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速報レビュー

「iPhone 5s」地図アプリの変更点&恒例のGPSログレポート

「マップ」アプリはデザインと細かい機能が進化

 iPhoneの最新モデルとして9月20日に発売された「iPhone 5s」。今回のモデルチェンジではCPUやカメラの強化、指紋認証などに注目が集まっているが、標準の地図アプリ「マップ」についてもiOS7でフラットデザインに変更されたほか、細かい点でいくつか改良が見られた。以下に気付いた変更点を挙げてみよう。

iPhone 5s

1)国道および都道府県道が色付きに
 iOS6ではすべての一般道は白色だったが、iOS7になりクリーム色に着色されて、見た目の印象としては「Google マップ」に近くなった。ただし、iPhone向けの「Google マップ」アプリで着色されているのは国道のみで、都道府県道は白色という違いはある。

2)ズーム時のスケールバー表示
 ピンチイン/アウトによるズーム操作を行う際に、左上にスケールバーが表示されるようになった。

国道と都道府県道がクリーム色に
ズーム時のみスケールバーが出現

3)ピンの吹き出しに現在地からの所要時間を表示
 ピンを落としたときの吹き出しの左端に、現在地からの所要時間が表示されるようになった。

4)ルートの吹き出しに所要時間が表示
 iOS6にはルート検索の結果を表示する際に吹き出しに「経路1」「経路2」などと記載されていたが、iOS7では所要時間が直接表示されるようになった。

ピンの吹き出しに所要時間が表示
ルートの吹き出しに所要時間が表示

5)詳細図の建物に枠線が表示
 建物の形に枠線が入るようになり、輪郭がはっきりと見やすくなった。

6)施設にピンを落とした場合に、詳細情報にて「この近くで人気App」が表示
 施設のアイコンにピンを落とした場合に、詳細情報において「この近くで人気のApp」というリストが表示されるようになった。

詳細図の建物に枠線が入った
施設の詳細情報に「この近くで人気App」が表示

 いずれも細かい改良で、全体的な機能や地図には大きな違いはない。アップルによる地図アプリといえば、今秋にリリースが予定されているMac向けの「OS X Mavericks」にマップアプリの搭載が予定されており、Mac版マップアプリとiOS7のマップアプリとの連携機能が注目される。

軌跡ログは停車時の誤差が気になるが全体的には良好

 一方、地図好きとして気になるのはやはり端末の測位精度ということで、iPhone 5sが果たしてどれくらいの精度なのか、実際にログを録ってみた。ログの取得方法はいつもの通り、自転車にRAMマウントで端末を固定し、市街地にて走行しながら記録した。使用したのはiPhone 5sおよびGARMINのハンディGPS「eTrex20J」。iPhone 5sの軌跡ログ取得にはログアプリ「GPS-TRK2」を使用した。ログの取得間隔は4秒おきに設定した。

RAMマウントで自転車に固定

 スタート地点は東京都台東区の銀座線田原町駅付近で、そこから西に向かってJR上野駅に向かい、上野駅前の交差点にて左折して国道4号を御徒町方向へと南下する。御徒町駅でさらに左折して春日通りを東に向かい、国際通りで左折して北へ向かって元の位置に戻るルートとなる。つまり、軌跡ログが描く長方形の右上の角から左回りに進んで1周している。Google Earth上の赤線がiPhone 5s、青線がeTrex20Jとなっている。昼・夜・朝と時間帯を変えながら、それぞれ別の日に分けて3回記録したので、その結果をすべてお見せしたい。

1)1回目

全体図
スタート/ゴール付近
信号待ちをしているときにiPhone 5sに誤差が発生
上野駅前の交差点ではiPhone 5sが内側に入り込んだ
再び停止時に誤差が発生
iPhone 5sの軌跡が左右にぶれている

 午後2時ごろで、車の通行量が多く衛星測位には厳しい条件。スタート時は両端末ともにあまり違いは無いが、eTrex20Jの方が実際の走行ルートには近い。ただしゴール直前はeTrex20Jの方が外側に膨らんでしまっている。また、信号での停止時にiPhone 5sの誤差が大きく出た。さらに御徒町駅周辺でも停止中の誤差が激しく出ており、左右にブレているのが分かる。この左右のブレは、御徒町駅から東へ向かう直線道路でも同様となっている。

2)2回目

全体図
スタート/ゴール付近
上野駅の交差点で良好な結果となった
御徒町駅付近の角でも誤差が少ない
停止時に少し誤差が生じた

 2回目は深夜1時ごろの車の通行量が少ない時に行った。この時のログはかなり良好で、左右のブレや停止時の誤差が気になる個所が少しあるものの、全体的にはeTrex20Jと遜色のない軌跡となっている。特にゴール付近は両端末ほとんど差がなく軌跡が重なっている。上野駅の交差点でもほぼ互角だが、カーブを曲がり終えた後にiPhone 5sが少し内側に入り込んでしまっている。さらに進んで、御徒町駅前の角では両端末の軌跡が再び重なり合う。その後、東に向かって走る直線では、今後は逆にeTrex20Jの方が外側に膨らむ結果となり、この個所についてはiPhone 5sの方に軍配が上がる。

3)3回目

全体図
スタート/ゴール付近
信号待ちで誤差が発生
上野駅の交差点では左右のブレが発生
曲がり角で誤差が大きくなったが、その後は良好
最後の曲がり角

 3回目は午前9時に記録した。この時は休日なので車の通行量は少なめだった。iPhone 5sはスタート時の誤差が激しく、信号待ちでの停車中の誤差も発生しているが、ゴール直前はeTrex20Jとほぼ同じ軌跡を描いた。上野駅の交差点では左右にブレているが、御徒町駅付近では良好な結果を残している。全体的には2回目に比べて良くないが、御徒町駅付近から東方向に走行した際の軌跡(長方形の下辺)についてはeTrex20Jよりも実際の走行軌跡に近かった。

 総合的にはeTrex20Jに比べて、直線走行時の左右のブレや停止中の誤差、測位スタート時の誤差などが気になった。特に車の通行量の多い場合はこの傾向が目立つ結果となっている。ただし、全体的には良好な軌跡を描いているし、スマートフォンの中では精度の高い部類に入ると思う。街中で地図アプリを見ながら現在地を確認したり、ナビ機能を使ったりする上では、それほど不満を感じることなく使えるだろう。

片岡 義明

IT・家電・街歩きなどの分野で活動中のライター。特に地図や位置情報に関す ることを中心テーマとして取り組んでおり、インターネットの地図サイトから法 人向け地図ソリューション、紙地図、測位システム、ナビゲーションデバイス、 オープンデータなど幅広い地図関連トピックを追っている。測量士。インプレスR&Dから書籍「位置情報ビッグデータ」(共著)が発売中。