中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」
ニュースキュレーション[2024/4/11~4/17]
「有名人のなりすまし広告」問題――メタの声明に前澤氏が激怒 ほか
2024年4月19日 18:20
1. 「有名人のなりすまし広告」問題――メタの声明に前澤氏が激怒
有名人の画像や名前を使ったSNSへの投稿で投資勧誘などを行い詐欺行為を働く手法が問題となっている。
これに対して、ZOZOの創業者で実業家の前澤友作氏が声を上げたことや総務大臣も問題視しているということについては先週のこの記事でも報じた通りだ(いま知っておくべき5つのニュース)。
こうした一連の動きを踏まえ、メタは「著名人になりすました詐欺広告に対する取り組みについて」という声明文を発表した(Meta)。しかし、この声明に対して、前澤氏は「おいおい。まずは謝罪の一言は?社会全体のせい?『審査チームには日本語や日本の文化的背景を理解する人を備えている』なら、俺や堀江さんや著名人が利用された詐欺広告なんてすぐに判別できるでしょ?なめてんの?」と怒りを隠さない(ITmedia)。
もっともな意見だ。当事者なら誰でも怒るだろう。メタの声明文を読むと、難しい問題なので「いますぐには対応できない」、解決にはメタだけでなく「社会的なアプローチ」が必要だという説明に読めるからだ。名前が使われている人のランキングも発表されているのだから(ITmedia)、そうした特定の人の名前の広告をメタがチェックするだけではないのだろうか。まさか、「運用でカバー」するような対策はしたくないということなのだろうか。あるいは、ご自慢のAIで検出するような試みをすればいいだけではないのか。この問題はさらに議論を呼びそうだ。
2. 「改正NTT法」が国会で成立
4月17日に行われた参議院の本会議において、「日本電信電話株式会社等に関する法律の一部を改正する法律案」(改正NTT法)が可決・成立した。4月18日に施行される。
改正のポイントは次のような点だ(ITmedia)。
- 研究の自立性の向上
- 外国人役員に関する規制の緩和
- 総務大臣からの認可に関する規制の緩和
- 会社名(商号)の規制緩和
これについて、NTT、および競合となるKDDI、ソフトバンク、楽天が声明を発表している。
NTTは次のようにコメントしている(ケータイWatch)。
- グローバルなパートナーの皆さまと機動的に連携しながら、引き続き研究開発に積極的に取り組んでまいります
KDDI、ソフトバンク、楽天は次のような見解を発表している(ケータイWatch)。
- NTT法廃止を含めた検討や時限を設ける規定は、拙速な議論を招きかねない
- 今後の慎重な検討を求める付帯決議がなされたことは、国益・国民生活を保護する観点から非常に意義が大きい
- 引き続きNTT法の「廃止」には反対、より慎重な政策議論が行われることを強く要望
そのうえで、「引き続きNTT法の『廃止』には反対するとともに、国民の負担により電電公社時代に構築された日本電信電話株式会社の『特別な資産』を維持し、保護するための規律の時代に応じた見直しや強化も含め、NTT法のあり方について付帯決議に基づき、より慎重な政策議論が行われることを改めて強く要望します」としている。
3. LINEヤフーに2度目の行政指導――対策案が不十分
LINEヤフーの情報漏えい問題について、松本剛明総務大臣は、再発防止に向けた抜本的な見直しや対策強化を加速させるために再度の行政指導を行う方針であると表明している(ケータイWatch)。
これは、すでにLINEヤフーに対して行われた行政指導に対して、再発防止に向けた取り組みに関する報告書の提出があったものの、「一定の応急的な対策については実施済みだが、安全管理措置や委託先管理が不十分かつグループ全体のセキュリティガバナンス体制の構築について、十分な見直しが行われる展望が明らかではない」と判断したことによる。つまり、「NAVERとのネットワーク完全分離が2年以上先」ということが遅すぎるということだろう。LINEヤフーを取り巻く複雑な資本関係によるガバナンス、そしてここへ至るまでの歴史的な経緯などから、簡単なことではないのかもしれないが、IT企業らしからぬ「スピード感の欠如」と捉えられた結果と言えそうだ。
ニュースソース
- LINEヤフーに2度目の行政指導へ、「NAVERとのネットワーク完全分離が2年以上先」など“見直しの展望が明らかでない”と判断[ケータイWatch]
4. OpenAIが東京オフィスを設立
米OpenAIは、東京に同社のオフィスを設置すると発表した。日本法人を率いるのは、元AWSジャパン社長も務めた長崎忠雄氏である(ケータイWatch)。
朝日新聞は米OpenAIのアナ・マカンジュ渉外担当副社長にインタビューしている。その中で同氏は、日本政府の姿勢について「厳しいAI規制は志向しないという一貫したアプローチを採っている」と述べ、さらに「日本の著作権法は、著作物を許諾なしにAIモデルの訓練データに利用できるとする。マカンジュ氏は、『何が許されて、何が許されないかが明確に示されていることは、研究開発において非常に重要だ』」とも述べている(朝日新聞デジタル)。
欧州などと比較し、日本が生成AIの受け入れについて寛容であり、さらには積極的な政策をとっていることも拠点を構える理由と言えそうだ。
また、GPT-4を日本語に最適化した「GPT-4 日本語カスタムモデル」の発表もしている(Impress Watch)。
ニュースソース
- OpenAI、東京オフィス設立を発表[ケータイWatch]
- 「厳しいAI規制志向しない」日本の姿勢評価 米オープンAI副社長[朝日新聞デジタル]
- OpenAI Japanスタート 3倍速い日本語特化モデルも公開へ[Impress Watch]
5. 自由民主党がweb3とAIに関する政策提言を取りまとめ
自由民主党のデジタル社会推進本部のweb3プロジェクトチームは、提言に当たる「ホワイトペーパー2024」を策定した(自由民主党)。概要版(自由民主党)と本文(自由民主党)がある。
その骨子は次の3点である。
- Nippon Nexus:Weaving the web3 Era~日本がweb3 時代の中心へ
- web3の推進に向けてただちに対処すべき論点
- web3のさらなる発展を見据え議論を開始・深化すべき論点
また、自由民主党のデジタル社会推進本部のAIの進化と実装に関するプロジェクトチームは、人工知能(AI)の新戦略を「AIホワイトペーパー2024」として取りまとめた(自由民主党)。概要版(自由民主党)と本文(自由民主党)がある。
その骨子は次の3点である。
- 「ステージII」に臨む日本
- AIを活用した日本の競争力強化のための戦略:急速な環境変化を味方につける柔軟な対応
- 安全性確保のための戦略
いずれも、今後の議論や、政府の政策に影響を与える可能性がある提言と考えられることから、目を通しておく必要があるだろう。