山谷剛史のマンスリー・チャイナネット事件簿

中国国外向け携帯電話は最低価格が1台600円、利潤は25円 ほか
〜2012年11月

 本連載では、中国のネット関連ニュース(+α)からいくつかピックアップして、中国を拠点とする筆者が“中国に行ったことのない方にもわかりやすく”をモットーに、中国のインターネットにまつわる政府が絡む堅いニュースから三面ニュースまで、それに中国インターネットのトレンドなどをレポートしていきます。

 筆者は毎月中国のインターネットやモバイル関係の押さえるべきニュースを書いていますが、この12月に「日本人が知らない中国インターネット市場[2011.11-2012.10] 現地発ITジャーナリストが報告する5億人市場の真実」(インプレスR&D、Kindle版1600円)という書籍に1年間の動きをまとめました。Kindle版1600円のほか、amazon.co.jpのオンデマンド出版の仕組みを使ったオンデマンドプリンティングで紙の書籍(2520円)でも提供されます。

 今回の本では、年間の中国のネット・モバイルニュースをジャンルごとに見やすく分け、さらに反日デモやスマートフォンの普及など、大きな事象についてはしっかり書きました。中国のネットは速いスピードでめまぐるしく変化を続けています。僕自身も今年の上半期のことはかなり昔に思えるほどですが、中国のネット市場の今を感じることができる本になっていると自負しています。中国関連の仕事に携わる企業で資料として、あるいは近くて遠い中国の現在を知る本として、活用していただければ幸いです。

中国国外向け携帯電話は最低価格が1台600円、利潤は25円

現在、Apple製品を扱うショップは非常に多い

 中国発の携帯電話はローエンドしか売れず、量は作れど儲からないという苦境に立たされている――メディア「第一財経日報」が報じた。第一財経日報の記事では、中国機電産品進出口(輸出入)商会秘書長の劉春氏は「今年の中国の携帯電話の輸出台数は全世界の8割にあたる10億台に達するが、利益でみれば世界シェアで1%しかなく、アップルやサムスンばかりが利益を得ている」というコメントを掲載している。たとえばアフリカで1台4000〜5000円で売られている携帯電話の中国での儲けはわずか2〜3元(25〜40円)程度だという。

 中国機電産品進出口商会のデータによれば、中国発の携帯電話の平均価格は33ドルであり、最低価格では10ドルを下回る7.5ドルの機種もある。また調査会社のiSuppliでは、昨年の携帯電話出荷台数は17億台で、うち中国で生産されたものが8億台であり、その大部分がフィーチャーフォンだという。IT家電の薄利多売による利潤の低下問題は、過去にmp3プレーヤーなどでも見られたことで、簡単に組み立てることができる業界では概して起こりやすい。業界としては中国に利益がまるで入らない状況を改善したいが、中国メーカー関係者は「中小メーカーは、むしろ生き残るために薄利多売を望んでいる」と話す。1台毎の利潤が減っている中、今年上半期の中国本土における携帯電話生産企業は480社から560社へと増えているという。

人気オンラインショッピングサイトの評価のハッキング行為が状態化

 近年誕生した民間発の新しい記念日である、11月11日の独り身のための「光棍節」は、今年もオンラインショッピングサイトとリアルショップを巻き込み、「他店徹底比較価格」「ゼロ利益」という言葉が飛び交う一大商戦日となった。この日、最大シェアを握るオンラインショッピングサイト「淘宝網(TAOBAO)」の売上げは191億元(約2483億円)という新記録を樹立。しかし、配送体制が注文の多さに追いつかず、多くの宅配会社の配送センターに商品が山積みになる事態となり問題視された。

 さて、その元気な淘宝網と、淘宝網のB2Cサイト「天猫(Tmall)」では、ハッキングによるショップページの改竄が発見され話題となった。淘宝網や天猫での買い物では、販売価格もさることながら店の信用も重要視されている。このため、一部の店舗がハッキングしてまで評価を改竄したものと見られている。評価を正攻法でない手段で改竄することは中国では珍しくなく、2012年2月にも「大手ベンダーのアプリが評判を金で買った疑いでApp Storeから消える」という一件があった。

 ハッキングといっても凄腕のハッカーがいたわけではなく、淘宝網がサイトリニューアルを企業に依頼したとき、企業がハッキングできるツールを開発、リニューアルオープン後ひそかに評価を上げたい店舗に簡単ハッキングツールを販売していたという。

 この事態に淘宝網側は、評価改竄したショップに対し、退店処置にするとしている。

高品質mp3ファイルの有料化の噂にユーザーは「不!(No!)」

 11月に入り、ソニーミュージックやワーナーミュージックやユニバーサルミュージックが、百度(Baidu)や騰訊(Tencent)のQQや酷狗などの音楽配信サイトと提携し、来年より有料で音楽を配信するという噂が飛び交っている。「全てが有料化するわけではなく、320kbps以上の高音質な音楽ファイルに対し有料が課せられる」という話も聞くが、それでも「やがてインターネット配信の音楽が無料でなくなるための資金石」「有料化は許さない」と反発するユーザーの声が目立つ。ポータルサイトのアンケートによれば、8割が有料化に反対している。

 「レーベル会社は中国で儲からない状況や、異常なコンテンツ利用状況を打破したい」と中国メディアは分析している。動画配信においては、動画サイトでかつて有料でHD動画を提供するサービスを開始したものの利用者がまったく集まらず、やむなく無料でHD動画を提供したのがスタンダードになっていったという経緯がある。音楽でも、有料配信ビジネスの道は前途多難となりそうだ。

低価格スマートフォンで有名になった小米、セットトップボックス「小米盒子」をリリース

小米盒子

 高速なCPU搭載ながら1999元(約26000円)というキリのいい価格のスマートフォン「小米手机」リリースで話題となった新興メーカー「小米」が、小米版iTVともいうべきセットトップボックス「小米盒子」を499元(約6500円)というやはりキリのいい価格でリリースした。その後さらに値段を下げ、同社スマートフォン「小米手机」ユーザーには299元で、非ユーザーにも399元でリリースしている。

 小米手机(初代機)はそのコンセプトで話題となりヒットしたが、その後複数メーカーが同コンセプトの機種を投入し追随、10月には2世代目となる「小米手机2」が登場するも、すでにありふれたコンセプトの機種になってしまい、初代のようなヒットにはなっていない。小米のセットトップボックス「小米盒子」もまた、早くも他の中国メーカー数社がリリースする動きを見せている。

 「小米盒子」は、小米手机2含むAndroid搭載機種や、PCや、iPhone、iPadのコンテンツをテレビ上で見る機能、提携する大手動画サイトの動画視聴機能が目玉だ。しかし、その機能についてメディアをコントロールする国家機関「中国国家広播電影電視総局」(略称「広電総局」)が“待った”をかけ、一時サービスが中断する事態に。

 広電総局の発布した「持有互連網電視牌照機構運営管理要求(181号文)」によれば、「セットトップボックス向けに動画配信許可を得ている「CNTV(国営中国ネットテレビ)」「CNBN(中央人民広播電台)」などの企業と提携しなければならない」「各動画サイトのコンテンツへの直リンク禁止」というルールがあり、それにひっかかったとしている(動画サイトは、従来のネットデバイス向けの配信について許可されている)。過去にもセットトップボックスが販売禁止となったことがある。

 この事態に、小米盒子を買うつもりのない人も注目し、小米盒子関連の記事のニュースの掲示板では、広電総局に対しての不満のコメントや、中国製品へ期待できないといったコメントが多く書き込まれた。

深セン地下鉄、連日の信号トラブル。モバイルルーターが原因か?

 広東省深センの地下鉄環中線と蛇口線で、何度も信号トラブルにより列車が急停止し、運行が一時中止するトラブルがあった。7月よりトラブルは起こっていたが、とくに11月に入ってからは頻繁に起きている。中国産の管理システムである「CBTC系統(Communication Based Train Control)」では無線LAN同様2.4GHz帯のIEEE 802.11を採用しているため、乗客の所有するネットデバイスと信号が干渉し、利用できなくなっているというのだ。

 このトラブルは、最近になって売り出され始めたモバイルルーターによるものだと分析されている。深センはノンブランドの携帯電話「山寨機」をはじめ、中小メーカーがひしめいていて、無数の製品が出ており、デジタル製品の普及速度は早めだ。加えて、無線関連製品ひとつとっても「ハイパワーすぎる無線LANルーター」など、グレーゾーンな製品が深センからリリースされていた。

 こうしたことから、問題の2路線で3G信号を切るテスト運行を行ったが、利用客からの猛抗議により1日でテスト運行は中止に。

 ちなみに、近年続々と開通する中国全土の地下鉄では、無線による地下鉄信号システムが採用されているが、全てが2.4GHz帯というわけではなく、5.8G帯を採用した路線もある。

深セン地下鉄
深センのモバイルマーケット

CNNIC、モバイルインターネットユーザーについての調査結果を発表

 CNNIC(China Internet Network Information Center)は、携帯電話やスマートフォンによるインターネットユーザー(以下モバイルネットユーザー)についてのレポート「中国手机網民上網行為研究報告」を発表した。今年6月末時点での中国における同利用者数は3億8800万人で、全インターネット利用者の72.2%にあたる。

 レポートによれば、モバイルネットユーザーのモバイルによる利用頻度は、「1日数回(57.3%)」「毎日1回(14.9%)」「数日に1回(9.3%)」「滅多に利用しない(17.6%)」であり、スマートフォンユーザーの利用頻度は約7割が「1日数回」利用するとしている。利用する場所は(複数回答可)「普段時間のあいたとき(85.6%)」「睡眠前(69.7%)」「バス・地下鉄・タクシー乗車時(48.3%)」「仕事や学習時(45.8%)」などとなった。

 主なアクセス方法は「2G、3G(50.4%)」「無線LAN(33.4%)」「両者同じくらい(16.3%)」で、無線LANの利用場所は(複数回答可)「家庭内無線LAN(67.2%)」「企業や学校内(67.2%)」「公衆無線LANを提供するレストランやカフェ(61.6%)」「別のスマートフォンによるデザリングや電信会社などが提供する公衆無線LANスポット(24.0%)」となった。無線LANによるアクセスの利用率は大都市ほど高い傾向にあり、無線LAN利用者ほど、オンラインショッピング、電子メール、音楽、動画、オンライン小説のジャンルでモバイル向けサービス利用率が高くなった。

 現在利用しているモバイルデバイスのメーカーは「ノキア(22.2%)」「サムスン(13.3%)」「アップル(9.9%)」「レノボ(4.3%)」「HTC(4.0%)」「OPPO(3.9%)」「ファーウェイ(3.3%)」「モトローラ(3.0%)」「ZTE(2.7%)」「ソニー・ソニーエリクソン(2.4%)」「酷派Coolpad(2.2%)」となった。ノキアは現状最も多くの人が利用しているといえるが、次に買うならという質問では、「Android搭載機種(43.3%)」「iOS搭載機種(28.6%)」「それ以外(28.1%)」となった。調査会社易観国際(Analysys International)の調査発表では、ノキアの販売シェアが前年比で大幅に下落していることが報じられている。

 スマートフォンを購入したい理由は(複数回答可)「高性能だから(72.8%)」「興味や趣味(55.2%)」「操作感(53.8%)」「見た目のよさ(51.8%)」「ブランド(41.0%)」「仕事で必要(35.5%)」となった。

 モバイルユーザーのインターネット利用目的は(複数回答可)「友人との連絡(84.8%)」「娯楽(62.1%)」「ニュース(58.2%)」「仕事や勉強(55.3%)」「情報検索(54.4%)」「ソフトのダウンロード(41.3%)」「オンラインショッピング(21.8%)」「ビジネス用途(6.8%)」。モバイルインターネットにより、PCでの利用が減少した用途では(複数回答可)「チャット(67.3%)」が多く、以下「ニュース(32.9%)」「微博(24.0%)」「オンライン小説(22.5%)」「検索(20.7%)」「音楽(16.3%)」「オンラインゲーム(12.7%)」「動画(8.9%)」「オンラインショッピング(7.9%)」となった。

次にスマートフォンを買う時期(青:フィーチャーフォンユーザー 赤:スマートフォンユーザー)
将来スマートフォンを買う場合の価格(青:フィーチャーフォンユーザー 赤:スマートフォンユーザー)

マイクロソフトのメッセンジャー、中国のみでサービスを継続するも評価は上がらず

 中国をのぞく全世界で「Windows Live メッセンジャー(WLM)」が2013年第1四半期に終了し、「Skype」に統合される(※参照: http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20121107_571263.html )。中国で存続するからといって、中国におけるWLM利用者数は685万と多いわけではなく、2000年前後にインターネット利用を開始した古株ユーザーの一部だけが利用している状況だ。

 WLMを中国だけ残す理由は、MSN中国の運営企業はマイクロソフトと共同出資した地場企業によるもので、またSkype中国の運営企業はかつての地場の人気ポータルサイト「TOM」と共同出資した地場企業のもので、資本もリソースも中国化しているため、権利関係が非常にややこしくなっているためという説が有力だ。

 人気のインスタントメッセンジャー「QQ」では、1人が私用と仕事用と複数アカウントを所有するのが当たり前でアクティブアカウントが10億を超える一方で非常に寂しい数字だ。とはいえ「中国でWLMがSkypeと提携したところで、Skypeがフルに使えるわけではない中国では、それも無意味な選択」という声も出ている。

中国のWLMのページ

iPhone最人気ネットショップ、iPhone密輸の実態が明らかに

 オンラインショッピングサイト「淘宝網(TAOBAO)」に出店する、iPhone販売量No1の人気デジタル製品ショップ「藍優数碼」の店員25人が、税関で手続きを取らず、同店で計16万2000台、値段にして5億元もの輸入携帯電話を販売していたとして逮捕され、閉店した。外国からの輸入電子製品は「水貨」と呼ばれ、メーカー保証がつかないが、密輸するため中国本土より安い価格というのが特徴。

 11月に行われた裁判でその実態が明らかになった。主婦を中心に下は子供から上は70歳の老人までを駆使し、毎日香港からiPhoneなどを60台運送。香港からパスポートチェックを受けて本土に入る運び屋には20〜30元(260〜390円)の運び賃が与えられた。

 似たような話として、今年9月にはキャビンアテンダントが転売用商品の税金を納めず懲役11年の判決を受け、「よくあることなのに厳しすぎる」と話題になったが、藍優数碼閉店&裁判のニュースに、惜しむ利用者の声が多く掲示板に書き込まれた。

中国国内の3G競争はW-CDMAが人気

 中国移動電信キャリアには「中国移動(China Mobile、3GはTD-SCDMA方式)」「中国聯通(China Unicom、同W-CDMA方式)」「中国電信(China Telecom、同CDMA 2000方式)」3社があるが、11月のデータによると各電信キャリアの3G端末の販売量、中国聯通が年内に1億台超、中国電信が4500万台、中国移動が6000万台となるようだ。

 3Gのシェアでは、当初2Gで圧倒的なユーザーを抱えていた中国移動が、独自規格TD-SCDMAというネガティブ要素を跳ね返して首位にたっていたが、今年の端末出荷台数では中国聯通のW-CDMAが約半数のシェアとなった。

 一方で中国でも中国聯通からW-CDMA版iPhoneが、中国電信からCDMA 2000版iPhoneがそれぞれリリースされている。ADSLでは中国電信のシェアが圧倒的であるため、ADSLと3Gのセットパッケージで中国電信版iPhoneを選び、ヘビーに外出先で使うユーザーが増えているという。

山谷 剛史

海外専門のITライター。カバー範囲は中国・北欧・インド・東南アジア。さらなるエリア拡大を目指して日々精進中。現在中国滞在中。著書に「新しい中国人」など。