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IPA、オープンソースライセンスGPL v3の解説書を無償公開


IPAオープンソフトウェア・センター センター長 田代秀一氏。今回の逐条解説書編纂にあたっては、「業務の現場で実務に役立つよう、読みやすく平易な内容を心がけた という
 IPA(独立行政法人情報処理推進機構)は23日、オープンソースライセンスのひとつである「GNU GPL(GNU General Public License)Version3(以下GPL v3)」の逐条解説書第1版をIPAサイトで無償公開した。

 公開された逐条解説書は、IPAオープンソフトウェア・センターのリーガル・タスクグループが米国SFLC(Software Freedom Law Center)との共同作業により作成。GPL v3の条文ごとに、前バージョンであるVersion 2(以下v2)との違いを丁寧に説明し、また例示を用いるなどして、具体的かつわかりやすい解説を目指した。

 発表会でIPAオープンソフトウェア・センター センター長の田代秀一氏は、「GPL v2ではソースコードの公開義務づけなど、業務での利用を困難にするような条項が多く、個人のフリーソフトウェア作者と、企業の開発者を分断するような面があった。こうした反省を踏まえて、GPL v3では企業で利用する場合に重要になる特許との関連や、DRMを利用した機器などでGPL v3ソフトウェアを利用する場合などについても規定された」とGPL v3が規定されるまでの背景を解説。GPL v3が企業においても利用できるよう実務面に配慮した条項が多く盛り込まれたと述べた。

 ただし、「条項を読んだだけではその条項が本来意図している目的などを読み取ることは困難」だという。IPAでは、策定段階からSFLCの代表である Moglen教授をはじめ、SFLCの関係者と検討を重ね、条項の文面がまとめられるに至るまでの議論や、その条項が意図していた意味をできるだけ盛り込んだ。「業務の現場で実務に役立つよう、読みやすく平易な内容を心がけた。」

 また、Linuxをはじめ現在のGPLソフトウェアのほとんどが、現時点では前バージョンのGPL v2を採用しているが、今回の逐条解説書では、GPL v2からどう変わったかという点についても具体的に解説しているため、「GPL v2を理解するためにも役立つ解説書となっている」という。


GPLは、Linuxをはじめ多くのオープンソースソフトウェアで採用されている 現在のデジタルテレビは、ほぼすべてLinux OSを採用しているなど、組み込み系で非常に多くGPLソフトウェアが利用されている

東証の次期取引システムや法務省の次期登記情報システムでLinux OSの採用が決まっているなど、冗長化されたリアルタイム処理や高度なセキュリティを必要とする官公庁業務システムでもオープンソースソフトが利用されるようになってきている 1991年から長く利用されてきたGPL v2だが、ソース公開の義務づけなど企業では利用しにくい条項もあった。v3は何年にもわたる世界中での議論を経て制定された

弁理士の資格も持つ上山 浩弁護士。知的財産権に関わる企業の案件などを専門とする。今回の逐条解説書の作成には当初から参加、最終段階のチェックではほぼすべてに目を通した
 今回のGPL v3逐条解説書の編纂には当初から弁理士資格も持つ上山 浩弁護士も参加。最終チェックでは上山氏がすべて目を通すような形でチェックをしたという。上山氏は京都大学理学部卒業後、富士通、野村総合研究所を経て司法試験に合格し弁護士になったという経歴を持つ。特許侵害や不正競争防止法などの知的財産権関連を専門としており、企業担当者からGPLソフトウェアの利用について相談されることも多いが、GPLについては誤解も多く見受けられるという。

 こうしたGPLへの誤解から、フリーソフトウェアは一切利用してはならないというポリシーをつい最近まで取っていた大企業もあるほどだといい、「開発担当者や、法務部門の担当者、またGPLライセンスのソフトウェアを用いた事業などで、リスクも含め事業企画立案者が事業的判断ができるような内容を心がけた」と述べた。

 IPAでは、GPL v3の逐条解説書第1版の無料公開と同時に公開ページでアンケートを開始。アンケートを通じて意見・質問を募集し、さらに改善していく方針だ。また、GPL v3の逐条解説書は「クリエイティブ・コモンズ・ライセンス表示-非営利-改変禁止 2.1」の条件で公開。内容を改変しない限り無償で利用できるのはもちろんだが、企業など営利団体の利用も、講習会や勉強会で用いる目的の場合には無償で複製を許可する。


GPL v3の公開までに行われた議論で、論点となったテーマのひとつ。たとえば自由な書き換えの許可義務を課せば、プリンタやエアコンなどの機器を制御するソフトウェアで採用した場合に、安全性が担保できない問題が生じる 「Installasion Infomation」の提供義務をめぐる論点。制定までのこうした経緯を踏まえないと、条文を読んだだけではその意図が読み取れない条文がかなりあるという

関連情報

URL
  ニュースリリース
  http://www.ipa.go.jp/about/press/20090423.html
  GNU GPL v3逐条解説書(第1版)
  http://ossipedia.ipa.go.jp/legalinfo/

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( 工藤ひろえ )
2009/04/23 15:43

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