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「コンピュータの発達で失われるもの多い」中学生の半数が同意


 ベネッセコーポレーションが小学4年生から高校2年生までの約1万人に対して行った「子どものICT利用実態調査」では、携帯電話の利用実態・意識のほか、パソコンの利用率、ブログやプロフといったサービスの利用率、さらにはコンピュータが発達することによる功罪などの“科学技術観”についても調査している。


パソコンを利用する中・高校生では、動画共有サイト利用率が7割前後

家庭でのパソコンの利用の有無(「子どものICT利用実態調査」速報版より)
 家庭でのパソコンの利用率(「自分専用のパソコンがある」と「家族と一緒に使うパソコンがある」の合計)は、小学生(小学4年~6年)で62.7%、中学生(中学1年~3年)で70.5%、高校生(高校1年~2年)で78.2%だった。

 パソコン利用者における利用内容は、「インターネットで調べものをする」が小・中・高校生ともに最も多く、小学生で80.3%、中学生で90.2%、高校生で94.2%に上った。「音楽をダウンロードする」は小学生23.9%、中学生40.3%、高校生44.9%、「電子メールを使う」は小学生8.6%、中学生29.9%、高校生26.2%、「学習ソフトを使って勉強する」は小学生22.2%、中学生11.3%、高校生7.3%だった。

 このほか、中・高校生のみにたずねた項目もあり、「動画共有サイトを見る」が中学生で69.3%、高校生で75.5%に上った。また、「ネットゲーム(オンラインゲーム)をする」は中学生31.7%、高校生22.8%、「ネットショッピングをする」は中学生17.7%、高校生28.1%だった。

 Benesse教育研究開発センター研究員の朝永昌孝氏によると、動画共有サイトやネットショッピングについては、小学生にはまだ難しいのではないかとして設問に含めなかった。しかし、中・高校生においては動画共有サイトの利用率が高い結果となり、別途行ったグループインタビューでは小学生からも利用内容として挙がったという。「私はインターネットで調べものをすることと動画共有サイトを見ることは全く別のことだと思っているが、子供にとっては垣根がなくなっているのではないか」と指摘する。


パソコンの利用内容(「子どものICT利用実態調査」速報版より) Benesse教育研究開発センター研究員の朝永昌孝氏

高校生の4割半が自分のブログ・掲示板を作成、プロフは4割

 「ブログや掲示板を読む」とした高校生は全体の77.6%に上ったほか、中学生でも43.6%、小学生でも14.6%あった(「パソコンだけでする」「携帯電話だけでする」「パソコンと携帯電話の両方でする」の合計、以下同)。「友だちのブログや掲示板に書きこみをする」は高校生58.4%%、中学生24.4%、小学生3.9%、「知らない人のブログや掲示板に書きこみをする」は高校生23.2%、中学生15.6%、小学生3.0%、「自分のブログや掲示板をつくる」は高校生46.1%、中学生16.1%、小学生3.3%だった。

 プロフについては、「プロフを読む」が高校生63.3%、中学生27.1%、小学生5.7%、「自分のプロフをつくる」が高校生39.9%、中学生12.4%、小学生2.6%だった。

 小・中・高校と上がるにつれてパソコンや携帯電話の利用率が上がることを差し引いても、ブログや掲示板、プロフの利用率が学年とともに増加することが顕著に表れたとしている。

 放送大学教授の中川一史氏は、これらブログやプロフをはじめ、中・高校生によく利用されているメールなどは「みんな言葉の問題」と指摘。「情報モラル教育というと、情報機器にどう対応していくのかやインターネットとどう向き合うかがクローズアップされがちだが、学校教育の中で言語活動の充実を図っていかなければならない」と訴えた。


ブログ・掲示板やプロフの利用(「子どものICT利用実態調査」速報版より) 放送大学教授の中川一史氏

「好きな人に告白」メール使う高校生は2割のみ

 いくつかの場面を設定し、コミュニケーションの手段として「直接話す」「電話で話す」「メールを送る」「手紙を書く」のどの方法を使うかたずねる設問では、高校生が場面に応じて手段を使い分けていることがわかった。

 まず、「親に謝る」場面では、「直接話す」が82.2%と圧倒的に多く、「メールを送る」は8.8%、「電話で話す」は1.8%だった。「好きな人に告白する」場面でも「直接話す」が63.7%で最も多く、「メールを送る」は20.0%にとどまった。「相手に対する不満を伝える」画面でも「直接話す」が59.1%、「メールを送る」が23.6%と同様の傾向が出た。

 一方で、「親しい友だちを遊びに誘う」場面では、「メールを送る」が57.1%を占めて最多で、「直接話す」は31.5%、「電話で話す」は9.6%になる。さらに、これが「あまり親しくない友だちを遊びに誘う」になると、「メールを送る」が67.4%に増加し、「直接話す」は21.8%に減少する。

 この結果について大妻女子大学教授の酒井朗氏は、「面と向かって聞くと、そこでイエスかノーかの答えを求められる。メールでワンクッション置くことで、断わりやすいように人間関係をうまく取り持とうとしているのではないか」と指摘した。


コミュニケーション手段の選択(「子どものICT利用実態調査」速報版より) 大妻女子大学教授の酒井朗氏

調査結果からは、ICT技術を冷静に見極める中・高校生の姿も

科学技術観(「子どものICT利用実態調査」速報版より)
 相反する「A」「B」2つの意見を提示し、自分の考えに近いものを選んでもらう設問で、中・高校生の“科学技術観”を調査した。

 まず、「A.インターネットで調べられることは、無理に覚える必要はない」と「B.インターネットで調べられることでも、できるだけ覚えておいたほうがよい」については、「B」という回答(「Bに近い」と「どちらかといえばBに近い」の合計)が中・高校生ともに6割半となり、「A」との回答(「Aに近い」と「どちらかといえばAに近い」の合計)」を上回った。

 一方で、「A.携帯電話はコミュニケーションの力を伸ばすと思う」と「B.携帯電話がコミュニケーションの力を伸ばすとは思わない」、「A.コンピュータが発達すると、世の中がよくなる」と「B.コンピュータが発達すると、失われるものが多い」という設問では、いずれも中・高校生ともに「A」「B」の回答がほぼ二分する結果となった。ICT技術を過信してはおらず、冷静に見極めている姿も見られると分析している。

 中川氏は、子供たちの意識がどちらかに偏っているわけではない点に関連して、「バランスというか、両面を見ていく感覚を授業の中でどう取り入れていくかが学校教育の中で突きつけられている」とした。

 さらに、子供がインターネットでトラブルに遭った時や困った時のアドバイスとして「回りの大人に聞きましょう」とされる一方で、これに応えられるだけの知識や情報モラルを大人たちが持っていないことにも言及し、特に教員と保護者の研修が重要だと強調する。「調査結果を見ると、子供たちの方はバランス感覚があり、怖いことは怖いと感じ、押さえるところは押さえている。情報モラルはまず大人から」と訴えた。

 「子どものICT利用実態調査」は2008年9月から11月まで、全国の大都市、中都市、郡部から有意抽出(高校については偏差値も考慮)した公立校を対象に実施。小学生が16校/3146人、中学生が13校/3298人、高校生が11校/3823人の計1万267人からの有効回答を得た。


関連情報

URL
  ニュースリリース
  http://www.benesse.co.jp/newsrelease/20090414_002.html
  子どものICT利用実態調査 速報版
  http://benesse.jp/berd/center/open/report/ict_riyou/2008/index.html

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( 永沢 茂 )
2009/04/15 16:18

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