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医薬品ネット販売の継続容認訴え、業界団体が新自主ガイドライン


 一般医薬品のネット販売を行っている薬局・薬店40者が会員となっている特定非営利活動法人の日本オンラインドラッグ協会(JODA)は20日、「安全・安心な医薬品インターネット販売を実現する自主ガイドライン」を発表した。ネット販売に際して使用上の注意事項などの情報提供を適正に行うことや購入者の状態の確認・質問を行うことなどを必要条件として定める。

 ガイドライン策定の背景には、改正薬事法が2009年6月1日に完全施行されるのを前に、厚生労働省が薬事法施行規則の一部を改正する省令案において、一般医薬品のネット販売を大幅に規制する内容を示したことがある。一般医薬品を、特にリスクの高い「第1類」、リスクが比較的高い「第2類」、リスクが比較的低い「第3類」に区分したうち、インターネットを含む通信販売は第3類だけに限定するというものだ。

 省令がこの内容で施行されれば、現在ネットで購入できている一般医薬品のうち7割近くが販売できなくなるとの調査報告が富士経済から出されている。具体的には、第1類には「ガスター10」などのH2ブロッカー含有薬、「リアップ」などの発毛薬、「ウィンダム」などの水虫薬などが該当し、一般医薬品における市場規模は4%だという。第2類には「ルル」などの風邪薬、「コーラック」などの主な便秘薬、「ボラギノールA」などの痔薬をはじめ多くの商品が含まれ、市場規模比率は63%に上る。


改正薬事法下でも、医薬品のネット販売は適法

日本オンラインドラッグ協会の理事長を務める後藤玄利氏(ケンコーコム代表取締役)
 JODAの理事長を務めるケンコーコム代表取締役の後藤玄利氏は、20日に開催した記者発表会において、現行の薬事法と改正薬事法における医薬品のネット販売の位置付けについて説明した。

 まず現行の薬事法では、販売方法などの制限に関して、「薬局開設者又は一般販売業の許可を受けた者(以下「一般販売業者」という。)、薬種商若しくは特例販売業者は、店舗による販売又は授与以外の方法により、配置販売業者は、配置以外の方法により、医薬品を販売し、授与し、又はその販売若しくは授与の目的で医薬品を貯蔵し、若しくは陳列してはならない。」(第37条)となっている。この「店舗による販売又は授与」について「店舗によるインターネット販売も含まれる」という解釈がなされており、医薬品のネット販売は適法だとした。

 改正薬事法でもこの条文は変更されていないため、「改正薬事法下でも、第1類、第2類、第3類を問わずネット販売は適法」と説明。一方、省令案では第3類以外はネット販売を禁止するとしていることから、「薬事法では適法なのに、省令案では規制しようとしている」と問題点を指摘した。

 後藤氏によれば、厚労省がネット販売を規制することの根拠は、改正薬事法で追加された「薬局開設者又は店舗販売業者は、その薬局又は店舗において第1類医薬品を販売し、又は授与する場合には、厚生労働省令で定めるところにより、医薬品の販売又は授与に従事する薬剤師をして、厚生労働省令で定める事項を記載した書面を用いて、その適正な使用のために必要な情報を提供させなければならない。」(第36条の6)との規定だという。

 これに対して後藤氏は、「この要件を満たすネット販売は十分可能。店頭と同等以上の情報提供が行える」と反論する。また、「厚労省では、どのようにすればネットで安全・安心に医薬品を販売できるかという議論がなされないまま省令案に至った」とも述べ、JODAが自主ガイドラインを作成した経緯を説明した。


販売に際しての情報提供や説明は、ネットのほうが安全・安心

ガイドラインにおける、第1類医薬品購入の流れ
 ガイドラインでは、リスクに応じた医薬品の販売フローを規定する。まず第1類については、商品説明ページにおいて医薬品の添付文書を表示。購入ボタンを押した人には、「使用者は今までに、このお薬を使用してアレルギー症状(しっしん、かゆみ、体のむくみ等)を起こしたことがある」「使用者は緑内障あるいは前立腺肥大症のいずれかの診断を受けている」「使用者は妊娠あるいは妊娠している可能性がある」といったチェック項目を表示し、該当する項目がある場合には購入操作を継続できないようにする。また、詳しく相談したい場合に、店舗側の薬剤師へのメールや電話による連絡方法も明記する。

 チェック項目に該当しない場合は、さらに使用時の注意事項を表示し、これを確認・了承した上で購入ボタンを押せるようにする。さらにこの注意事項は、注文確認メールにも記載するとともに、書面でも商品に同梱あるいはそれに先立ち別途郵送で送付する。第2類、第3類については、最後の書面による注意事項の送付が省略されるほかはおおむね同様の流れだ。

 後藤氏は、「医薬品の販売は副作用などのリスクを伴うため、できるだけ安全・安心な枠組みを作る必要があるが、ネット販売では情報提供をしっかり行うことが可能。副作用などをお客様に理解していただいた上で、安全・安心な流通を行うことができると確信している。ガイドラインにのっとれば、医薬品のネット販売について、店頭での販売を上回る安全・安心を確保できる」とアピールした。

 JODAでは、ガイドラインを携えながら、省令案におけるネット販売規制の撤回を求めていく。20日、甘利明・内閣府特命担当大臣に意見書を提出するほか、翌21日には舛添要一厚労大臣にも意見書を提出する予定だ。

 「ガイドラインでは、省令でなくても安心・安全な枠組みが可能であることを示している。十分にご留意の上、厚労省が常識のある省であれば、きちんとした省令が出されるものと確信している。」


購入前のチェック画面 注意事項説明画面

注文確認メールにも注意事項を記載 商品とともに書面でも情報提供

個人輸入や未承認薬品のネット販売トラブルとは別の話

 JODAではすでに8月、「対面の原則を担保し、安全・安心な医薬品インターネット販売を実現する自主ガイドライン」を発表している。しかし今回、「対面の原則」は形式的な意味ととらえたとして、その文言を外した。また、省令案にのっとり、第1類と第2類の販売フローを確立したことも変更点だとした。

 このほか、消費者団体や薬害被害者団体がネット販売規制を求めていることについては、「規制すべきという点は同感で、安全・安心のための取り組みは必要。目的としているところは同じ」とコメント。また、医薬品のネット販売に伴うトラブルもすでに発生しているのではないかとの指摘については、「海外からの個人輸入や未承認薬品の販売を混同しているのではないか」との見方を示した上で、「今回の枠組みとは全く別のもので、根絶すべきものと考えている」とコメントした。


関連情報

URL
  日本オンラインドラッグ協会
  http://www.online-drug.jp/

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( 永沢 茂 )
2008/11/20 17:09

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