収したが、インフラがない。国内ではNTTグループにはインフラがあるが、コンテンツやポータル/検索には存在感があまりない。この3点をフルセットで持っている会社はなかなかないのではないか。」
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インターネット接続はパソコンから携帯電話へ
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携帯電話は「ボイスマシン」から「インターネットマシン」へ
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また、孫社長が2点目に挙げた潮流「中国を制したものが世界を制する」については、2月6日時点の終値株価から算出した世界企業の時価総額上位5位のうち、3社が中国企業であると指摘。「これまでは、インターネットや自動車、家電でも米国を制したものが世界を制した。しかし、これからは少し違うかもしれない」。ソフトバンクはこれまで中国展開を進めており、その一例が中国最大のB2Bサイトを運営するアリババグループを傘下に収めていることだとアピールした。
「日本でもYahoo! JAPANを抱えるソフトバンクは、中国と日本でインターネットナンバーワン企業を抱えている。『アリババ+ヤフー=アジアNo.1ネット企業』。さらに『アジアNo.1ネット企業+ケータイ=ソフトバンク』。わかりやすい算数だ。『アジアNo.1ネット企業=世界No.1ネット企業』と呼ばれる時代も10~20年後。もしかしたらもう少し早いかもしれない。『ソフトバンクは通信会社』と言われるが、それは現在の姿。ソフトバンクは、アジア最大のインターネットカンパニーを目指している。この中長期戦略を皆さんにもう一度共有、認識してもらいたい。」
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「アリババ+Yahoo! JAPAN=アジアNo.1ネット企業」
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「アジアNo.1ネット企業+ケータイ=ソフトバンク」
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● Googleに関する質問が集中
今回の会見では「これまでの決算会見で一番Googleの名前を出した」(孫社長)ことから、質疑応答ではGoogleに関連する質問が集中した。
「Googleに対する脅威を持っているのか」という質問に対しては、日本や中国のインターネット市場でヤフーやアリババを傘下に抱えていることから、Googleよりも先行していると主張。また、携帯電話がインターネット化する時代では、他のインターネット企業よりも携帯電話への「土地勘」を持っていることも強みと語り、まずはアジアでの地位を築くことで、世界ナンバーワン企業であると訴えた。
「漢字圏というかお箸文化の地域では、案外Googleはナンバーワンではない。検索分野では中国は百度、韓国はNaverが圧倒的なシェアを持っている。我々としては、アジア各国の文化やコンテンツ、テクノロジーを十分理解して、パートナー企業との関係を十分考慮しながら、先手を打っていきたい。また、中長期経営戦略を戦うためにはアジアをしっかりと守っていくこと。これが結果的には、世界ナンバーワンへの一番の近道かもしれない。」
また、Googleの方が技術的に優れているのではないかという指摘には、真っ向から反論した。「YouTubeでは違法コンテンツの利用度合いが高いと聞いている。我々もYouTubeに対抗するサービスを、場合によっては違法でもやるかと議論したことがある。技術的には対抗するものができたが、違法的に他社のコンテンツをコピーすることはまずいと、思想的な面でやらなかった。検索エンジンではGoogleが若干先行しているが、Yahoo!も負けじと開発している。しかし、どの会社が先行したかというのは関係なくて、戦いは10年、20年と続き、2~3年のサイクルで追い越すチャンスも出てくると思っている。Googleは最初は検索一辺倒だったが、最近ではケータイやポータルにも乗り出してきている。それは我々も同じ。最後は総力戦になるだろう」。
関連情報
■URL
IR資料ライブラリ
http://www.softbank.co.jp/irlibrary/
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( 増田 覚 )
2008/02/08 11:36
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