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そのSNSは子供にとって安全か? 保護者向けに判断基準を提示

ヤフーとネットスターが設立した研究会が策定

「子どもたちのインターネット利用について考える研究会」の座長を務めるお茶の水女子大学教授の坂元章氏(中)、事務局であるヤフーの法務本部マネージャーである吉田奨氏(左)、同じくネットスターの広報部長である高橋大洋氏(右)
 学識経験者や教育関係者、保護者の代表で構成する「子どもたちのインターネット利用について考える研究会」が15日、第1期活動報告書を公開した。SNSや掲示板、ブログ、プロフといった「双方向利用型サイト」を子供に利用させて安全かどうかを保護者が判断するための「評価モデル」を提示している。研究会のWebサイトからPDFで無償ダウンロードできる。

 研究会は、ヤフーとネットスターが事務局となって4月に立ち上げた。子供のインターネット利用における可能性と危険性について、課題の調査・研究を行うととともに、これまで不十分だった保護者向けの情報提供を図ることを目的としている。お茶の水女子大学教授の坂元章氏、群馬大学特任教授の下田博次氏、品川女子学院校長の漆紫穂子氏、全国高等学校PTA連合会会長の高橋正夫氏、国立精神・神経センター精神保健研究所精神保健計画部長の竹島正氏、浜松大学専任講師の七海陽氏がメンバーとなっている。


大人からの「誘い出し」防止への配慮など、5段階で評価

 研究会では、双方向利用型サイトのリスクとして、1)不適切な書き込みによるトラブルの発生、2)悪意のある大人による「誘い出し」、3)広告やリンクで「好ましくないサイトへ誘導」、4)熱中することによる「長時間利用」「依存」――を挙げる。このうち、1)については多くのサイトが書き込みの監視と対処に注力している一方、2)から3)についてはこれらを防止するための機能面での配慮も必要だとしている。

 例えば、2)の「誘い出し」に関しては、SNSで一般的に用意している利用者検索機能において、年齢や性別、居住地域のパラメータを指定して検索できる機能の悪用が懸念されるため、検索可能なパラメータを制限したサイトもある。また、相手のメールアドレスを知らなくても連絡をとることができる「ダイレクトコンタクト」機能について、未成年者の利用を制限したり、年齢が離れた会員同士で送受信できなようにする施策をとっている例もある。


悪意のある大人による「誘い出し」に悪用される、SNSの利用者検索機能の例 「誘い出し」に配慮し、検索パラメータを制限した利用者検索機能の例

 そこで「評価モデル」では、2)から3)に対応するかたちで、多くの双方向利用型サイトが備える「ダイレクトコンタクト」「他サイトへのリンク」「サイト利用促進」の各項目について、子供の利用への配慮の度合いを整理・区分した。

 例えば、「ダイレクトコンタクト」については、最低限のレベル1が「利用者検索機能の制限、特定プロフィール公開範囲の非公開」、中程度のレベル2が「利用者間の未承認コンタクトを制限」、同じく中程度のレベル3が「書き込みや投稿内容を事後的に監視・削除対応」、望ましいとされるレベル4が「書き込みや投稿内容を公開前に把握・非公開対応」、最高水準のレベル5が「書き込みや投稿内容への教育的施策」となっている。「他サイトへのリンク」と「サイト利用促進」についても同様に5段階の評価基準を示している。

 これらのレベルは積み上げ構造となっており、例えばレベル3や4の配慮を行っていたとしても、レベル1や2の配慮を行っていなければ、子供の利用に対して配慮していないサイト(レベル0:大人向けサイト)と評価される。レベルが上がるほど子供の利用に対しての配慮が大きいことになり、レベル5であれば低学年(低リテラシー)の子供でも安心できるレベルだとしており、少なくとも「中程度」が求められるとした。


3つの提供機能に対して、サイト側の配慮の評価基準を示した表 サイトの評価レベルは「積み上げ構造」になっている

保護者がそれぞれ主体的に評価することが理想だが……

「評価モデル」の活用イメージ
 15日、報道関係者向けに開かれた説明会で、研究会の座長を務める坂元氏が報告書の趣旨などを説明した。坂元氏は、保護者以外の立場から「このサイトを使ってはいけない」などと決めようとする現在の議論に疑問を投げかけ、インターネットを使うメリット/デメリットは各家庭により異なると指摘。重要なのは個々の保護者が主体的に判断していく環境を実現することだとし、研究会では、「判断結果」ではなく、あくまでも「判断材料」として「評価モデル」を提供するものだと強調した。

 活用イメージとしては、今後実装が予定されている携帯フィルタリングサービスのカスタマイズ機能において、保護者が特定サイトをフィルタリングの対象とするか対象外とするかを選択する際の判断材料としてもらうことを想定している。

 ただし、一般の保護者がこれを参考にして実践することは現段階では難しいと見ている。PTAやNPOなどの団体に「評価モデル」に基づく評価結果一覧を作成してもらい、それを各保護者に提供するといった展開を考えている。

 さらには、フィルタリング会社や、サイトの健全性を評価する第三者機関にも提示していく。例えば、フィルタリング会社がこの「評価モデル」の基準に基づき、コミュニティサイトのカテゴリをさらに「リスク低」「リスク中」「リスク高〜大人向け」というようにクラス分けすることも考えられる。そうなれば、コミュニティサイトというくくりの中でも、さらにクラスごとに細かくフィルタリングの可否を設定できるようになり、保護者の負担も軽減される。

 とはいえ、これがすぐに携帯フィルタリングサービスに反映されるかどうかはまだ見えないようだ。ネットスター広報部長の高橋大洋氏は、同社のフィルタリングデータベースでの対応について、「そのまま導入するかはわからない。また、携帯フィルタリングについては、最終的に携帯キャリアが実装するかどうかを判断することになる」と説明。ただし、これまではSNSの評価基準についてフィルタリングベンダーとして「雲をつかむようなものだった」ため、今回、有識者から提示された「評価モデル」がそれに一石を投じるものだとして、同社としても尊重していくスタンスを示した。


公開済みの「モデル教材」の概要
 このほか、最も手っ取り早い方法としては、研究会自身が「評価モデル」に基づいた各サイトの評価結果を公開することも考えられるという。実際、大手サイトの評価結果一覧を提供できないか検討中だというが、研究会としては消極的だ。あくまでも、保護者らに評価材料を提供するのが目的だとしており、保護者自身が評価できる環境を構築していくために、講演会などを通じて後押ししていく。

 なお、研究会ではすでに、中高生のネット利用の実態やリスク、保護者が最低限知っておくべきことなどをまとめた「モデル教材」を作成している。「子供たちのケータイ利用の本当のリスク〜いま、保護者が知っておかなければいけないこと〜」として、PDFおよびFlashで無料公開し、自治体や団体、学校、家庭での活用を見込んでいる。また、これを使った講演もPTA団体との協力で展開している。

 今後、「評価モデル」についても一般の保護者が理解しやすいよう、実際のサイトの例などを挙げながら説明する教材を用意することも第2期の課題だとした。

 さらに「評価モデル」については、子供の利用を想定したサイトを運営する際のリファレンスや、企業の社会性を比較する尺度としての活用なども提案している。


子供に「携帯を持たせない」論、否定はしないが教育も必要

 説明会では、最近のトピックとして、携帯電話を子供に持たせないようにすべきといった議論があることにも言及した。

 坂元氏は「携帯電話を子供に持たせることによるデメリットがメリットよりもあまりにも大きく、他に有効な方法がなければ、持たせないことも現実的な選択肢として否定するものではない」とコメント。ただし、現状の議論が何歳まで持たせないのかという観点になりがちであることに対して、学齢が上がっても自然にネットリテラシーが身に付くものではないと指摘し、いずれは持たせることを前提に、どういった教育をしたら持たせても問題ないのか、またそのための教育の具体策について議論が必要だと強調した。


関連情報

URL
  ニュースリリース
  http://www.child-safenet.jp/activity/081215.html

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<前編>(2008/10/02)



( 永沢 茂 )
2008/12/15 21:07

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