グーグルは22日、Webブラウザ「Google Chrome 2.0」正式版(Google Chrome 2.0.172.28 Stable)の公開に伴い、記者説明会を開催した。最新バージョンはGoogle Chromeのサイトから無償ダウンロードできるほか、前バージョン(1.0)のユーザーには数日以内に自動更新が適用される。
● 正式版より“一歩進んだ”開発版も引き続き提供
グーグルの及川卓也シニアプロダクトマネージャーは、まずGoogle Chromeのアップデートの流れについて説明した。「Google Chrome 1.0」については、正式版を2008年12月12日に公開した後、脆弱性を修正するアップデートを行っていた。並行して、「Google Chrome 2.0」の開発版を1月9日より提供。続いて、ベータ版を3月18日より提供していた。
Google Chromeの開発では、「Channel」と呼ばれるラインを設けている。早期に最新機能を使いたいユーザー向けに、「Dev Channel」で開発版を提供。開発版より安定し、多くのユーザーに使ってもらえるベータ版を「Beta Channel」で提供する。「開発版で追加・修正した点は、ベータ版にも反映している」という。今回、ベータ版および前バージョンのユーザーへは2.0の「Stable Channel」で正式版を提供する。
なお、正式版の提供に伴い、「Beta Channel」は「Stable Channel」へシフトするが、開発版を提供する「Dev Channel」は引き続き存在し、開発版のアップデートは現在も進んでいる。開発版で追加された機能は、「2.0正式版にも追加されるか、もしくは2.1などの新バージョンで追加することもある」とのこと。Google Chromeの「Channel」という開発ラインについては、今後整理する可能性もあるという。
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グーグルの及川卓也シニアプロダクトマネージャー
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Google Chromeのバージョンアップ
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● フィードバックは公開バグリスト「Chromium」を参考
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Google code Chromium
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「Google Chrome 2.0」正式版について及川氏は、「高速」「快適」「安全」といった3つの面で強化していると説明。「高速」については、「JavaScriptを多用するようなWebページ(Webアプリケーション)では、前バージョンに比べて30%以上パフォーマンスが向上した」。Googleが開発しているJavaScriptエンジンの「V8」や、Google Chromeが採用しているレンダリングエンジンの「WebKit」などのアップデートにより高速化を実現している。
「安全」については、報告された脆弱性を修正した。また、Google Chromeの特徴である「サンドボックス」の利点を説明。サンドボックスとは、タブごとに独立したプロセスが稼働する仕組みのこと。脆弱性の例として、「CVE-2009-0945」(SVGにおけるDoS攻撃)などを挙げ、「攻撃者が実行する可能性のある任意のコードは、サンドボックス内だけで実行されるため、OSの深いところまで攻撃が及ぶことはない」とした。
「快適」については、300以上のクラッシュ関係の不具合を修正したほか、ユーザーからフィードバックの多かった機能を実装し、使い勝手を向上させた。フィードバックについては、「Google code」で公開しているGoogle Chromeのバグリスト「Chromium」を紹介。「Chromium」には、参加するデベロッパーから報告されたバグや修正されたバグ、希望する新機能などがデータベース化されている。共感した新機能には「Stars」を付けられるようになっており、「Stars」の数が多いほど、「多くの人が希望する機能」だとわかる仕組みだ。「こういった意見も参考にして修正を加えている」という。
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V8のベンチマーク
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脆弱性の例
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300以上の不具合修正
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● マルチプラットフォーム見据え、HTTPスタックを独自開発に変更
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「新しいタブ」のサムネイル削除
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「Google Chrome 2.0」の主な新機能としては、「新しいタブ」を開いたときのサムネイルの削除やフルスクリーンモード、フォームの自動入力、内蔵コンポーネントのアップグレード(V8 1.1.10.12、WebKit 530.5、Gears 0.5.19.0)などがある。
パスワードマネージャも機能強化している。従来は、パスワード入力が必要なページにおいて、「このサイトでは保存しない」と設定すると、それ以降は二度と保存することができなかったが、「例外」から削除を選ぶとことで、あらためて保存することが可能となった。
また、HTTPスタックを刷新。従来はWinHTTPを採用していたが、「パフォーマンスの向上や、今後のマルチプラットフォームを考え、Windowsに依存するWinHTTPではなく、独自のHTTPスタックを開発した」という。このほか、対応する言語も40言語から50言語に拡大した。
● どのブラウザでも同じ機能をプラグインなしで実現できるWeb標準に貢献
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今後の方向性
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今後について及川氏は、「堅牢、高速、安全、シンプルといった方向性は継続しつつ、より拡張性を増し、マルチプラットフォーム対応も進める」と話す。さらに、「HTML5などの次のWeb標準に貢献するため、その実装を率先して進める」との考えを示した。
また、バグデータベース「Chromium」といったオープンソースプロジェクトの推進も引き続き行う。「Chromiumに参加していると、正式版の出そうなタイミングや次の新機能などがわかる」とのこと。「Chromiumにより、開かれたプロジェクトにすることで得られるメリットが多いこともわかった」。
及川氏は、「Webは当初の静的なページから動的なページへ、さらにはアプリケーションのプラットフォームとして使われるようになった」と説明。「今後も、ブラウザでWebアプリケーションを使う上で必要なことは何かを考えて、開発していきたい。ローカルで動いているアプリケーションと同じものを、Web上で実現することが目標」という。
Web標準推進の理由については、「Google Chromeだけでなく、どのブラウザを使っても同じユーザーエクスペリエンスが得られるようにしたい」と話す。Web標準のみで実現するサービスを提案するためにWebアプリケーション紹介サイト「Chrome Experiments」を開設している。「Chrome Experiments」では、JavaScriptで作成されたサンプルアプリケーションを公開している。
加えて、JavaScriptのみで3D表現を可能にする「O3D」を紹介。現在はプラグインとして公開しているが、将来的にはJavaScriptを使ってグラフィックスカードにアクセスできるようになるという。さらに、他のWeb技術との協調も図る。「ブラウザ戦争という言葉は好きではないが、競合がいることで市場が活性化する。他社から学べるものは学んでいきたいし、逆にGoogle Chromeの機能を参考にしたと思われるブラウザもある」とした。
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Web標準および他の技術との協調
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JavaScriptのみで動くWebアプリケーションの例
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コミュニティ、ビデオ、コミックによるマーケティング展開
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日本のGoogleが関わっている部分を紹介するコミック第2弾。現在はGoogleのイベントなどで配布してるが、今後はオンライン版も予定
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関連情報
■URL
「Google Chrome」ダウンロードページ
http://www.google.com/chrome/
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( 野津 誠 )
2009/05/22 18:00
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