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「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」第7回会合
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17日、総務省の「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」の第7回会合が開かれた。年内にとりまとめる予定の「安心ネットづくり」促進プログラムの概要について、事務局である消費者行政課から説明があった。プロバイダーにおける違法情報への対応の強化や、有害情報に対する民間の自主ルールの策定、親子のICTメディアリテラシーの向上など、広範囲に及ぶ政策の方向性を示している。
促進プログラムは、第169回国会において「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」と「改正特定電子メール法」という2つの重要な法律が成立したことを受け、関連施策の具体化に向け早急に着手する必要があるということで、増田寛也総務大臣が策定を指示したもの。15日の記者会見で発表された。
促進プログラムは、1)安心を実現する基本的枠組の整備、2)民間の自主的取組促進、3)親子のICTメディアリテラシー向上支援――が3本柱。これに基づき、違法・有害情報対策の包括的な政策パッケージを、検討会の最終報告として12月にとりまとめる予定だ。
● 違法情報削除による損害賠償責任など検討
促進プログラムの1つめの柱である「安心を実現する基本的枠組の整備」では、有害情報対策として「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」に基づく未成年者への携帯フィルタリング原則義務化を推進することをはじめ、違法情報についてはプロバイダーにおける対応のあり方や必要な措置についての検討、さらには「改正特定電子メール法」に基づく執行強化のために必要な体制の整備などが含まれる。
インターネット・ホットラインセンターにおける2006年6月から2007年5月までの実績では、同センターが掲示板の管理者などに対して削除依頼を出したうち、約85%は削除などの送信防止措置を講じてもらえたという。一方、残りの約15%は未対応だったとして、削除されない場合へのさらなる対応を検討する。この点に関しては、違法情報を削除したことでプロバイダーが訴えられた場合の損害賠償責任のあり方も重点的に検討する。
このほか、携帯インターネットでは日本が世界に先んじていることから、そこで生じている問題については各国からの関心が高いとし、第三者機関である「モバイルコンテンツ審査・運用監視機構(EMA)」や「インターネット・コンテンツ審査監視機構(I-ROI)」の取り組み事例を海外にも伝えることで、国際連携のための環境作りを進める。
また、迷惑メールについても、固定・携帯ともに9割以上が海外経由となっている状況を踏まえ、国際連携を強化。迷惑メールの発信元となっている国々と情報交換しながら、日本が先導的な役割を果たしていくという。
● 有害情報対策は法律では難しい、民間の取り組みを支援
2つめの柱の「民間の自主的取組促進」ではまず、民間における違法・有害情報対策の規範を策定するよう促すとともに、一定のルールに基づく削除などを民間の自主的取り組みとして推進する。例えば、規範に賛同する企業には「我々は、自殺を誘因するサイトに対して、以下のとおり取り組むとする」といった文書に署名してもらうことで、積極的に対策を進めている企業と消極的な企業を可視化。これにより、消極的な企業も規範に賛同するよう誘導していくことを目指す。
総務省によると、有害情報対策については、違法情報対策とは性格が異なり、法律による対応が難しいとして、民間による対策を促す施策をとることにしたという。犯罪予告などの緊急事案についても、すでにある自殺予告への対応ガイドラインを参考に検討する。
児童ポルノの効果的な閲覧防止策についても、国会で継続審議中の児童ポルノ禁止法の改正案を踏まえた取り組みが行えないか、また、ブロッキングの問題点や課題についても検討する。
このほか、秋葉原での殺傷事件後に総務省が提案した、ネット上の違法・有害情報の検出技術についても、開発を支援し、民間における利用の普及を図るとしている。
● ネットリテラシー講座を受けた保護者に「受講証」
3つめの「親子のICTメディアリテラシー向上支援」では、家庭・地域・学校における情報モラル教育について、できるだけ具体的な強化策を展開するという。家庭や教育現場において違法・有害情報への対応に迷った際に、対応の仕方やそれをサポートする政府や民間の取り組みについてのマニュアルを作成するなど、ワンストップで理解できるような仕組みを構築する。
また、ペアレンタルコントロールの促進も掲げており、子供のネット利用に際して、親子のメディアリテラシーを強化する仕組みを検討する、例えば、保護者向けの講座を実施し、受講者に対して受講証を付与する仕組みなどが考えられるという。
このほか、携帯フィルタリングに関しては、リテラシーが十分でない人への対策として、キャリアが提供するホワイトリストに加えて、第三者が提供するリストで多様化を図ることが可能かなども検討する。
このほか、有害情報が青少年の心身の発達に与える影響について、関係府省庁と協力して調査していくという。
● 違法・有害情報の検出技術、検討部会にはグーグルの名も
「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」は2007年11月にスタートし、青少年に有害な情報への対策として特に早急に取り組むべき課題として、携帯電話のフィルタリングについて集中的に検討してきた。これについては2008年4月に中間報告としてとりまとめており、今後はインターネット全般の統括的な対策について検討し、「安心ネットづくり」促進プログラムとしてとりまとめるかたちになる。
検討会では今後、促進プログラムの3本柱に対応する「基本的枠組WG」「自主的取組WG」「親子のICTメディアリテラシーWG」に加え、「技術検討WG」という4つのワーキンググループを設置。週に2回程度のペースでワーキンググループの会合を持ちながら検討を進めていく。ただし、総務省が現段階で示している促進プログラムの構成要素は多岐にわたるため、各ワーキンググループがその中からテーマを取捨選択して検討することになるという。
なお、技術検討WGはすでに準備会合を2回実施している。ネット上の違法・有害情報の検出技術については検討の準備ができているとしており、今後、正式に検討を進めていくことになる。各ワーキンググループは主に検討会のメンバーらが参加するかたちになっているが、技術検討WGの準備部会には、検討会ではメンバーに入っていないグーグルも名を連ねている点に注目される。
これらワーキンググループでの検討結果を基に、検討会では11月に開催する第10回会合において促進プログラム案をとりまとめ、パブリックコメントを経た後、12月に開催の第11回会合において「安心ネットづくり」促進プログラムを決定する予定だ。
関連情報
■URL
インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会
http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/chousa/internet_illegal/index.html
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( 永沢 茂 )
2008/07/17 20:07
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