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JASRAC、公取委の排除命令に「承服できない」〜審判請求へ

「事実認定・法令適用の両面で誤った命令で、とうてい承服きない」

JASRACの加藤衛理事長
 公正取引委員会は27日、日本音楽著作権協会(JASRAC)が放送事業者と結んでいる音楽の包括契約が同業他社の参入を制限しているとして、独占禁止法違反(私的独占)で排除措置命令を下した。これを受けてJASRACは同日会見を開き、排除措置命令は事実認定および法令適用の両面において誤ったものとする見解を表明。「到底承服することができない」として、法令の手続きに従って審判を請求する方針を示した。

 公正取引委員会が下した排除措置命令は、JASRACが放送事業者との間で締結している包括契約の算定方法などが私的独占に該当するというものだ。具体的には、放送事業者が番組内で利用した楽曲に占めるJASRAC管理楽曲の割合が、使用料に反映されていないと指摘。これにより、放送事業者がJASRAC以外の管理事業者に使用料を支払う場合には、放送事業者が負担する使用料の総額がその分だけ増加することになる。公取委ではこの点が私的独占に該当すると判断し、徴収方法の変更を求めている。


公正取引委員会の配付資料。排除措置命令の概要を示したイメージ図

問題の焦点は包括契約使用料の算定方法「全曲報告が未整備の状況では……」

JASRACの菅原瑞夫常務理事
 これに対してJASRACは、現在の放送事業者との包括契約は「独占禁止法上の私的独占にはあたらない」と説明。また、今回の命令に対応するためには、放送事業者から利用楽曲をすべて報告してもらう「全曲報告」が必要になるが、「現時点ではすべての放送事業者が全曲報告をするまでには至っていない」として、現状では、公正取引委員会の命令に従うことが困難であることを訴えた。

 会見でJASRACの加藤衛理事長は、放送事業者と締結している包括契約について「欧米では随分早くから利用者側と権利者側が合意した上で定着している。日本でも30年前以上に合意がされており、いわばデファクトスタンダードと言っても過言ではない」として正当性を主張。排除措置命令が求める徴収方法などの詳細については3月2日に説明を受ける予定だというが、現時点では到底承服できないとした。「JASRACは指定管理団体として、放送事業者が音楽を自由に使えなくなる状況は絶対に避けたい」。

 さらに加藤理事長は、JASRACでは放送事業者に対して、他の事業者の管理楽曲を利用しないように圧力をかけるような行為は一切していないと強調。この点については公正取引委員会も、排除措置命令に先立つ事前説明で認めているという。それにもかかわらず排除措置命令が出されたことについては、「公正取引委員会と事実関係を徹底的に争いたい」と語気を強めた。

 「あたかもJASRACがあらゆる楽曲を100%管理しているという理解もあるが、JASRACが管理していない部分はたくさんある。例えばインディーズ系の楽曲などだ。わかりやすい例を挙げれば、北朝鮮の楽曲をある放送局が放送して問題になったが、これはJASRACが管理しているのではない。そういう場合は、放送局が別途使用料を支払っている。」(加藤理事長)

 また、排除措置命令の内容についてJASRAC常務理事の菅原瑞夫氏は、包括契約自体の変更を求めるものではなく、包括契約における使用料に、放送事業者が番組内で利用した楽曲に占めるJASRAC管理楽曲の割合が反映されていないことを問題視していると説明。その一方、放送事業者が「全曲報告」に対応していない現時点では、どのようにJASRAC管理楽曲の割合を出せばよいのかが問題になるとした。

 なお、放送曲目の全曲報告については、2003年からJASRACと放送事業者との間で具体的に協議を開始。現在は、NHKや民放キー局、ラジオFM局がすでに対応しているが、一部のローカル局やラジオAM局については対応までに時間がかかるという。


「JASRACが一方的に歩み寄ることはない」

 今後のスケジュールについてJASRACでは、2カ月以内に審判請求を申し立てると説明。独占禁止法では排除措置命令が下された時点で効力が生じるが、具体的な徴収方法については、3月2日に公正取引委員会から説明を受けるという。JASRACはこの説明をもとに対応を検討することになるが、加藤理事長は「一方的に歩み寄ることはない。公正取引委員会に主張を理解してもらうことで円満に解決することが一番」と強気の姿勢を見せた。

 会場からの質疑応答では、放送分野でのシェアの高さが指摘されたが、この点について加藤理事長は「(新規事業者が参入可能となった)著作権等管理事業法が施行されて6年目だが、JASRACは70年前からこの仕事を始めている。後発の事業者が魅力のあるレパートリーを集めて利用してもらうというのには時間がかかるかもしれないが、サービスを怠ればいずれJASRACも追い越されてしまうかもしれない」と話した。

 質疑応答では、今回の排除措置命令がYouTubeやニコニコ動画などの動画共有サイトに与える影響についての質問が出たが、菅原常務理事が「今回の命令は放送事業に限られているため、すぐに明日から(影響がある)ということはない」と説明。

 JASRACがYouTubeやニコニコ動画など動画共有サイトの運営者と締結している包括契約は、「運営者が使用楽曲をすべて報告することが前提」。不特定多数のサービス利用者がアップロードした動画に使われている楽曲を、運営者が1曲ずつ調べ上げて報告する契約になっているという。


関連情報

URL
  ニュースリリース
  http://www.jasrac.or.jp/release/09/02_6.html

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「JASRACの包括契約は独禁法違反」公取委が排除措置命令(2009/02/27)


( 増田 覚/工藤ひろえ )
2009/02/27 17:18

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