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「古都北京デジタルマップ」のWebサイト
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国立情報学研究所(NII)は14日、北京の古地図や古写真を提供するWebサイト「古都北京デジタルマップ」を公開した。約250年前の北京の古地図「乾隆京城全図」をデジタル化してKMLファイルとして公開しているほか、約100年前の北京の写真も参照できる。
デジタル化されたのは、清王朝の乾隆帝の勅命により編纂され、1750年に作成された地図。当時の北京城内にあった個々の建物が記されており、北京に関する最古の詳細な実測図だという。1935年に故宮博物院により発見され、その存在が明らかになった。ただし、原図は縦14m、横13mにも及び、現在は閲覧不可能であり、一般に利用できるのはいくつかの複製本となる。
乾隆京城全図は複製本のうちの1つで、今回は東洋文庫が所蔵している17冊・203ページをデジタル化。合計290億画素の画像につなぎ合わせ、「Google Earth」上にオーバーレイ表示できるようKMLファイルにした。
● 古地図と現在の衛星地図を透過的にオーバーレイ
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「Google Earth」にオーバーレイ表示した「乾隆京城全図」の全体
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乾隆京城全図を閲覧するには、古都北京デジタルマップのサイト上にある「『乾隆京城全図』をGoogle Earthで閲覧(Version 1.0)」のリンクをクリックすればよい。Google Earthがインストールされていれば、Google Earthが起動し、乾隆京城全図が表示される。
Google Earthのスライダーを動かすことで、乾隆京城全図の透過度を変えながら、現在の衛星地図と重ね合わせて表示可能だ。乾隆京城全図がカバーしているエリアは、かつて城壁で囲まれていた範囲で、現在で言うとだいたい北京の環状2号線の内側だという、東西・南北が約9km四方のエリアだ。
古都北京デジタルマップでは、古地図中の地名検索機能もあり、結果を地図上に表示できる。かつて存在した役所などの位置を一覧できる。
さらに、東洋文庫所蔵の図像史料マルチメディアデータベースでアーカイブしている約100年前の北京の古写真を古地図にプロットする機能も用意した。可能な限り現在の写真と対応させることで、北京の現在、100年前、250年前の姿を比較して楽しめるようにしたとしており、研究者だけでなく、観光客など一般の人々にも有用だとしている。
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オーバーレイした「乾隆京城全図」の透過度をスライダーで変更可能。現在の衛星地図と比較できる(崇文門付近)
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100年前や現在の写真も参照可能。「比較する」リンクをクリックすれば、NIIの「今昔写真」のサイトにジャンプし、拡大画像を見られる
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● デジタル化により古地図の信頼性が向上
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NII准教授の北本朝展氏
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NII准教授の北本朝展氏によると、乾隆京城全図は、当時の技術力の限界はあるものの、非常に精緻に実測された地図だと説明。北京に関する最高の史料的価値を持つ地図だが、一般的には閲覧することさえ困難なため、デジタル化することのインパクトは大きいという。また、特に大きく変貌しつつある北京においては、都市の歴史や変化を知るための基盤として、古地図の重要性も指摘した。
デジタル化にあたっては、古地図には緯度・経度情報がないため、宮殿建築や大規模邸宅、大通りの交差点など、現在と同じ位置と考えられる基準点を約1800カ所ピックアップして、古地図の誤りや歪みを補正した。任意の場所にピンを打つなどの操作が容易だということで、位置合わせのツールとしてもGoogle Earthを活用したという。
さらに、1枚の地図に貼り合わせる過程で、乾隆京城全図において複数のページの順序が入れ替わっていた誤りが見つかったほか、索引に記載されている地名にも誤りや記載漏れがあることも明らかになった。古都北京デジタルマップの乾隆京城全図ではこれらを修正したため、NIIでは、デジタル化前の紙の地図よりも信頼性が高くなったとしている。
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デジタル化にあたっては、1800カ所の基準点の位置合わせにより古地図を幾何補正した
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デジタル化の過程で、乾隆京城全図でページが入れ替わっていた誤りも見つかった
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関連情報
■URL
古都北京デジタルマップ
http://dsr.nii.ac.jp/beijing-maps/
ニュースリリース
http://www.nii.ac.jp/news_jp/2008/07/250.shtml
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( 永沢 茂 )
2008/07/14 17:37
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