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著作権と別の「ネット権」創設を、角川歴彦氏ら参加のフォーラムが提言


17日に行なわれた「デジタル・コンテンツ法有識者フォーラム」の記者会見
 「デジタル・コンテンツ法有識者フォーラム」は17日、「ネット法(仮称)」の制定を求める政策提言を発表した。著作権法から切り離したネット法を制定することで、デジタルコンテンツのインターネット流通に限って著作権者らの権利を制限し、日本におけるデジタルコンテンツの流通を促進するのが狙い。

 デジタル・コンテンツ法有識者フォーラムは民間の研究団体で、2007年1月に発足。政策研究大学院大学学長の八田達夫氏が代表を務め、メンバーには一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授の相澤英孝氏、映画プロデューサーの一瀬隆重氏、西村あさひ法律事務所パートナー弁護士・ニューヨーク州弁護士の岩倉正和氏、角川グループホールディングス会長の角川歴彦氏、GMOインターネット会長兼社長の熊谷正寿氏、キヤノン専務取締役の田中信義氏、ジャパン・デジタル・コンテンツ信託代表取締役の土井宏文氏、シネカノン代表取締役の李鳳宇氏らが名を連ねる。


「ネット権者」を設定し、個々の著作権者らの権利は制限

 八田氏によると、携帯電話を除いて日本でデジタルコンテンツ配信の流通が普及しない理由は多数があるが、インターネット配信するにあたっての権利処理の複雑さが大きいと指摘。この部分の権利処理を簡略するために、ネット法が有効と説明する。

 ネット法では、1)インターネット上の流通に限定したデジタルコンテンツの使用権を、「ネット権」として一定の事業者に付与する一方、2)「ネット権者」に対しては、ネット配信を通じて得た利益を、著作権者や著作隣接権者らに公正に分配する義務を負わせる──という2点が柱となる。

 従来、過去のテレビ番組などをインターネット配信しようとすると、原作者や番組製作会社、出演者などから、複製権や、公衆送信権あるいは送信可能化権、著作者人格権、実演家人格権などについてそれぞれ許諾を取る必要があったという。

 これに対してネット法では、インターネットでの流通に関する権利をネット権者に集中する。原権利者らは、インターネット上の流通については原則として権利行使できなくなるが、代わりにネット権者に対して報酬請求権を持つことになる。これにより、これまで権利処理が複雑なためになかなか普及しなかったインターネット配信による二次使用料の増加が期待できるため、消費者や配信事業者のみならず、権利者にもメリットがあるとフォーラムでは強調している。

 ネット権の対象となるコンテンツは当初、インターネット上での流通の要請が大きい映画、放送、音楽の3分野とし、それぞれ映画製作会社、放送事業者、レコード製作者がネット権者となる。今後、他の分野についても検討が必要だという。また、分配率については当事者間の協議で決めるが、そのルールについても今後の検討課題だとした。

 なお、17日に東京都内で開かれた記者会見で、GMOインターネットの熊谷氏は「YouTubeのような映像配信にかかわる世界的なネットベンチャーが日本に出てこないのは、技術的な問題だけではない。さまざまな法制度のために、ネットベンチャーは大胆なチャレンジが出来ない」とコメント。ネット企業としてそのような問題を感じていることも、同フォーラムに参加した理由だと説明した。

 また、フォーラム代表の八田氏らも、Googleや百度のような世界的なIT事業者が勃興する一方で、日本におけるデジタルコンテンツ流通政策が遅れることで、日本が世界から取り残される懸念を指摘している。

 ただし、今回のネット法でネット権が付与されるのは、映画製作会社や放送事業者、レコード製作者を想定しており、ネット企業に対して直接ネット権が付与されるものではないようだ。ネット企業が配信を行なうには、これらネット権者と契約するかたちだ。

 フォーラムでは、すでに国会議員らにもこの政策提言について説明しているという。さらに今後、世論も喚起し、政府の取り組みを促したい考えだ。なお、提言は熊谷氏のブログ「クマガイコム」でダウンロード配布している。


関連情報

URL
  「クマガイコム」の該当記事
  http://www.kumagai.com/?eid=445

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( 永沢 茂 )
2008/03/17 19:49

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