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海賊版DSソフトのダウンロード違法化求める声も〜著作権分科会


 著作権制度に関する審議を行なう文化審議会著作権分科会は1日、第26回会合を開催した。私的録音録画補償金制度について議論する「私的録音録画小委員会」などが、上部組織である著作権分科会に審議経過を報告した。


これまでの議論が無駄にならないよう補償金の見直し実現を

著作権分科会第26回会合の様子
 私的録音録画小委員会は、補償金制度の見直しをめぐって権利者側とメーカー側で意見が対立。議論は膠着状態になっているが、「今年度の取りまとめに向け、検討を続けていく予定」と報告した。次回の会合は20日に開かれる予定で、年内までに報告書をまとめるという。

 私的録音録画小委員会の審議について日本レコード協会(RIAJ)会長の石坂敬一氏は、「これまでの検討が水泡に帰さないよう、引き続き関係者に努力をお願いしたい」と述べ、補償金の見直しを要請。違法サイトからの私的録音録画については、著作権法第30条の適用範囲から除外し、違法とすることを求めた。

 「正規の音楽配信サイトを認定する『エルマーク』制度を2月に開始し、これまでに事業者157社中153社の888サイトで導入されている。法改正の前提条件となっている『利用者保護』の施策は、着実に進んだと自負している。」

 小委員会ではこれまで、事務局の文化庁著作権課が今後の補償金制度の試案を示したが、携帯音楽プレーヤーを補償金制度の課金対象とする、いわゆる“iPod課金”をめぐって、課金を求める権利者側と、これに反対するメーカー側の意見が対立。補償金制度の見直しに関する議論は、膠着状態になっていた。

 文化庁著作権課は現在、次回会合に向けて関係者と話し合いを続けているという。現時点では「妥協案や折衷案は得られていない」としているが、20日までに調整を図る考え。試案が受け入れられない場合は、関係者の意見を両論併記するかたちで、年内に報告書を取りまとめる予定としている。


DSソフト違法複製の被害額は60億円、早急にダウンロード違法化を

 著作権法制のあり方を議論する「法制問題小委員会」では、今期の議論の中間まとめを著作権分科会に提出。「デジタルコンテンツ流通促進法制」「私的使用目的の複製の見直し」「リバース・エンジニアリングにかかわる法的課題」などについて盛り込まれている。

 違法複製物や違法サイトなどからの私的録音録画を30条の適用除外とする「私的使用目的の複製の見直し」については、私的録音録画小委員会で議論されたが、「録音・録画以外の取り扱いも検討すべき」との指摘を受け、法制問題小委員会ではプログラム関連の著作物について検討。中間まとめでは、「私的録音録画小委員会における検討の方向性も踏まえて、段階的に最終的な取り扱いを判断していくことも視野に検討」とされている。

 プログラム関連の取り扱いについて弁護士の松田政行氏は、早急に30条の適用除外とすべきと主張した。松田氏は、「ニンテンドーDSのソフトは、これまで推計185万本の違法複製が行われ、被害額は60億円に達したと聞いている」として、経済的損失が大きいことを指摘。こうしたプログラムをアップロードした人だけでなく、ダウンロードなどの複製行為自体も違法とすべきと訴えた。


日本版フェアユース導入に懸念も

 中間まとめではこのほか、政府の知的財産戦略本部で検討されている「日本版フェアユース」について、「議論の動向を見守りつつ、制度設計の詳細の検討を要する場合などには、それに応じて検討を行う」と記載。国立科学博物館館長の佐々木正峰氏も、「著作物の利用形態が増える中、事例が生じるごとに議論するのは現状に合わない」として、フェアユースの導入を検討する時期に来ていると話した。

 これに対して日本文藝家協会副理事長を務める作家の三田誠広氏は、フェアユースの導入に懸念を見せた。「フェアユースは、言葉がマスコミで一人歩きしている状況。議論の余地なくフェアに使えるという印象が伝わるが、実際に米国のフェアユースでは、ばく大な賠償金を取られたケースもある。フェアユースの概念は、過去の判例を元に固まるが、過去に判例のない日本では、社会に混乱が起こりかねない。現行法で著作物の利用促進が妨げられると言われるが、それをフェアユースで一括して解決するのではなく、著作権法ではここまでできるということを踏まえて、アウトラインを設けるべき」。

 一方、法制問題小委員会の主査を務める弁護士で東京大学名誉教授の中山信弘氏は「米国でも最初は判例はなかった」と反論。米国でテレビ放送の家庭内録画が著作権侵害になるか争われた「ベータマックス事件」や、多くの訴訟を受けているGoogleについても、裁判官はこれまでにない事例を受け入れて判断しているとした。さらに、フェアユースの判断については、「官ではなく、裁判所が決めること」と話した。

 この発言を受けて「ますます不安が募ってきた」と三田氏。「日本人は、なるべく話し合いをするのが国民性にも合致しているし、長い慣習でもある。いきなりフェアユースが導入されると、今まで利用許諾を得るために使用料を支払っていた人が、『フェアユースなら使える』となり、裁判が起こされて非常に煩雑になる。結局、弁護士が儲かるだけで、社会が混乱する」。

 弁護士の松田氏は、フェアユースの導入に肯定的な考えを示す一方で、「フェアユースを口実に、アンフェアなビジネスが行われる可能性がある」と懸念を示した。「日本人の国民性を考えれば、欧米に比べて訴訟件数はかなり少ないだろう。そうなると、結局(権利侵害される)現状は変わらない。フェアユースを社会的に機能させるには、アンフェアと判断されたときのペナルティも含めて検討する必要がある」。

 法制問題小委員会では今後、中間まとめに関するパブリックコメントを実施。そこで集まった意見をもとに、引き続き小委員会で検討を進めるとしている。


著作権保護期間には権利者側から延長求める声

 著作権分科会ではこのほか、「過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会」が、これまでの議論を踏まえた中間まとめを提出。著作権保護期間のあり方について、「延長に肯定的な立場と否定的な立場の両方の立場からの意見が様々に出されている」として、延長した場合・延長しない場合のメリットについての議論も十分な合意が得られた状況にないため、引き続き検討が必要だとしている。

 著作権保護期間については、主に権利者側の委員から保護拡大を求める声が挙がった。「保護期間の議論と合わせて、著作隣接権の延長も積極的に検討すべき」(RIAJ石坂氏)、「実演家の権利は生存中に切れることがあるが、この問題は先送りされている。本人は生きたいと言っているのに、延命装置を外されているようだ」(日本芸能実演家団体協議会専務理事の大林丈史氏)、「議論が長引いているために祖父の著作権がなくなったとして、涙を流す人もいる。短期間で結論を出すために、文化庁にも本気になってほしい」(作家の三田氏)、「今年で横山大観先生の保護期間が切れてしまう」(日本美術家連盟常任理事の福王寺一彦氏)。


関連情報

URL
  文化審議会著作権分科会(第26回)の開催について
  http://www.bunka.go.jp/oshirase_kaigi/2008/chosaku_bunkakai_081001.html

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( 増田 覚 )
2008/10/01 20:01

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