趣味のインターネット地図ウォッチ

第180回

「ストリートビュー」を自作して「Google マップ」で公開する方法

 Googleの「ストリートビュー」は地図上のさまざまな場所の360度パノラマ写真を見られるサービスとして人気だが、このストリートビューを“自作”できる機能として「Google マップビュー」で提供が開始されたのが「constellation(星座)」という新機能だ。同機能を使えば自分で投稿したパノラマ写真を“星座”のようにリンクでつなぎ合わせることが可能となり、Google提供のストリートビューのように画面内の矢印をクリックして写真間を移動できるようになる。さらに、ストリートビューとリンクをつなげば、投稿画像からストリートビューへの移動も可能となる(逆は不可)。

 一方向ではあるものの、自分の撮影した写真がストリートビューと直につながるということで、自作パノラマ写真の愛好家にとっては従来よりもさらに魅力的な写真共有プラットフォームとなった。今回はこのconstellation機能を中心に、パノラマ写真を撮影してからGoogle マップに投稿し、リンクをつないで公開するまでの一連のプロセスを紹介したい。

Google マップビュー

パノラマ画像の作成にはカメラ付きAndroid端末が一番便利

 まずは投稿する画像、つまり360度のパノラマ写真を用意する必要がある。パノラマ写真の作成には、「GigaPan」などのパノラマ用雲台と一般のデジタルカメラを組み合わせたり、リコーイメージングの「RICOH THETA」のような全天球カメラを使ったりとさまざまな方法があるが、最も手軽かつ低コストで始められるのは、スマートフォンやタブレット向けのパノラマ撮影アプリを使う方法だろう。

GigaPan
RICHO THETA

 Android、iPhoneともににさまざまなパノラマ撮影アプリがリリースされているが、Google マップでの公開を考えた場合に最も使いやすいのは、Android 4.2から搭載された標準カメラアプリの360度パノラマ作成機能「Photo Sphere」を使う方法だ。同アプリを使えば特別な機材のコストがかからないだけでなく、「Google+」への投稿機能も搭載されているので、手間をかけずに撮影した画像をアップロードできる。

Photo Sphere

 パノラマ撮影の方法は、カメラを起動した状態でPhoto Sphereモードにすると青いドットが表示されて、ドットが画面の中心になるようにカメラを向けると自動的にシャッターが切れる。撮影した画像の上下左右に次のドットが表示されたら、それらの1つにカメラを向ける。再び青いドットが中央に来ると自動的にシャッターが切れて、撮影した部分が写真となって残る。この一連の作業を上下左右に動かしながら繰り返し、周囲360度すべての方向を撮影し終えたらストップボタンを押せば完了だ。

青いドットが中心になるようにカメラを向けると自動的にシャッターが切れる
周囲の空間すべてが写真で埋め尽くされるように撮り重ねていく

 撮影後に画像処理が完了すると、撮影した画像がつなぎ合わされてパノラマ映像ができあがる。筆者が撮影したものはつなぎ目部分が少々不自然な部分もあり、本家ストリートビューのクオリティには及ばないが、それでも時間をかけて撮影した大量の写真が1枚につながるのを見ると実に感動する。

出来上がったパノラマ画像

公開時に撮影位置を修正可能

 パノラマ画像ができあがったらAndroidの「ギャラリー」アプリから写真を選択し、共有機能を使ってGoogle+に投稿する。この際、Google+の設定画面(https://plus.google.com/settings)において、「写真をフルサイズでアップロードする」にチェックを入れておく。

Google+に投稿

 次にGoogle マップビュー(https://www.google.com/maps/views/home)にアクセスし、Googleアカウントでログインしている状態で右上の写真の形をしたインポートのアイコンをクリックするとアップロード済みの写真の一覧が表示されるので、公開する写真を選択する。この際、撮影位置を地図上で修正したり、タイトルを付けたりすることも可能だ。

Google マップで公開する写真を選択
地図で撮影位置を指定

 場所については、公開し終えてから修正することもできる。筆者が荒川の河川敷で撮影した時は、位置が川の中として記録されてしまった。GPSの測位には誤差がつきものであり、必ずしも正しい位置情報が得られるとは限らないので、記録されている位置情報が正しいかどうかは常に意識しておきたい。

 一方、GigaPanなどのパノラマ用雲台と一般のデジタルカメラを使って撮影されたパノラマ画像など、Googleのパノラマ画像規格「Photo Sphere XMP」に対応していないソフトウェアで作成されたパノラマ画像を投稿する場合は、XMPメタデータを付加するためのページ(http://photo-sphere.appspot.com/)を使ってから投稿する必要がある。デジタルカメラにGPS機能が搭載されていない場合は、撮影時にスマートフォンや単体GPSなどで位置を記録しておいた方がいいだろう。

メタデータを付加する写真を選択する

 付加するメタデータは撮影方向とパノラマの画角で、例えば360度のパノラマ画像の場合は左右360度、上下180度と設定する。撮影位置はGoogleマップの地図画面上にマーカーを設置するだけで簡単に指定できる。

写真のセンターがどの方角に向いているかを角度で入力するほか、パノラマの上下左右の画角を入力する

 このようにして投稿された画像は、Googleの審査を経た上で公開される。審査にかかる日数は特に決まってはいないが、筆者の場合は投稿した2日後にメールが送られてきた。筆者の場合、荒川河川敷で撮影したパノラマ画像は無事、審査に通ったが、隅田川沿いの遊歩道で撮影した写真など、審査が通らないケースもあった。この場合はGoogleから特に連絡は来なかった。

 Photo Sphere写真の承認ポリシーについては、ヘルプページ(https://support.google.com/maps/answer/3189550?hl=ja)に詳しい解説が載っている。許可されないケースとしては、位置情報が間違っている、360度の水平視野を持たない、十分な垂直視野を持たない、コラージュなど本物の写真でない、他の撮影者による写真(自分が実際の撮影者を名乗っている場合も含む)、目立つ広告を含む、著作権の表示や宣伝のために大きなテキストやロゴを使用している、性的に露骨、暴力的な描写を含む、差別的・排外的・人種差別的・攻撃的なコンテンツを含む、他人の法的権利を侵害する、風景の重要な部分に粗悪な合成部を含む、といった項目が並んでいる。

Googleからのメール

「constellation」機能を使って写真間のリンクを設定

 公開されたパノラマ画像は、Google マップ上で“ペグマン”を操作すると、ストリートビューや屋内写真の閲覧サービス「おみせフォト」とともにPhoto Sphereを示すポイントが表示される。写真には投稿者名での著作権表記も入り、Googleの撮影によるストリートビューの写真の著作権表記とは区別される。

画面右下の小さなペグマンをクリックするとPhoto Sphereを示すポイントが表示される

 なお、写真をPhoto Sphereに公開しただけでは、まだストリートビューのように写真の中の矢印をクリックしながら移動することはできない。昨年末に公開されたconstellation機能を使って写真同士を星座のような形にリンクさせるには、Google マップビュー(https://www.google.com/maps/views/?hl=ja)にアクセスして、自分のアカウントのページから編集を行う。パノラマ写真を拡大した状態で左下の「編集」をクリックし、さらに「コレクションを編集」をクリックすると編集画面となる。

 この編集画面においてリンクさせたい画像をクリックでつなぐと点線が現れて、点線を再度クリックすると実線となりリンクで結ばれる。リンクは自分が投稿した写真同士だけでなく、ストリートビューの写真から接続させることも可能だが、前述したように移動は投稿画像からストリートビューへの一方向のみで、ストリートビューから投稿画像には移動できない。

リンクさせたい画像をつなぐと点線が現れる
点線をクリックすると実線になりリンクされる
他の線もクリックしてリンクさせる
ストリートビューとのリンク
投稿画像からストリートビューにつながる矢印
矢印をクリックするとストリートビューの画面になる

 なお、この編集画面上ではリンクだけでなく写真の方向も調整できる。点をクリックすると表示される小さな矢印を再度クリックするとパノラマ画像が円の形に表示されるので、正しい方角に合うように調整する。方角が正しくないと、リンクした写真間を移動する際にかなり不自然になるので、方角の修正は重要だ。

 リンクの接続や方角の修正についても、編集を行ってからGoogle マップ上に反映されるまでには少し時間がかかるので注意しよう。反映されたら正しくリンクが接続されているかを確認して、もし修正したい個所が見つかった場合は編集をやり直せる。

方角の修正
公開されたパノラマ写真

「RICOH THETA」用ソフトに「Google マップ」への投稿機能が搭載

 以上がパノラマ写真の公開およびリンク接続の手順だ。今までは“点”で存在していた投稿画像が、ストリートビューのように線で結ばれてクリックで移動できるようになったのは面白い。

 ちょうどこの記事を執筆中の1月30日に、RICHO THETAの専用アプリがバージョンアップしてPhoto Sphere XMPに対応し、撮影した写真をGoogle マップで公開することが可能となったという報道発表があった。今後はTHETAだけでなく、さまざまなパノラマ機器やパノラマ画像作成ソフトウェアがPhoto Sphere XMPに対応し、Google+への投稿機能を搭載してくると思われる。

 ストリートビューが撮影していないエリアというのは日本国内でもまだたくさんあり、そのような場所を自らの手で撮影し、公開できるというのは想像以上に楽しい。Androidユーザーはもちろん、iPhoneユーザーもパノラマ撮影アプリを使って一手間かければ投稿することは可能なので、360度パノラマ画像が好きな人はぜひ試してみてほしい。

片岡 義明

IT・家電・街歩きなどの分野で活動中のライター。特に地図や位置情報に関す ることを中心テーマとして取り組んでおり、インターネットの地図サイトから法 人向け地図ソリューション、紙地図、測位システム、ナビゲーションデバイス、 オープンデータなど幅広い地図関連トピックを追っている。測量士。インプレスR&Dから書籍「位置情報ビッグデータ」(共著)が発売中。