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P2PはISPと協調することでネットワーク負荷軽減の有効な手段に

P2P協議会がシンポジウムを開催

 P2Pネットワーク実験協議会は19日、P2P技術の商用利用に向けた実証実験の成果や今後の成果などを紹介するシンポジウムを開催した。

 P2Pネットワーク実験協議会は、総務省が主催した「ネットワークの中立性に関する懇談会」での議論を受け、P2P技術の検証やガイドラインの策定などを目的として2007年8月に設立。2008年2月には、P2P技術を利用したサービスを展開する事業者向けに、事業者が開示すべき要件などをまとめたガイドラインを発表している。


P2Pはネットワークに高機能を求める最初のアプリケーションに

協議会の会長を務める東京大学大学院教授の浅見徹氏

東京大学大学院教授の江崎浩氏
 協議会の会長を務める東京大学大学院教授の浅見徹氏は、協議会で行っている実証実験や海外の研究などで、「ISPと適切な情報を交換することで、P2P技術はネットワークの負荷軽減に有効に働く」という実験結果が出ていると説明。日本での協議会の活動と同様に、米国では「P4P Working Group」、ヨーロッパでは「P2P-Next」といった団体により、ISPと協調して動作するP2P技術の実用化に向けた動きが活発になってきており、「これまでインターネットはネットワーク側にはあまりインテリジェンスを求めてこなかったが、P2Pがインターネットに高機能を求める最初のアプリケーションになろうとしている」と語った。

 P2Pの事業者向けガイドライン策定でワーキンググループの主査を務めた東京大学大学院教授の江崎浩氏は、今年度はガイドラインをよりわかりやすく伝えるための解説書の作成に取り組んでいると説明。「P2P技術の有用性については実証実験の成果が出ており、今後はさらにこれをどう改善していくかを検証するステージに入る」と語った。また、P2Pについては依然としてネガティブな印象が企業やユーザーにもあるため、安全に利用できるP2Pであることを示すためのマークを制定するなどの取り組みについても、今後検討していきたいとした。


ネットワーク的に近い接続先を見つける「ヒントサーバー」で効率化が可能

NTTの亀井聡氏
 協議会で、ネットワーク効率的利用実証研究ワーキンググループを担当するNTTの亀井聡氏は、ISPと協調して動作するP2P技術の成果を紹介した。実証実験では、P2Pの各ノードがネットワーク的に近いノードと接続するための「ヒントサーバー」を運用。ヒントサーバーでは、ルーティングに用いられるAS番号の情報と、マーケティングなどに用いられているIPアドレスから地域を特定するデータベース「GeoIP」を使用し、P2P技術を利用したライブ配信やビデオオンデマンドの実験で、ヒントサーバーがどの程度有効に働くかを検証している。

 このうち、富山県で行った生中継実験では、ヒントサーバーを用いることで富山県内のユーザーがほぼ県内でノードを形成するといった効果が見られ、ヒントサーバーによりネットワークの効率性が高まることが確認できたと説明。一方で、検証では全国にノードを設置して効果を測定しているが、ノードの設置場所や台数については人口による重み付けなどの検討が必要であることが明らかになったとして、今後の実験でさらに検証を進めていきたいとした。


ヒントサーバーではASとGeoIPを使用 実験では、設置したノードにすべて同一県内のノードが接続するなどの効果が見られた

商用サービスにも効果があるが、ユーザーへの対応は課題

NECビッグローブの川関雅文氏
 商用サービスに向けた取り組みについては、NECビッグローブ(BIGLOBE)の川関雅文氏が、同社で実施したP2P技術の実証実験の結果を紹介。BIGLOBEではウタゴエ株式会社のP2P技術を利用し、アニメコンテンツ「サムライ7」をライブ配信する実証実験を2008年11月から12月にかけて実施した。

 実験の結果は、サーバー側のトラフィックは約82%減少するなどの大きな効果があり、実サービスとして十分運用可能なシステムであることが検証できたと説明。一方で、サービス面での課題としては、専用クライアントのインストールが必要だったため、多くのユーザーがトップページを見ただけでインストールせずに離れてしまったという。クライアントについては、ユーザー側でのインストール作業がほぼ不要な仕組みができているものの、P2P技術に対する不安などもユーザーが離れた要因になったと思われるとして、ユーザーに安全な技術であることをどのように示すかといった点が今後の課題になると語った。


システム面からは、約82%のサーバー側トラフィック低減効果が見られた ユーザーのアクセスから見ると、ソフトのインストールなどでユーザーが離れてしまうことが課題

海外でもP2PとISPは協調へ、問題解決には根本的な対応も必要

米BitTorrent CEOのEric Klinker氏
 海外の状況については、米BitTorrentのCEOを務めるEric Klinker氏が同社の現状を紹介。Klinker氏は、1999年にNapsterが発表されてからのトラフィックの伸びを示し、「P2Pは多くのユーザーが求めているキラーアプリケーションであるということ。そして、P2Pはネットワークに大きな影響を与えるということ」がトラフィックからも読み取れると説明。一方で、米国でもP2PのトラフィックはISPにとって負担となっており、大手ケーブルネットワークのComcastがP2Pトラフィックを規制するなどして問題となったが、現在ではBitTorrentとComcastは協力関係にあり、共同でトラフィック問題に取り組んでいるとした。

 Klinker氏は、こうしたISPとP2P事業者が協調することは、ネットワーク管理において大きな力となっており、最終的にユーザーがメリットを得ているという点でも大きな意味を持つと説明。また、輻輳制御という面からは、「早い者勝ち」になってしまう特性のあるTCPプロトコル自体の挙動を見直すなどの根本的な対応も迫られるとして、こうした課題についての研究や議論を、世界中のISPと進めていきたいと語った。


関連情報

URL
  P2Pネットワーク実験協議会
  http://www.fmmc.or.jp/p2p_web/

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( 三柳英樹 )
2009/02/19 19:33

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