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東京都三鷹市、シニアのNPOが小学校でネットリテラシーの授業

マイクロソフトが教材提供や講師育成で支援

 マイクロソフトは、小学校における「インターネット安全教室」の展開を拡大するため、地域のNPOなどを支援する取り組みを開始した。1月13日、東京都三鷹市にある連雀学園三鷹市立南浦小学校において、その最初の授業が行われた。4年生の総合的学習の時間に、NPO法人シニアSOHO普及サロン・三鷹のメンバーが講師を務め、インターネットの安全5か条を教えた。

 マイクロソフトでは子供にネットリテラシーを教える活動を2004年から展開しており、当初は同社社員が直接学校に赴き、ゲームなどを使ってネットリテラシーを説明していたという。しかし、全国2万校以上を回るには限界があるため、マイクロソフトが直接教えるのではなく、何らかのかたちでネットリテラシー教育活動を支援する方法をとることにした。地域によっては、NPOなど学校外の団体などが地域の歴史やパソコンの使い方などを教える授業を行っているところもあり、ネットリテラシー教育でもこうした団体と協力していく。

 具体的には、マイクロソフトが教材を提供するとともに、これを使った授業を行うための講師を育成する。教材は、すでに同社の「インターネット安全教室」のWebサイト上で公開されているものを活用する。生徒向けのほか、保護者向け、教育向けなどのコンテンツが含まれており、CD-ROMのISOイメージとして公開しているため、学校などで自由に活用可能だ。これを収録したCD-ROMも作成しており、要望がある学校に配布していく。


「ボクのこと」を教えてはいけない理由など、「5か条」を学習

授業で取り上げた5つのテーマ
 南浦小学校で行われた授業のテーマは、「個人情報」「誹謗中傷 いじめ」「ダウンロード」「有害サイト」「コンピュータウイルス」の5項目で、PC教室のホワイトボードにはこれらの言葉が張り出されていたが、小学生にはこうした専門用語をいきなり使ってもわからない。そこで授業では、インターネットで「してはいけないこと」の理由についての疑問に答える、「こぶたの疑問」というコンテンツが用いられた。実際、これも前述のCD-ROMにも収録してあるもので、教室のPCで表示しながら解説した。

 この疑問とは、「どうしてメールやチャットの友だちにボクのこと教えちゃいけないの?」「どうしてインターネットで悪口を書いちゃいけないの?」「どうしてゲームやソフトのダウンロードを勝手にしちゃいけないの?」「どうしてインターネットをする時は大人に言わなきゃいけないの?」「どうしてパソコンもバイキンの予防をしなくちゃいけないの?」というもの。これを説明していく中で、5つのテーマを理解してもらおうという意図だ。

 例えば、1つめの疑問に関しては、講師が「『ボクのこと』って何かな?」と質問すると、児童からは「名前」「住所」などの回答が挙がり、さらに講師からは家族構成なども含まれると説明。その上で、「悪い人に知られて悪用されると困るから」という理由を説明し、現実で「してはいけない」と教えられていることは、インターネットでも同じように「してはいけない」だと訴えた。

 このほか、ダウンロードに関しては、中には「悪いことをするソフトもある。ダウンロードをしたいソフトがある時は、お父さん、お母さんに相談してください」と呼び掛けた。また、ウイルスについては、パソコンの中のデータを破壊したり、保存されているデータを流出させるものがあることを紹介するとともに、実際にUSBメモリを見せながら、USBメモリで感染していくウイルスがあることも説明した。

 その後、「知らない人に、住所や電話番号を教えないこと」「悪口やうわさ話を書いたり、送ったりしないこと」「ゲームやソフトをないしょでダウンロードしないこと」「大人の人向けのホームページを見ないこと」「パソコンを使うときは、大人の人に安全かどうか聞くこと」という「インターネット安全5か条」を全員で声に出して読み上げた後、習ったことを確認する「こぶたのインターネット安全クイズ」に各自PCで挑戦。終了後、5か条が書かれた修了証や、10項目の「パソコンを使う時のやくそく」を書いたチラシなどを配り、家で保護者と一緒に読むよう求めた。

 授業を受けた児童は、「基本のことが今までできていないことがわかった」「知らないことがいっぱいあった。ウイルスが出たとき、お父さんがどう対応するか、試してみたい」などと感想を述べていた。


「こぶたの疑問」の内容の例 「どうしてインターネットで悪口を書いちゃいけないの?」の理由

マイクロソフト、ネット安全教室の講師を育成する仕組み構築へ

「こぶたのインターネット安全クイズ」の例
 今回、マイクロソフトが最初に三鷹市を選んだのは、ITの活用に積極的なシニアのネットワークがあったためだ。マイクロソフト側からシニアSOHO普及サロン・三鷹に打診し、2008年11月ごろに話し合いを開始。その後、同団体が三鷹市の校長会でプレゼンテーションを行ったところ、市内に15校あるうちの5校が2008年度中に実施することを決めた。さらに4月以降も、今年度の実施に間に合わなかった小学校での導入が見込まれるという。

 三鷹市では、シニアが各小学校で登下校などを見守る「スクールエンジェルス」という制度を導入しており、これにシニアSOHO普及サロン・三鷹のメンバーが参加していることも、短期間での実現を後押しした。同団体はもともとパソコン好きのメンバーが集まり、勉強会などを開いていたのが始まりで、これまで学校のイントラネット構築に協力したこともある。登下校時に子供たちを守るのも、ネット上で守るのも目的は同じであり、「せっかくパソコン好きのメンバーが集まっているのだから、子供たちに何かできないか」と考えていたという。

 南浦小学校での授業には、メインの講師となるメンバーのほか、児童のパソコン操作などをサポートする2名のスタッフも参加。これまでシニアを対象としたパソコン講座を行っているメンバーもいることから、子供向けの用語解説にはややぎこちない部分はあるものの、今日が初めてとは思えない様子で授業を行っていた。なお、授業を担当するにあたっては、マイクロソフトが用意しているコンテンツの中から教えたいポイントを絞るなどのカスタマイズを行っており、事前にマイクロソフトと打ち合わせをしたほか、2時間程度の講師のトレーニングも受けたという。

 マイクロソフトでは4月以降、「インターネット安全教室」の講師を育成する仕組みを確立したいとしており、仕組みを整えしだい、問い合わせを受け付ける予定だ。また、マイクロソフトによるトレーニングを受けた講師がいる団体が、さらに別の団体に対してトレーニングを行うなど、地域で教え合うが動きが拡大することも期待しているという。


マイクロソフト「インターネット安全教室」のサイト。教材をキット化して広く公開している コンテンツの一部は、絵本「オオカミと5匹のこぶた」としても編集されており、PDFなどで閲覧可能

関連情報

URL
  マイクロソフトインターネット安全教室
  http://www.microsoft.com/japan/protect/iss/default.mspx
  シニアSOHO普及サロン・三鷹
  http://www.svsoho.gr.jp/

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( 永沢 茂 )
2009/01/13 20:15

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