アッカ・ネットワークスは14日、2007年12月期(1月~12月)の決算説明会を開催した。説明会では、今後の新規事業として他社との連携を中心にしたワイヤレス事業への参入を説明するとともに、経営陣の交代を求めているイー・アクセスの株主提案については改めて反対の意向を表明した。
● ADSL市場の縮退で売上減も、コスト削減により利益は確保
|
2007年連結決算の概況
|
2007年の連結決算は、売上高が350億7,900万円(前年比9.7%減)、営業利益が19億9,100万円(同5.9%増)、純利益が14億7,500万円(同39.0%増)の減収増益となった。アッカ・ネットワークスの木村正治社長は、個人向けADSLサービスの売上が減少する一方で、法人向けの光ファイバサービスが伸びており、経営面では中継回線使用料などのコスト削減に努めた結果、売上は減少したものの利益は増加したと説明した。
事業別の売上高は、個人向けサービスが269億1,000万円(前年比14.4%減)、企業向け・その他サービスが81億6,800万円(同10.7%増)。回線別では、DSLサービスが326億9,900万円(同13.7%減)、光・その他サービスが23億8,000万円(同157.6%増)。法人向け光サービスが伸びているものの、依然として売上は個人向けADSLサービスの占める割合が高い。2007年12月期における加入数は、個人向けが96万2,000件(12.6%減)、法人向けが5万100件(1.2%増)。
2008年の業績予想については、今後もDSL市場の縮退傾向が続くとして、売上高は2007年から約10%の減少となる310億円としたが、コスト削減などにより利益については維持する(営業利益19億円、純利益14億円)と説明。また、WiMAXの事業者免許が得られなかったため内部留保を株主に還元するとして、2008年の年間配当については増配となる7,500円(2007年は5,000円)を予想しているとした。
木村社長は「ADSL市場については縮退もやむなしという情勢」と語り、こうした状況の中での今後の経営方針については、DSL事業については徹底的なコスト削減を追及するとともに、好調な法人向け光サービスについては販売を強化していくと説明。一方で、今後の成長のためには新規事業が欠かせないとして、ワイヤレスブロードバンド事業を立ち上げていくと説明した。
|
|
2008年度経営方針
|
2008年度業績予想
|
● 他社との協業を中心としてワイヤレスブロードバンド事業に参入
アッカ・ネットワークスでは同じ14日に、NTTドコモとの提携による企業向けデータ通信サービスの提供と、NTTコミュニケーションズ(NTT Com)およびウィルコムとの間で新規サービスの提供に向けた検討を共同で開始すると発表。こうした他社との提携により、新規事業としてワイヤレス分野での事業展開を行なっていくとした。
NTTドコモとの提携では、NTTドコモのHSDPA網でのFOMAサービスの提供を受け、MVNOとして企業向けデータ通信サービスを展開することで基本合意。今後早急にサービス提供を開始するとともに、ADSL・光アクセスサービスを組み合わせたトータルパッケージでの展開も積極的に推進していくとしている。
NTT Comとウィルコムとは、固定ブロードバンドサービスに無線ブロードバンドサービスを融合させた「ブロードバンド・マルチアクセス・サービス」の実現に向け、共同検討を開始することで合意。3社のサービスや今後展開するサービスを組み合わせ、1つのIDによるマルチアクセスサービスなどの提供に向けて検討を進めるとしている。
また、公衆無線LANサービスについても検討を進めているとして、早期にはトリプレットゲートとの協業により共同実験や共同マーケティングを進めていくと説明。また、既存のADSLネットワークを活用することで、無線LANサービスのスムーズな展開も可能だとして、投資効率を確認しながら段階的にサービスを展開していくという見通しを語った。
このほか、地域向けWiMAXに参入しようとするCATV事業者を対象としたコンサルティングサービスなど、WiMAXへの参入を目指して続けてきたノウハウを活用する事業を展開。ワイヤレスブロードバンド事業については、まずは他社との協業によりすぐに開始できるサービスを中心として、各種サービスの組み合わせによるマルチアクセス環境を提供していくとした。
|
|
多様な回線による「ブロードバンド・マルチアクセス」の提供を目指す
|
新規事業としてワイヤレスブロードバンドを展開
|
|
|
NTTドコモとHSDPAによるMVNOに合意
|
NTTコミュニケーションズ、ウィルコムと新規サービスに向け共同検討
|
● イー・アクセスの提案には改めて反対の意向を表明
|
アッカ・ネットワークスの木村正治社長
|
質疑応答では、アッカ・ネットワークスの筆頭株主となったイー・アクセスが、木村社長など現在の取締役の退任を求める株主提案を行なったことについての質問が多く上がった。
木村社長は、「企業価値を向上させるための提案であれば検討したいと思うが、今回の提案は取締役の交代を求めているだけで、向上策が見えない」として、改めてイー・アクセスの株主提案については反対の意向を表明。大手の株主企業に対してはこうした趣旨の説明を行なっており、「理解をいただいていると考えている」とコメントした。
今回説明した事業計画が、イー・アクセスの提案に対する回答にあたるのかという質問には、「以前から検討していたもので、提案に対するリアクションとして作ったものではない」と説明。アッカの側でも委任状を集めるといった行動を起こすかについては、今後の状況に応じて検討していきたいと述べるにとどまった。
関連情報
■URL
アッカ・ネットワークス 投資家情報
http://www.acca.ne.jp/ir/index.html
ニュースリリース(NTTコミュニケーションズ、ウィルコムとの共同検討を開始)
http://www.acca.ne.jp/release/080214_1.html
ニュースリリース(NTTドコモとMVNOによるサービス提供で基本合意)
http://www.acca.ne.jp/release/080214_2.html
■関連記事
・ アッカ、イー・アクセスの株主提案に対して反対を表明(2008/01/29)
・ イー・アクセスの千本会長「アッカへの提案は株主価値向上が目的」と強調(2008/01/23)
( 三柳英樹 )
2008/02/14 20:02
- ページの先頭へ-
|