マイクロソフトは20日、次期OS「Windows 7」の製品候補版(RC版)について報道陣向けの説明会を開催した。
マイクロソフト コマーシャルWindows本部 本部長の中川哲氏は、「マイクロソフトで様々な製品に携わってきたが、どの製品のベータ版・RC版と比べても、Windows 7のRC版が最も高い完成度だ」と説明。Windows 7の開発が順調に進んでいることをアピールしたが、日本での発売時期については言及しなかった。
● 「MSが何をしたいかではなく、ユーザーが何をしたいか」に立ち返って開発
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マイクロソフト コマーシャルWindows本部 本部長の中川哲氏
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中川氏は、Windows 7の開発にあたっては「ユーザーの声をしっかりと聞き、学ぶ」ことを重視したと説明。Windows Vistaではユーザーが本当に求めている機能の実装が十分でなかったという反省を踏まえ、「マイクロソフトが何をしたいかではなく、ユーザーが何をしたいかが重要だ」という点に立ち返って、Windows 7の開発を行っていると語った。
Windows 7の開発は、2007年1月にWindows Vistaを発売した前後から始まっており、その中では世界200カ国以上のWindows Vistaユーザーに対する環境調査や、1600件のヒアリングを実施。その中からユーザーが要望する機能を600個抽出し、どの機能をWindows 7に採用するかを決めていくといった手法により、ユーザーが本当に要望している機能を搭載していくことに努めたという。
Windows 7の基本機能の強化ポイントとしては、「使いやすさ」「パフォーマンス」「信頼性と互換性」の3点を挙げ、それぞれデモを交えて解説した。中でも信頼性の点については、ユーザーアカウント制御(UAC)によるセキュリティレベルは保ちつつも、警告が頻繁に出ないようにしたと説明。Windows Vistaでは「警告を出す」「警告を出さない」の2種類のレベルでしか設定できなかったが、Windows 7では設定レベルを4段階に変更。標準設定では、ユーザーが自分で設定を変更した場合には警告を出さず、「プログラムが設定に変更を加えようとしている」場合のみに警告を出すことで、悪意のあるプログラムなどの動作には対処しながら、警告の出る回数を減らしたとした。
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Windows 7の開発ポイント
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標準では「プログラムがコンピューターに変更を加えようとする場合」のみ警告が出る
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● Windows 7とWindows Liveは互いを補完しあう関係に
コンシューマー&オンライン マーケティング統括本部 コンシューマーWindows本部 本部長の藤本恭史氏は、コンシューマー向けのWindows 7の機能を紹介。「ホームネットワーキング」「デジタルTV」「Windows Touch」などの機能と、オンラインサービス「Windows Live」とWindows 7との連携について、デモを交えながら解説した。
ホームネットワーキングについては、写真や音楽、動画などのコンテンツを家庭内で簡単に共有できる「ホームグループ」機能を紹介。共有設定自体もコントロールパネルから2クリックで簡単にでき、ホームグループ内のファイルが保存場所を意識することなく検索可能となるなど、ホームグループにより家庭内のシームレスなファイルアクセスが可能になるとアピールした。
また、動画コンテンツについては、MPEG-4や3GPP、AAC、AVCHDといったフォーマットを標準でサポート。これらのコンテンツを、ホームネットワーク内のテレビなどで再生する「リモート再生」機能も備えた。また、デジタル放送についても、日本のデジタル放送3波(地上波、BS、CS)への対応をOSの標準機能としてサポート。デジタル出力(HDMI/SPDIF)やダビング10などにも標準で対応する。
藤本氏は、こうした機能にWindows Liveが加わることで、サービスの幅がさらに広がると説明。Windows Media PlayerとWindows Live IDを組み合わせることで、外出先からでも家庭内の音楽や動画などのコンテンツにアクセスできるようになる「リモートメディアストリーミング」を紹介した。
また、Windows Vistaには「Windowsメール」や「Windowsフォトギャラリー」といったソフトが標準で搭載されていたが、Windows 7ではこれらが「Windows Liveメール」「Windows Liveフォトギャラリー」といったオンラインサービスに置き換わると説明。オンラインサービスにすることで、常にユーザーに最新のアプリケーションを利用してもらうことが可能となるなど、「Windows 7とWindows Liveはお互いを補完しあう関係になる」と語った。
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「ホームグループ」で音楽や動画などのコンテンツ共有が簡単に
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テレビなどでコンテンツを再生する「リモート再生」、外出先から家庭内のコンテンツを再生する「リモートメディアストリーミング」などの機能も備える
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Windows 7とWindows Liveはお互いを補完しあう関係になる、と説明
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「Windowsメール」などこれまでの標準搭載ソフトが「Windows Live」のサービスに移行
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● USBメモリの暗号化に対応した「BitLocker To Go」など企業向けの新機能
コマーシャルWindows本部ビジネスマーケティング部マネージャーの東條英俊氏は、企業向けのWindows 7の機能について説明。「多様化する働き方のサポート」が企業向けの強化ポイントだとして、「BitLocker To Go」や「Direct Access」などの新機能を紹介した。
ドライブを暗号化する「BitLocker」では、新たにUSBメモリなどのリムーバブルディスクの暗号化に対応する「BitLocker To Go」を搭載。エクスプローラー画面でドライブの右クリックメニューから簡単にドライブ全体を暗号化でき、グループポリシーにより暗号化されていないUSBメモリの利用を全社的に禁止するといった対応も可能となる。
また、セキュリティ面では、実行できるアプリケーションを制限する「AppLocker」機能も新たに搭載。プログラムのファイル名やハッシュ、バージョン、発行元といった情報から、プログラムの実行を拒否または許可するといった制限をかけることができ、グループポリシーにより全社的な制御が可能となる。
リモートアクセス機能では、IPSec/IPv6を利用して外部から社内のリソースにアクセスする「Direct Access」機能を紹介。IPv6環境であれば従来のVPNよりも簡単にリモートアクセス環境が構築でき、IPv6未対応のネットワークでも6to4などを利用してIPv6 over IPv4での接続も可能だとした。
このほか、回線環境が細い支社などの環境向けに、文書ファイルなどのデータをキャッシュする「BranchCache」機能などを紹介。これらの機能はいずれも、EnterpriseエディションおよびUltimateエディションのみで利用可能となる。
Windows 7の製品群の中では、「Windows 7 Professional」と「Windows 7 Enterprise」が企業ユーザー向けのエディションとして位置付けられている。Professionaエディションではドメインへの参加など基本的な企業向けの機能が提供されるが、Enterpriseエディションではそれに加えて、さらに今回紹介した機能などが提供される。こうしたことから東條氏は、「Enterpriseエディションはボリュームライセンスでの提供となり、名称からも大企業向けだと思われがちだが、すべての法人ユーザーにおすすめするエディションはEnterpriseだ」と語った。
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リムーバブルディスクの暗号化に対応する「BitLocker To Go」。右クリックメニューから暗号化できる
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BitLockerの概要
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IPSec/IPv6を利用してリモートアクセスを実現する「DirectAccess」
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DirectAccessサーバーの管理画面
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関連情報
■URL
Windows 7
http://www.microsoft.com/japan/windows/windows-7/
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( 三柳英樹 )
2009/05/21 12:28
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