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高校生の7割、目の前の友人がメール書き出しても「いやじゃない」

ベネッセが子供1万人に携帯電話の利用実態・意識調査

 ベネッセコーポレーションは14日、小学校4年生から高校2年生までの約1万人を対象に行った「子どものICT利用実態調査」の結果速報を発表した。携帯電話の所有のうち「メールが来たらすぐに返事を出す」とした子供が、中学生で7割強、高校生で6割強に上った。また、携帯電話の非所有者を含めた中・高校生のうち、一緒にいる友人が届いたメールの返事を書き始めても「いやではない」との回答が、「いや」との回答を大きく上回る結果が出た。


携帯電話の所有率、小4時点の29.0%が、高2で93.7%へ

「子どものICT利用実態調査」速報版。ベネッセコーポレーションのサイトから入手できる

携帯電話の所有率(「子どものICT利用実態調査」速報版より)
 調査は、同社のシンクタンクであるBenesse教育研究開発センターが2008年9月から11月まで、全国の公立学校を通じて質問紙による自記式で実施。1万267人から有効回答を得た。内訳は、小学生が16校/3146人、中学生が13校/3298人、高校生が11校/3823人。サンプルは、市区町村の人口規模および人口密度、さらに高校については偏差値なども考慮して有意抽出した。

 ベネッセコーポレーション執行役員でBenesse教育研究開発センター長の新井健一氏によると、子供の携帯電話の利用実態調査データは文部科学省などでも発表しているが、今回の調査の特徴として、小学4年生から高校2年生までの各学年を調査したことで連続的な変化を読み取ることができる点だと説明する。

 また、利用実態だけでなく、利用意識について調査したのも特徴。「これからますます変化していくメディア環境の中で、生まれた時からデジタルに接している“デジタルネイティブ”の子供たちの意識がどのように変化していくのか読み取り、それに対して我々は何をしていかなければならないのかを考える貴重なデータにもなる」とした。

 まず、携帯電話の所有率(自分専用、家族と共有の合計)を見ると、小学4年生で29.0%、小学5年生で31.2%、小学6年生で31.6%と、小学の間はほぼ横ばいなのに対して、中学1年生で40.4%、中学2年生で49.0%、中学3年生で55.2%と、中学の間に段階的に上昇。さらに高校1年生で91.3%、高校2年生で93.7%となり、中学から高校に上がる段階で急増しているのがわかる。

 また、男女別では、女子の所有率が男子に先行している傾向もはっきりと表れた。小学4年生では男子28.4%、女子29.7%と差がないものの、小学5年生では男子27.9%に対して女子34.8%、小学6年生で男子24.5%に対して女子39.3%、中学1年生で男子31.3%に対して女子49.5%、中学2年生で男子42.0%で女子56.6%、中学3年生で男子45.6%に対して女子65.2%と、15ポイントから20ポイント程度の差が開く。その後、高校1年生で男子87.9%、女子94.2%、高校2年生で男子93.6%、女子93.7%と、男子が追い付くかたちになる。


ベネッセコーポレーション執行役員でBenesse教育研究開発センター長の新井健一氏 調査結果について概要を説明した、Benesse教育研究開発センター研究員の朝永昌孝氏

利用している携帯電話の機能は、写真・動画の撮影が上位

 携帯電話の所有者に対して、携帯電話の各機能を利用しているかどうかをたずねる設問では、小学生は「カメラで写真をとる」83.1%、「動画(ムービー)をとる」62.2%、「ゲームをする」38.6%が上位に。中学生は「カメラで写真をとる」79.5%、「音楽をダウンロードする」60.7%、「動画(ムービー)をとる」53.5%の順、高校生では「カメラで写真をとる」85.3%、「音楽をダウンロードする」71.7%、「インターネットで調べものをする」64.7%の順だった。

 小学生は写真・動画が多いが、中・高校生では音楽のダウンロードをはじめ、調べもの、電子書籍など、インターネット利用が増加している。また、高校生において「電子書籍(小説・マンガ)を読む」は31.3%だったが、男子21.2%に対して女子39.2%と差が開いたのをはじめ、ゲームや電子マネーなどを除き、全体的に男子よりも女子の利用率が高くなっている。

 このほか、「家族に電話をかけること」の利用頻度については、「ほとんど使わない」とした小学生は28.7%であるのに対して、中学生では42.2%、高校生では48.7%に増加した。一方で「友だちにメールを送ること」については、小学生では「ほとんど使わない」が58.8%あるのに対して、中学生では12.3%、高校生では8.1%と大きく減少した。小学生は家族への電話として利用する頻度が高かったのが、中・高校生では友人へのメールへと、携帯電話の使い方が変化している様子がうかがえるという。

 なお、友人へのメールにおいても、全般的に女子の方が活発に利用しているようだという。例えば、1日あたり21回以上メールを送るとした子供の割合は、中学生の男子では26.7%なのに対して女子は37.4%、高校生では男子22.2%に対して女子29.2%となっている。


通話・メールの利用頻度(「子どものICT利用実態調査」速報版より) 携帯電話の利用機能(「子どものICT利用実態調査」速報版より)

携帯電話を持つ中・高校生の8割以上が「使うのが楽しい」

対面場面での携帯電話利用に対する意識(「子どものICT利用実態調査」速報版より)
 携帯電話の所有者に対して、携帯電話に関して自分が当てはまると思うものを選んでもらう設問では、「携帯電話を使うのが楽しい」が中学生で85.9%、高校生で87.1%でそれぞれ8割以上になった(「とてもそう」「まあそう」の合計、以下同)。

 以下、中学生では、「携帯で知らない人とやりとりするのは怖い」71.8%、「メールが来たらすぐ返事を出す」71.3%、「携帯電話はいつでも必要な情報を調べることができて便利だと思う」65.8%、「絵文字は気持ちを伝えるのに欠かせない」59.5%などが多く挙げられた。

 高校生では、「携帯電話はいつでも必要な情報を調べることができて便利だと思う」79.6%、「携帯で知らない人とやりとりするのは怖い」74.4%、「メールが来たらすぐ返事を出す」62.3%、「絵文字は気持ちを伝えるのに欠かせない」60.8%など。

 携帯電話での使い方で気にしていることとして当てはまるものを選ぶ設問では、「知らない人からの電話に出ない」「禁止されている場所では電源を切る」「携帯電話を使いすぎない」が中・高校生ともにそれぞれ7割以上に上ったほか、「夜遅い時間には友だちにメールを送らない」「自転車に乗るときには使わない」「勉強中は使わない」も中・高校生ともにそれぞれ6割以上が選択した。一方で、「友だちといるときは携帯電話に出ない」は中学生で30.5%、高校生で34.7%だった(いずれも、「とても気にしている」「まあ気にしている」の合計)。

 さらに、中・高校生全員に対して対面場面での携帯電話利用についての意識も聞いている。友人と一緒にいる時に、友人が「かかってきた電話に出る」ことについて、「いや」と感じるとした人(「とてもいや」「少しいや」の合計、以下同)は中学生で23.2%、高校生で18.7%にとどまり、「いやではない」(「それほどいやではない」「まったくいやではない」の合計、以下同)が中学生で75.3%、高校生で80.8%を占めた。

 また、「届いたメールに返事を書きはじめる」ことについては、「いや」が中学生で34.5%、高校生で26.8%で、「いやではない」が中学生で63.8%、高校生で72.6%に上った。

 なお、これらは携帯電話の非所有者も含めた数値となっている。やはり所有者よりも非所有者のほうが「いや」とする比率が高いものの、今の中・高校生は、目の前にいる友人が携帯電話で他の友人と電話やメールでコミュニケーションをとることになじんでいると指摘している。


携帯電話の利用についての意識(「子どものICT利用実態調査」速報版より) 携帯電話の利追で気にしていること(「子どものICT利用実態調査」速報版より)

携帯は中学生にとって格好のツール、高校生以上にリスキーな部分も

大妻女子大学教授の酒井朗氏
 調査の企画・分析で協力した大妻女子大学教授の酒井朗氏は、各種機関などで実施・公表している携帯電話に関する調査の多くが「規制しようという観点、何が害悪かを特定しようという観点が強い」と指摘。これに対してベネッセの調査では、「虚心坦懐に子供の目線から、子供は携帯電話をどう受け取って、どう利用しているのかを調査し、しっかり見ていこうという観点」と説明する。そうした観点から酒井氏は、調査結果から浮かび上がった子供の携帯電話利用について4つの側面を解説した。

 まず1つめとして、「子供にとって携帯電話は、もちろん電話やメールでもあるが、手軽な遊びの小道具として携帯電話があるということを確認しておくべき」と指摘する。写真や動画、ゲーム、音楽、調べもの、小説やマンガなどのさまざまな機能が利用されていること、また、携帯電話所有者のうち8割以上の中・高校生が「使うのが楽しい」と回答していることからもそれがうかがえるという。

 2つめとしては、対面場面で友人が他の友人と携帯電話で通話したりメールすることが「いやではない」とした中・高校生が多くを占めたことについて、「世代のギャップを感じる」とはしたものの、「中・高校生の中ではある意味、当たり前。対面の関係も携帯電話の関係も等価の中で生きている。関係の取り方が違ってきている」とした。

 3つめとしては、中学生と高校生の比較で、高校生よりも中学生の方がメールのやりとりが多く、「メールが来たらすぐ返事を出す」とする割合も多かったことに言及した。酒井氏によると、「発達段階的にいうと、中学生はいわゆる“チャム”という仲良しグループの中で、互いに類似性を確認し合って盛り上がる感覚を持っている。高校生になると、もう少し関係の距離が置ける」。

 そうした、集団が同一化しようとしているところに入ってくる携帯電話が中学生に多様されるのは必然だが、「言い方を変えると、中学生の段階で携帯電話を持たせることは、高校生以上にリスキーな部分があるのではないか」という。「携帯電話が格好のツールとなり、仲間内でひそひそ話をしたり、いじめをしたり、ハブ(仲間外れ)にしたりということが起きてしまう。そういう意味では、中学生がこれだけ携帯持つようになったのは、高校生とは違う点で少し問題と感じている」。

 他方、4つめとして「大人が考える以上に、子供たちは慎重によく考えて携帯電話と付き合っている面も見られるのではないか」と指摘する。携帯電話の使い方として「知らない人からの電話に出ない」「禁止されている場所では電源を切る」が中・高校生ともに7割以上挙がったことを指しているわけだが、逆に言えば、残りの4分の1はそうした使い方をしていないことが問題と言える。「全体としては割合リーズナブルに使っており、一部がそうではない状況。そこを切り分けて冷静な議論をしなければならない」とした。


学校へ持ち込み禁止でも、授業で携帯電話を扱うべき

放送大学教授の中川一史氏
 同じく調査の企画・分析で協力した放送大学教授の中川一史氏も、携帯電話を所有している中・高校生の多くが「携帯電話を使うと楽しい、あるいは便利だという肯定的な面と、怖いという否定的な面の両方を感じている点が重要」と指摘する。「情報モラル教育というと、教育委員会や学校では『あれはやっちゃいけない』『これは危ない』ということがほぼ100%になってしまう。影だけでなく光も押さえつつ、情報社会ときちんと向き合っていく力を付けけさせることが教育の中で非常に重要」とした。

 また、世の中が携帯電話を学校に持ち込ませない流れとなっている点については、「学校に持ち込まないから、学校は指導はしないし、学校には関係ないという流れが起きつつあることに危ぐを感じる。では、持ち始めた時に誰が指導するのか? 学校に持ち込んでいようがいまいが、授業の中で扱うことは非常に大事」と訴えた。

 一方、対面場面で友人が通話やメールする行為に対して「いや」という感覚が少なかった点については、「現代の子供たちの感覚を表していて非常に興味深い結果だと思うのと同時に、逆に言うと、少数派の『いや』という感覚――『こういうふうにされるといやだな』という感覚、『これをして大丈夫かな?』という感覚を、学校教育の中で題材として取り上げて教育していくことが改めて大事だと感じた」とし、「禁止しているから学校では教えないということではない」と強調した。

 Benesse教育研究開発センターでは、今回の調査結果の分析結果などをまとめた「子どものICT利用実態調査報告書」を5月に刊行する予定だ。


関連情報

URL
  ニュースリリース
  http://www.benesse.co.jp/newsrelease/20090414_002.html
  子どものICT利用実態調査 速報版
  http://benesse.jp/berd/center/open/report/ict_riyou/2008/index.html

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( 永沢 茂 )
2009/04/14 20:33

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