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ネット全般を対象に健全サイト認定、第三者機関「I-ROI」設立へ

設立委員に出井伸之氏、角川歴彦氏、村井純氏ら

「インターネット・コンテンツ審査監視機構(Internet-Rating Observation Institute:I-ROI)」のロゴ

25日、設立委員らによる会見が行なわれた
 学識経験者と有識者により策定されるレーティング基準を用いて、インターネットサイトとモバイルサイトの健全性を客観的に認定する第三者機関として、有限責任中間法人「インターネット・コンテンツ審査監視機構(Internet-Rating Observation Institute:I-ROI)」を設立することが25日に発表された。インターネット全般を対象にしたレーティング機関としては、世界的にもさきがけになるという。

 設立委員会の代表理事を東京工科大学学長の相磯秀夫氏、顧問を一橋大学名誉教授の堀部政男氏が務め、設立委員には出井伸之氏(ソニー・アドバイザリーボード議長)、襟川恵子氏(コーエー・ファウンダー取締役名誉会長)、角川歴彦氏(角川グループホールディングス代表取締役会長兼CEO)、鈴木幸一氏(インターネットイニシアティブ代表取締役社長)、夏野剛氏(NTTドコモ執行役員)、原田泳幸氏(日本マクドナルド代表取締役会長兼社長兼CEO)、村井純氏(慶應義塾大学環境情報学部教授)らが名を連ねる。

 I-ROIは、社団法人デジタルメディア協会(AMD)において2005年度から活動してきた「コンテンツアドバイスマーク(仮称)推進協議会」を発展的に解消し、サイト認定活動を実施に移す機関となる。AMDが行なった「インターネット及びモバイル・インターネットにおけるコンテンツ・サービスを安心して利用するためのガイドラインに関する検討・調査研究」の成果を踏まえて、国際的に通用するレーティング基準を検討中だという。

 今後、速やかに設立手続きを進め、9月をめどにサイトの認定活動開始を目指す。また、インターネットの健全な利用には、サイトの健全性を認定するだけでなく、ユーザーの啓蒙も重要だとして、インターネットリテラシーに関する啓蒙活動も展開する。

 なお、コンテンツアドバイスマーク(仮称)推進協議会による「コンテンツアドバイスマーク(仮称)」の運用イメージとしては、インターネットのコンテンツ事業者が申請すると、マーク運用機関がこれを審査し、認定した事業者にマークを付与する流れとなっている。認定を受けた事業者は、マークとともに、コンテンツの申請情報を開示。エンドユーザーがこれをもとに、コンテンツの有害性を判断できるようにする。


国や行政の規制や介入を招かないかたちで、安全なネット社会を

 25日に都内で行なわれた設立委員会の記者発表会で、I-ROIの代表理事を務める相磯氏は、インターネット上の違法・有害情報や犯罪につながるサイトから青少年を保護する手立てをどのように整えるかということが最近の深刻な問題の1つとなっていることを挙げ、「これは社会問題の1つ。いうなれば、日本では技術的なインフラの整備のはたいへん順調に進んでいるが、それに対応した社会的インフラが未整備であることが、ここに来て顕著になってきた」と指摘した上で、「政府やコンテンツ事業者、通信事業者、利用者から、ある程度距離を置いて独立した第三者の立場からコンテンツやサイトの審査、運用監視、評価基準の制定などを客観的に公正かつ厳正に行なう機関を設けることにした」と、I-ROIの設立背景を説明した。

 また、「もちろん、インターネットの特性やコンテンツの多様性、表現の自由の保障、青少年の保護など、たいへん難しい問題が絡んでいる」とし、「このような第三者機関は、それぞれの特色を持って複数存在することがむしろ望ましいのではないか。これらの第三者機関が一致協力して、さまざまな価値観を共有すると同時に、利用者の選択肢を増やし、より望ましい制度を作り上げていくことが求められている」と強調した。


設立委員会の世話人を務める襟川恵子氏(コーエー・ファウンダー取締役名誉会長) 設立委員会の代表理事を務める相磯秀夫(東京工科大学学長)

 設立委員の村井氏はビデオコメントを寄せ、「創造性や新しい人間の知性の力を組み合わせていく上で、インターネットはなくてはならない基盤になった。一方で、どういう人たちに、どうアクセスできるのか、そのための新しいメカニズムが要る」と指摘。また、「コンテンツの世界は、PCで使う普通のインターネットと携帯があまり区別がない。だからこそ日本の携帯は発展した。したがって、インターネットコンテンツの未来を考える時に、この2つを区別してはいけない」とも述べた。

 同じく設立委員の中村伊知哉氏(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授)は、「レーティングの審査や監視といったものは、安全な社会を作り上げていく上での1つの手段に過ぎないということを認識しておく必要がある。安全な社会を作り上げていくためには、そういった対応のほかに技術の開発や、リテラシー教育の充実など、非常に多くの課題や重い問題がある。広い視野をとって検討していきたい」と述べたほか、「おりしも、自民党の青少年特別委員会などの場において、ネットの有害情報を規制するといった法案が議論されている。そうした国や行政の規制や介入を招かないかたちで、民間の努力で安全で安心できるネット社会を構築していくことが、まず大事」と強調した。


設立委員の村井純氏(慶應義塾大学環境情報学部教授) 設立委員の中村伊知哉氏(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授)

設立委員会の顧問を務める堀部政男氏(一橋大学名誉教授) 設立委員の夏野剛氏(NTTドコモ執行役員)

関連情報

URL
  コンテンツアドバイスマーク(仮称)推進協議会
  http://www.amd.or.jp/activity/advice_mark.html

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( 永沢 茂 )
2008/04/25 19:47

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