中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2024/4/4~4/10]

ようやく動き出す「なりすまし広告」対策 ほか

eHrach/Shutterstock.com

1. ようやく動き出す「なりすまし広告」対策

 FacebookやInstagramなどのSNSに流れる広告で、有名人の写真を使い、投資勧誘などを装って他のサイトに遷移させる「なりすまし広告」が問題となっていたが、ようやく国も対策に動き出すようだ。この問題はかねて指摘されていたもので、使われてしまった有名人が「私ではない」という旨の注意喚起の投稿をしていた。なかでも、実業家の前澤友作氏がSNSでメタ社に公開質問をしたり、内容証明郵便を送ったりしたことで問題として広く認識されるようになった。しかも、メタの日本法人は米国本社の問題だと回答したり、直ちに問題解決を行うという回答をしなかったりした。

 松本剛明総務大臣は記者会見で「総合的な対策の検討を進めたいと」という趣旨の発言をした(PC Watch)。それに次いで、自由民主党でも勉強会を開催し、前澤友作氏と堀江貴文氏が出席し、「なりすまし広告」の対策を強く訴えた(NHK)。

 プラットフォーマーが対策に積極的に見えない理由は、審査の煩雑さや広告の掲載基準を厳しくすることによる広告収入減少のリスクへの懸念があるのかもしれない。しかし、プラットフォーマーはご自慢のAIの技術を開発してその活用に取り組んでいるはずだし、広告収入の懸念の前に第三者の名前をかたるような悪質な詐欺的行為の摘発は積極的にすべきだろう。

ニュースソース

  • 松本総務大臣、なりすましなど詐欺広告への法的対策を検討[PC Watch
  • なりすまし広告 前澤友作さんと堀江貴文さん SNS運営事業者の規制など対応策必要と訴え[NHK

2. TVerの再生回数が過去最高に

 民放のテレビ番組見逃し配信サービスである「TVer」は2024年3月の月間動画再生回数を発表した(ITmedia)。それによると、3月の月間動画再生回数は4億5000万回を超え、過去最高記録を更新した。さらに、そのうちの1億4000万回は、テレビ画面で視聴するコネクテッドTVによる再生だったという。この数字は、前年同月比140%を超え、コネクテッドTVによる視聴も前年同月比160%を超える勢いだ。

 ブロードバンド回線、インターネットにつなげることができるテレビや機器の増加、さらにはサービスの認知などが奏功しているとみられる。一方で、ハードディスクレコーダーという商品はどうなっているのだろうか。同時期の資料はないが、「NHK+」と組み合わせることで、ある部分はこうしたデバイスに置き換わるサービスになるのだろう。

ニュースソース

  • TVer、3月の再生数が4億5000万回と過去最高に ドラマ「不適切にもほどがある!」など貢献[ITmedia

3. 読売新聞とNTTが「生成AIのあり方に関する共同提言」を発表

 読売新聞グループ本社と日本電信電話株式会社(NTT)は、生成AIに関する現状認識と課題、論点をまとめた「生成AIのあり方に関する共同提言」を発表した(INTERNET Watch)。それによると、生成AIは「現状では人間はこの技術を制御しきれない」としていて、技術および法律も用いての生成AIの「規律」が必要だと提言している。

 このなかで、論点として、次の3つを挙げている。

  • アテンション・エコノミーの暴走を防ぐ「情報的健康」のような概念の確立
  • 自由と尊厳が維持された言語空間のための法規制と技術の導入
  • 生成AIの存在を踏まえたガバナンスの確立

 この提言書では、考察を踏まえたうえで、最後に「生成AIは人間が制御しきれない技術でありながら、今後はイノベーション(社会的普及に伴う変革)の段階に入る」とし、「健全な言論空間の確保に向けた対策は直ちに講じるべき」だとして、「著作権法の適正化、それにあたってのメディアや産業界の取り組み、技術の確立、法規制といった取り組みと並行し、批判的な検証も必要である」とまとめている。

 「生成AIに乗り遅れるな」という積極的な論調、いかにうまく使うかというハウツーやノウハウに関する情報が多いなかで、そのもたらす影響について、いま一度、批判的な観点を持ち続ける必要があるという警鐘でもある。

ニュースソース

  • 「現状、人間はこの技術を制御しきれない」。読売新聞とNTTが生成AIのあり方に共同提言[INTERNET Watch

4. デジタル技術でユニバーサルな読書環境を

 身体に障害のある作家である市川沙央さんが小説「ハンチバック」で芥川賞を受賞したことにより、ユニバーサルな読書環境への関心も広まっている。そのようななか、作家らが加盟する3団体「日本ペンクラブ」「日本文芸家協会」「日本推理作家協会」は、電子書籍の普及などの「読書バリアフリー」推進に協力するとの共同声明を発表した(日本経済新聞)。

 また、一般社団法人日本出版インフラセンターは、ABSC(アクセシブル・ブックス・サポートセンター)のウェブページ(アクセシブル・ブックス・サポートセンター)の公開を発表している(日本出版インフラセンター)。ABSは、2019年6月に施行された「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律(読書バリアフリー法)」を受け、「読書困難者の読書環境整備」と「出版者(出版社)のアクセシビリティへの取り組み支援」を目的に、日本書籍出版協会のAB委員会と連携しつつ、2023年3月に設立された組織である。今後、このページを起点にして、より早く、より多くの人に関連する情報を配信するとしている。このウェブページ自体も、「高いアクセシビリティを実現するためWeb Content Accessibility Guidelines 2.0(JIS X 8341-3:2016に相当)に準拠するように制作」されている。

 さらに、文字・活字文化推進機構は、冊子「バリアフリー図書の森へようこそ!」を発行している(文字・活字文化推進機構)。こちらは、バリアフリー図書にはどのような種類があるのかなどについて分かりやすく紹介している。

 まさにこうした読書環境整備はコンテンツのデジタル化、そしてデジタル技術があるからこそできることであり、こうしたことがより広く認知され、多くのウェブページや出版物での対応が進むことも期待したい。

ニュースソース

5. 米国国立公文書記録管理局が「未確認飛行物体」の記録を公開

 これは決して「トンデモ」な話ではない。米国国立公文書記録管理局(NARA)は、未確認飛行物体(UFO)等に関する記録を集めた「未確認異常現象(UAP)記録コレクション」を公開した(カレントアウェアネス)。ここでは、UFOをはじめ、UAPに関する文書、静止画・写真、動画・音声等についての説明やNARAのオンラインカタログや一部のデジタル資料の閲覧や視聴ができる。

 これは、「2024年国防権限法(P.L.118-31)の1841~1843条」に基づくものとされている。国の文書管理は、こうした情報も公開する必要があるという一例だ。

 こうした情報公開は、資料の物理的な保管スペースの問題はもとより、行政の都合で非公開であってはならないという先例である。

ニュースソース

  • 米国国立公文書記録管理局(NARA)、未確認飛行物体(UFO)等に関する記録を集めた「未確認異常現象(UAP)記録コレクション」を新設[カレントアウェアネス
中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。