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KDDI、2010年度の固定通信事業の黒字化に意欲


KDDIの小野寺正社長
 KDDIは、2008年度連結決算を発表。営業収益は前年同期比2.7%減の3兆4975億円、営業利益は10.7%増の4432億円、経常利益は8.0%増の4405億円、当期純利益は2.3%増の2227億円の減収増益となった。

 KDDIの小野寺正社長は、「携帯電話の端末販売制度の見直しや、割賦販売制度の導入などによって、大きな変化があった1年であり、主要指標の一部は未達に終わった。だが、概ね堅調な業績だった」と自己評価した。


固定通信事業は改善、携帯電話端末の販売台数は大幅減

営業収益は2.7%減の3兆4975億円、営業利益は10.7%増の4432億円と減収増益
 固定通信事業は、中部テレコミュニケーションの連結子会社化や、JCNグループと海外固定系子会社などを、固定系セグメントへと範囲見直しをした影響もあり、営業収益は前年同期比18.1%増の8487億円、営業損失は566億円の赤字、経常損失は616億円の赤字、当期純損失は431億円の赤字となった。だが、赤字幅は軒並み改善している。

 12月末時点での固定系アクセス回線の契約数は534万契約。FTTHは、109万9000件に増加。また、メタルプラスの契約数は313万件、ケーブルプラス電話は、提携するCATV局を70社に拡大し、60万4000契約となった。

 小野寺正社長は、「固定系アクセス回線全体では、期初目標としていた530万契約を上回っており、2009年度は、61万増の595万契約を見込む」とした。

 移動通信事業は、営業収益が前年同期比2.5%減の2兆7192億円、営業利益は1.7%増の5015億円、経常利益は1.2%増の5091億円、当期純利益が10.6%増の2731億円となった。携帯電話端末の年間販売台数は32%減となる1081万台と大幅に落ち込んだ。


固定通信事業は赤字幅を縮小 移動通信事業は減収増益

2009年度も減収増益の見通し、固定通信事業の黒字化を目指す

2009年度の業績見通し
 2009年度の業績目標も発表した。営業収益は前年同期比0.5%減の3兆4800億円、営業利益は6.0%増の4700億円、経常利益は2.2%増の4500億円、当期純利益は14.5%増の2550億円と、減収増益の目標とした。

 小野寺社長は、「収益構造の大きな変化に対して、全社的にコスト構造の抜本的な見直しを行い、事業基盤の強化を図るとともに、グループのさらなる発展に向けた取り組みを推進する」とする一方で、2010年度を最終年度に取り組んでいる中期経営計画「チャレンジ2010」については、「2010年度の営業収益4兆円の達成は無理だと判断した。減収の要因は移動通信事業に尽きるが、私の見通しが甘かったことが原因。だが、このなかで掲げた固定通信事業の黒字化は堅持する」と、長年の懸念事項である固定通信事業の黒字化に意欲を見せた。

 「この2年でFTTHの顧客基盤を拡大し、損益を改善。固定系サービスの強化による赤字の吸収、固定費の削減による収益の拡大という方向を目指す。黒字化という点では、2010年度は水面にちょっと顔を出す程度であり、100~200億円規模の黒字にはならない。だが、固定アクセス回線の契約は増加しており、月額基本料金収入が増え、将来的な安定事業につながる。契約数が増えることでトップラインを上昇させ、利益が拡大されることができる」として、2011年度以降は、固定通信事業が収益事業になるとの見通しを示した。

 また、「メタルプラスはリテンションするが、無理に販売していくつもりはない。10万単位で減少しているが、新規はそれなりに入ってきている。ケーブルプラスとメタルプラスは、基本的には異なるエリアをカバーするサービスであり、両方をやっていく意味がある」などとした。

 さらに、小野寺社長は、auの代理店に対して固定通信事業に力を注ぐように提案したことに触れ、「auの携帯電話端末1台を販売するよりも、ひかりoneホームを販売した方がコミッションが高いことや、auの端末は在庫を持たないと商売ができないが、ひかりoneは在庫を持たなくてもビジネスができるメリットを伝えた。移動通信と固定通信を一緒に販売することで、代理店の経営環境を改善できると説明した」という。

 「auショップでも、固定通信事業に対するメリットに気がつきはじめているところが増えており、このルートでの販売が間違いなく増える」とも語った。


 2009年度の固定通信事業の営業収益は3.7%増の8800億円、営業損失は166億円改善の400億円の赤字を見込む。固定系アクセス累計回線数は61万増の595万契約。そのうち、FTTHの累計契約数は42万増の152万契約。

 移動通信事業は、営業収益が2.5%減の2兆6500億円、営業利益が前年同期比1.7%増の5100億円。auのARPUは、380円減の5420円、au累計契約数は76万増の3160万契約、au端末販売台数は81万台減の1000万台とした。

 設備投資は、新800MHz帯および2GHz帯への投資などが高水準で続くものの、2008年度がピークと見ており、2009年度は351億円減の5400億円を見込む。そのうち固定系では前年比0.4%減の1400億円とし、「中部テレコミュニケーションを含めたFTTHへの投資を中心に行う」とした。

 また、小野寺社長は、現行システムであるRev.Aのマルチキャリア化を検討していることを明らかにした。2012年に予定しているLTE導入を前に、高速データ通信サービスのひとつとして活用する。


2011年度以降は、固定通信事業が収益事業になるとの見通し 携帯電話ではRev.Aのマルチキャリア化を検討

固定通信網のNTT独占については議論を求める

 小野寺社長は、質疑応答の中で固定通信網がNTT独占となっている状況について触れ、声を荒げながら次のように語った。

 「競争促進が図られている移動通信を議論するのではなく、固定通信網の議論を進めていく必要がある。例えば、携帯電話のコスト構造で最も費用がかかっているのが基地局から交換局(センター)までの部分。ここはほとんどが光ネットワークとなっており、NTTか、地域系通信事業者が持っている。今後、NTTが一体運用を強化すれば、値上げをすることはあっても、値下げをすることはない。結果として、携帯電話の利用コストにおぶさってくる。固定系通信は、日本全体のインフラであり、あらゆる通信を支えるインフラである。このコストが下がらないと日本全体の通信コストが下がらないということになる。短期的な目先で考えるのではなく、長期的な視点で考える必要がある。すべての通信インフラが高止まりしないためにも、日本の固定通信環境に関する議論を進めていく必要がある」とした。


関連情報

URL
  KDDI 2009年3月期決算説明会
  http://www.kddi.com/corporate/ir/library/presentation/2009/index.html

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( 大河原克行 )
2009/04/24 12:09

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