趣味のインターネット地図ウォッチ

第102回:道路情報サイト「北の道ナビ」で「吹雪の視界情報」提供開始 ほか


道路情報サイト「北の道ナビ」で「吹雪の視界情報」提供開始

 今年の正月は全国的に寒さが厳しく、雪の影響でトラブルも多発した。帰省途中に吹雪で視界が悪くなり、怖い思いをした方もいるのではないだろうか。ドライバーにとって視界不良は命取りとなるので、できれば事前に視界状況を知っておきたいものだが、そのような声に応えた新たなウェブサイトが登場した。北海道の道路情報サイト「北の道ナビ」が公開した「吹雪の視界情報」だ。独立行政法人土木研究所寒地土木研究所が運営しているこのサイトでは、北海道各地の視界状況を地図上で一覧できる。

吹雪の視界情報視界の程度を5段階に分類

 地図は北海道全域が見られる小縮尺地図で、主要都市名や主な峠、視界の計測地点などが記されており、視界の状況に応じて地域ごとに色分けされている。計測地点は約40カ所以上で、各地点で計測されたデータを使って、独自の研究成果に基づいて周辺エリアの平均的な視界状況を判定しているそうだ。

 視界の程度は「良好(1000m以上)」「やや不良(500~1000m)」「不良(200~500m)」「かなり不良(100~200m)」「著しい視程障害(100m未満)」の5段階に分けられており、悪くなるにつれて青から濃い赤になっていく。地図の下部に、各段階の見え方を写真とともに丁寧に解説しているのも親切だ。ちなみに筆者なら、「かなり不良」の段階になったら自分には運転は無理だと判断するだろう。

 当然ながら雪が降っていないときは地図一面が青くなっているが、寒波が押し寄せると全域が赤く染まっていく。峠の名前をクリックすると峠の断面図や走りやすさなどの情報が一覧表示されたり、道内6カ所に設置されたライブカメラの映像で積雪情報を確認できたりと、視界情報以外の情報も充実している。

 さらに、地図の下部には「視程障害の基礎知識」と題して、冬期道路の視界不良に関する解説記事が掲載されている。「こんなところで視程障害は発生しやすい」とか「吹雪のときは大型車と小型車とで視界が違う」といった細かいレクチャーが載っているので、吹雪に不慣れなドライバーには参考になるだろう。

ライブカメラの映像運転に役立つ基礎知識を解説

 「吹雪の視界情報」はまさに豪雪地帯の北海道ならではのサービスとも言えるが、積雪量の少ない地域なら不要かと言えば、そうとも言い切れない。雪が降らない地域ほど、いざ吹雪に見舞われるとかえって混乱が激しくなると思われるので、このようなサービスはぜひ全国的に展開してもらいたいものである。

URL
 吹雪の視界情報
 http://northern-road.jp/navi/touge/fubuki.htm

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  ライブカメラでも確認できる、NEXCO東日本「高速道路雪道情報」
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インフルエンザの流行状況がわかる「感染症サーベイランス(インフルエンザ)」

 今年もインフルエンザが各地で流行しているようだが、そんな中、全国のインフルエンザの発生状況を調べられるウェブサイトがテスト公開された。ORCA PROJECT(日本医師会総合政策研究機構)が公開した「感染症サーベイランス(インフルエンザ)」だ。

感染症サーベイランス

 このサイトは全国の医療機関から報告されたインフルエンザに関する情報を地図上に表示したもので、過去3日分のインフルエンザ診断件数を「診療行為」「医薬品」「病名」の3種類に分類してまとめている。更新頻度は毎日で、日本医師会が開発した医事会計システム「日医標準レセプトソフト」の起動時に、参加している医療機関から直前のインフルエンザ情報が送信される。これらのデータを集計して13時ごろに最新のインフルエンザ情報が公開されるという仕組みだ。

 使用している地図はGoogle Maps API。デフォルトで表示されるのは都道府県ごとの診療行為件数・医薬品件数・病名件数を足した件数で、1都道府県につき1つの目印が付けられている。ここで地図の右上にある「地域詳細」メニューから地域を選ぶと、エリアごとの件数を見られる。地域表示の場合は市区町村ごとではなく、医師会の支部ごとのデータが掲載されるので、より細かい情報を確認できる。例えば東京都台東区の場合は、浅草医師会と下谷医師会でそれぞれの件数が表示される。

 目印は件数ごとに「0」「10以下」「20以下」「30以下」「31以上」と5段階に色分けされており、件数が多くなるほど濃い赤になっていくので、どのエリアでインフルエンザが多く発生しているのかがすぐにわかる。目印をクリックするとウィンドウがポップアップして、当日の送信医療機関件数や全件数、診療行為件数、医薬品件数、病名総件数などの情報が並ぶ。


地域詳細図医師会ごとの詳細情報がわかる

 まだ公開されて間もないということもあり、情報を送信している医療機関はそれほど多くはないが、情報の収集や公開のプロセスが自動化されており、医療機関の負担も少なそうなので、これから参加件数も増えていくのではないだろうか。インフルエンザへの注意を喚起する意味でも、多くの医療機関の参加が期待される。

URL
 感染症サーベイランス
 http://www.orca.med.or.jp/das/infection_map/

著名な絵師が残した鳥瞰図を見られるiPad/iPhoneアプリ「初三郎ちずぶらり」

 空を飛ぶ鳥の視点から見た“鳥瞰図”の絵師として、大正から昭和にかけて数多くの作品を残した吉田初三郎(1884~1955年)。そんな彼が残した鳥瞰図を見られるiPad/iPhoneアプリが「初三郎ちずぶらり」だ。このアプリは、古地図の上に現在地を表示する「こちずぶらり」シリーズを提供するATR-Promotionsが昨年秋にリリースしたもので、普通の古地図とはひと味違った映像を楽しめる。価格は350円。

 収録されているのは、「札幌市鳥瞰図」や「十和田湖鳥瞰図」、日光の名所を描いた「日光名所圖繪」、大阪で開催された「電気大博覧会」の会場を描いた「電気大博覧會會場全景圖繪」、広島の宮島を描いた「宮島廣島名所交通圖繪」、九州全図を描いた「日本鳥瞰九州大圖繪」など計14枚の鳥瞰図。いずれも1910~1930年代に描かれたものだ。従来の「こちずぶらり」と同様、GPSによって現在地を測位し、その地点を地図上に表示できる。

 また、鳥瞰図の中の観光名所にはランドマークアイコンが付けられており、これをタッチすると当時の写真や解説記事を見られる。鳥瞰図とGoogle Mapsを切り替えて閲覧することも可能なので、現地に行ったときにこのアプリを見ながら観光すると、より一層楽しめるだろう。

日光名所圖繪電気大博覧會會場全景圖繪ランドマークアイコンをタッチすると写真や解説が表示される九州全図

 ATR-Promotionsが最近リリースしたアプリとしては、ほかに「神保町ちずぶらり」と「東映太秦映画村ガイド」という無料アプリが挙げられる。

 「神保町ちずぶらり」は江戸時代の古地図「駿河臺小川町圖」と、現代の古書店マップ、さらに神保町ArtLiveRally実行委員会が作成したグルメマップ「いいにほいがする街 神保町ぐるめまっぷ」の男子編・女子編の計4枚の地図が収録されている。古書店巡りをするときに便利なだけでなく、古地図にはランドマークアイコンが載っているので、古地図散歩にも役立つだろう。

 「東映太秦映画村ガイド」は、京都にある映画のテーマパーク「東映太秦映画村」の村内地図をアプリにしたもので、こちらも「ちずぶらり」シリーズと同様、GPSで測位した現在地を地図上に表示できる。地図上のランドマークアイコンをタッチすると、各アトラクションの写真や説明なども見られる。また、このアプリは日本語、英語、中国語(簡体字)、中国語(繁体字)、韓国語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、イタリア語の9言語に切り替えられるので、外国人観光客向けとしても最適だ。

神保町ちずぶらり(古書店まっぷ)神保町ちずぶらり(神保町ぐるめまっぷ)東映太秦映画村ガイドアトラクションの写真も収録

 これまで古地図のアプリをリリースしてきたATR-Promotionsだが、このような観光案内のツールも提供し始めたということで、「ちずぶらり」シリーズの今後の展開が楽しみだ。

URL
 初三郎ちずぶらり
 http://itunes.apple.com/jp/app/id395438318?mt=8
 神保町ちずぶらり
 http://itunes.apple.com/jp/app/id397335425?mt=8
 東映太秦映画村ガイド
 http://itunes.apple.com/jp/app/id405896747?mt=8

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  古地図上で現在地を表示できる「こちずぶらり」のiPad版が登場
  http://internet.watch.impress.co.jp/docs/column/chizu/20100902_390924.html


2011/1/20 06:00


片岡 義明
 地図に関することならインターネットの地図サイトから紙メディア、カーナビ、ハンディGPS、地球儀まで、どんなジャンルにも首を突っ込む無類の地図好きライター。地図とコンパスとGPSを片手に街や山を徘徊する日々を送る一方で、地図関連の最新情報の収集にも余念がない。書籍「パソ鉄の旅-デジタル地図に残す自分だけの鉄道記-」がインプレスジャパンから発売中。