山谷剛史のマンスリー・チャイナネット事件簿
中国のVPN対策強化、外国人には大きな影響なしか? ほか~2017年7月
2017年8月23日 06:00
本連載では、中国のネット関連ニュース(+α)からいくつかピックアップして、中国を拠点とする筆者が“中国に行ったことのない方にも分かりやすく”をモットーに、中国のインターネットにまつわる政府が絡む堅いニュースから三面ニュースまで、それに中国インターネットのトレンドなどをレポートしていきます。
スマートスピーカー/音声認識、中国ネット大手各社が参戦
7月5日、中国ネット大手の阿里巴巴(Alibaba)の人工知能実験室が「天猫精霊X1」スマートスピーカーをリリース。値段は499元(約8000円)。先んじて、ライバルとなる「京東(JD)」もスマートスピーカーをリリースしている。阿里巴巴傘下のECサイトの「淘宝網(Taobao)」での買い物が音声でできるようになり、6人までの声紋が識別可能だという。阿里巴巴はまた、「AliGenie」という開発者プラットフォームをリリースし、これをもとに音声アプリの開発ができるようになる。
同日、百度(Baidu)は「百度AI開発者大会」というAI開発者向けフォーラムを開催し、AI技術オープンプラットフォームをリリースした。ちなみに百度は同社の音声認識エンジン採用のスマートスピーカーのほか、音声認識AIシステム「DuerOS」オープンプラットフォームをリリース済み。
7月26日には、スマートフォンやスマート家電の小米(Xiaomi)が、「小愛」というスマートスピーカーをリリース。音声で天気や道路状況や株価を問い合わせることが可能なほか、アラーム設定なども可能。小米の各種スマート家電も音声でコントロールが可能だという。小米もSDKを提供し、サードパーティによる開発を推し進める。
ネット大手の騰訊(Tencent)も6月下旬にスマート音声プラットフォーム「騰訊雲小微」をリリース。中国ネット大手各社が音声認識やスマートスピーカーで本格的に競い始めた。
無人コンビニが続々と開店し、話題に
プロトタイプの無人コンビニ店が続々とオープンした。これまでも何軒かあったが、7月に次々とオープンし、話題となった。特に7月8日にネット大手の阿里巴巴(Aibaba)が「淘珈琲(TaoCafe)」をオープンさせたことで話題に。ほかにも「Bingobox」(広東省、上海市)、「F5未来商店」(広東省)、「EAT BOX」(北京市)がオープン。半年間では各社合計で12店舗がオープンした。
淘珈琲はAmazon Go同様、商品を取ってセルフレジで精算することなく自動的に購入できるのが特徴。それ以外の無人コンビニは、最終的に顧客がセルフレジで精算して購入する仕組みとなっている。無人といってもスタッフが商品棚に商品を入れるなど、完全無人というわけではない。
特に高温が続いた今夏、スタートした無人コンビニの1つであるBingoBoxでは店内の温度が40度にもなり、商品もチョコレートが溶けるなど変化が起きたため一時閉店となったという、最初の段階ならではのトラブルも起きた。
中国のVPN対策強化、外国人には大きな影響なしか?
インターネット安全法(中国網絡安全法)が施行された6月以降、VPNなどを利用した中国のネットの壁を越える通信が不安定になってきている。繋がらなかったり、繋がった直後に切断されることが増えてきた。
中国で人気のVPNサービスである「GreenVPN」が7月1日にサービスを突然停止した。理由についての記載はなかった。また、7月末には中国向けのApp Store上の多くのVPNアプリが削除された。VPNプロバイダーの1つ「ExpressVPN」は、Appleからの通知を受けてアプリストアから削除した。中国の法律に違反しているというのがその理由だ。ExpressVPNのオフィシャルサイトでは、ダウンロードできないのは中国向けのみ、との記載がある。
こうした中、「個人向けのVPN利用を禁止するよう伝えた」という報道があったが、情報産業省にあたる工業和信息化部は「個人向けVPN業務を禁止するよう要求したという報道をしているが、そうした通達はしておらず、その報道は事実ではない」と、個人向けVPNを禁止について否定するコメントをしている。
「シェアベッド」なる時間貸しのカプセルホテルが登場も、すぐに終了
「シェアサイクル」や「シェアバッテリー」など、新しい「シェア」サービスのリリースがブームとなる中、カプセルルームをシェアするサービスが、正式リリース後すぐに終了してしまった。新しいシェアサービスがリリース直後に終了してしまうのは、先月の当連載記事で紹介した「シェア傘」に続いて2カ月連続となる。ホテルやサイトは「システム変更のため、使用停止中」という掲示がされた。
サービス名は「享睡空間」。内部は宇宙船のようになっていて、無線LANやエアコンが大部屋をカバーし、各小部屋に電源やミニ扇風機が配備されていた。ウェットティッシュのほか、使い捨ての枕カバーやシーツが付いて、30分で6元(約100円)という低価格が魅力だ。5月より1店目をテストオープンし、6月より北京、上海、成都の3都市で店舗数を16店舗まで増やした。
中国メディアが7月、面白いサービスが登場したという享睡空間の紹介記事を掲載し、その記事が拡散した9日後に終了となった。
中国メディアが上海公安局に取材したところ、消防許可がなくホテルの営業許可がないためだとコメントしている。なお、カプセルホテルは享睡空間が初めてではなく、中国全土でカプセルホテルが登場していて、今営業中の店舗も多くある模様。
シェア傘やシェアカプセルホテルに加え、シェアブームのさきがけのシェアサイクルも弱小企業から潰れているため、中国メディアの中には「シェアビジネスブームの終わりの始まり」「過去にあったO2Oブームの隆盛と衰退を見てるかのよう」「マネーゲームで多く投資金を確保したプレーヤーだけが勝つ段階になった」との見方も。
ハイエンドスマホへのニーズが急上昇
中国信息通信研究院によると、2017年上半期の中国でのスマートフォン・携帯電話の出荷台数は、前年同期比5.9%減の2億3900万台。中国メーカーの製品が2億1600万台で90.5%を占めた。スマートフォンは2億2600万台で、Android搭載機が1億8700万台だった。販売機種数は565機種で、前年同期比26.0%減少。
CounterPointの調査結果によれば、2017年第2四半期のメーカー別中国向けスマートフォン出荷台数のシェアは、ファーウェイ(20.2%)、OPPO(18.8%)、vivo(17.0%)、小米(13.0%)の中国の4メーカーが強く、以下、Apple(8.2%)、Samsung(3.0%)と続いた。
ITポータル「中関村在線」の調査結果では、消費者の関心が1000元(約1万6000円)以下の低価格機から、3000元(約4万8000円)以上の高価格帯のスマートフォンへと急激にシフトしていることが分かった。常に生活環境をよくしたい、持っている製品をよりよいものに変えたいという流れと、新興の定番アプリの登場でさまざまなアプリを入れなければならないことから、消費者はハイエンドモデルの所有を望んでいるようだ。
データ通信利用携帯端末数は11億7000万
中国工情省が2017年上半期の通信状況について統計を発表した。ここではブロードバンドや携帯電話などの通信サービスの加入者数を発表している。
データ通信を利用する携帯電話加入者数は前年同期比13.6%増の11億7000万で、全携帯電話加入者数の80.7%がデータ通信を利用。4Gの契約数は2016年末から1億2000万増加して8億9000万、3Gの契約数は2200万減少して1億5000万となり、2G/3Gから4Gへの移行が進んだ。6月時点でのモバイルでの平均利用データ量は1.5GBで、2016年6月の700MB、2016年末の1GB超と比べても大幅に増加している。
ブロードバンド接続端末数は7憶3900万で、2016年末から4900万増加した。FTTHの契約回線数は2016年末から3300万増加して2億6000万、ADSLは450万減少して1500万になり、ほぼブロードバンド=FTTHに。IPTV加入者数は1億300万となり、1億を突破した。
7月末に寛帯発展聯盟(Broadband Development Alliance)が発表したブロードバンド速度についての調査結果によると、平均ダウンロード速度は固定回線で14.11Mbps、4G回線で13.46Mbps、3G回線で4.58Mbpsとなった。
中国政府、普及する無人カラオケボックスへ規制
中国政府文化部(省)は7月18日、中国の都市部のモールに続々と置かれている無人ミニカラオケボックスについての規制を発表した。無人ミニカラオケボックスは、スマートフォンアプリと連携し、歌ったあとに曲や音声データがダウンロードできるという特徴がある。
規制では、ブラックリスト入りされている曲や外国の曲を流してはいけないといった点、コンテンツ検閲制度を構築しなければならないといった点などを挙げている。このほか、無人ミニカラオケボックスのより安全な運用や、消費者に対して誠実なサービスを提供すること、サービス向上を推奨することなどが挙げられている。