俺たちのIoT
第4回
IoTデバイスの“つながる先”を用意してくれる中間サービスの重要性
2016年11月29日 06:00
前回は、筆者が務めるCerevoの製品「Hackey」を題材として、IFTTTとHackeyの連携をハードウェアの視点から考えてみました。今回は「myThings」を題材に、サービスの視点からこうした連携サービスについて考えてみたいと思います。
myThingsは、ヤフー株式会社が運営する「Yahoo! JAPAN」が提供するウェブサービスです。前回紹介したIFTTTのように、複数のサービスを組み合わせて自動化できるのが特徴で、さまざまなサービスを組み合わせて自動化することができます。
サービスの仕組みそのものは前回紹介したIFTTTと大きな違いはありませんが、日本発のサービスということもあり、日本語で提供されていることも含めて非常に分かりやすいインターフェースとなっています。IFTTTの場合、2つのサービスやハードを「this」と「that」に割り当てていましたが、myThingsの場合は「○○したら」「○○する」それぞれにサービスを割り当てることで、作業を自動化することができます。
国内サービスへの対応が充実しているのも、myThingsの特徴です。Yahoo! JAPANが運営する天気やショッピング、ヤフオク!といったサービスはもちろんのこと、グルメ情報の「ぐるなび」、イベントサービス「connpass」、動画サービス「ニコニコ動画」、家計簿サービス「Zaim」といった国内の人気サービスをサポート。さらにメールサービス「Gmail」、カレンダーサービス「Google カレンダー」など、競合と思えるようなサービスも対応するという懐の広さも注目すべきポイントでしょう。
もちろん、IoTがテーマだけにハードウェアの連携にも対応しています。冒頭で触れたHackeyはもちろん、ウェアラブルデバイス「Withings」「Fitbit」「MISFIT」、コミュニケーションロボット「BOCCO」、学習リモコン「iRemocon」、スマートロック「Akerun」など、多彩なハードウェアをサポートしています。
myThingsを利用するには対応アプリをスマートフォンにインストールした上で、Yahoo! JAPANのIDでログインする必要があります。ログインが完了したら画面右上の「+」を押すと作成画面が表示され、画面の指示に従ってサービスを設定していきます。日本語かつインターフェースも分かりやすいので、操作に迷うことはないでしょう。
組み合わせが多すぎて分からないという人には、アプリのトップページにmyThingsを使った組み合わせの例がいくつも紹介されています。また、myThingsのブログにも、スタッフが考えたいくつものアイデアが掲載されているので、まずはこうしたサンプルをチェックした上で、myThingsでどんなことができそうかを考えることをお勧めします。
なお、myThingsの自動連携は、現状では15分に1回で動作するようになっています。メールの送信や新着情報のチェックなど、すぐに知りたいという組み合わせの場合でも、15分程度は時間の差があることは覚えておきましょう。
IoT対応ハードウェアがネットにつながる「だけ」では何も起きない
IoTは、「モノのインターネット化」と呼ばれることがあるように、モノ、つまりはハードウェアに焦点が当てられることの多い概念です。実際に世の中を見渡しても、IoTに対応したという話はハードウェアに寄せられることが多いのが現状です。
しかし、IoTと呼ばれるハードウェアを分解して考えてみると、ハードウェアがインターネットにつながる「だけ」では何も起きません。当たり前の話ではありますが、インターネットというのはデータを伝送する役割であり、ITの世界では単なるプラットフォームに過ぎないのです。
インターネットを道路に例えるなら、自分の住んでいる地域と他の地域が道路でつながったとして、その道路そのものに大きな意味はありません。道路ができることにより、ショッピングモールに出かけたり、温泉街へ旅行したり、そうした行きたいところ、やりたいことがあってこそ、道路でつながることが意味を持つのです。
同様に、IoTではハードウェアがインターネットにつながるだけではなく、その先にあるウェブサービスこそが重要です。天気予報の情報が分かるというのは天気予報というサービスがあってのものですし、FacebookやTwitterのメッセージを送受信できるというのも、FacebookやTwitterといったサービスがユーザーにとって魅力的だからです。つまり、IoTの世界ではハードウェアと同じくらい、ウェブサービスも重要な存在なのです。
また、見方を変えるならば、これまでインターネットのサービスを利用する主なハードウェアがスマートフォンやパソコンだったのに対し、身の回りのあらゆるものにウェブサービスを届けられるようになるという考え方もできます。第2回では生活の身の回りのものにIoT化の可能性があると書きましたが、これも逆の視点で考えるならば、インターネットで展開されているウェブサービスが、あらゆる身の回りのものに対して展開できる可能性がある、と言えるでしょう。
「myThings」は、IoTデバイスの“つながる先”を用意してくれている中間サービス
とはいえ、すべてのウェブサービスがハードウェアに対応するのも非常に難しい話です。同じWindows、同じMac OSでもバージョンが違うだけで個別に対応しなければいけないのに、パソコンとも違う全く新しいハードウェアへ1つ1つ対応していくというのはとても大変なことだからです。
これはハードウェアを開発する立場からも同じことが言えます。第3回で紹介したHackeyは、Webhookという仕組みを使えば誰でも対応サービスを開発できるオープンな仕組みを採用していますが、IFTTTやZapierといったWebhook対応サービスであればHackeyから簡単に利用できるものの、そうでないサービスであればサービスごと個別に対応したり、サービスにWebhook用の設定を用意してもらう必要があります
myThingsのような中間サービスが重要なのは、こうしたサービス側とハード側のニーズを結ぶ存在であるということです。Hackey自体は直接Gmailやヤフオク!、Facebookといったサービスに対応しているわけではありませんが、myThingsが媒介となってウェブサービスとの連携を提供してくれることで、HackeyのようなIoTデバイスがサービスとつながり、ユーザーにとって本当に価値あるものになるのです。
myThingsは2016年9月に、事業者向けのプラットフォームとして新たに「myThings Developers」のベータ版を公開しました。これまではmyThingsが個別に対応したサービスやハードのみがこのプラットフォームを利用することで、すでにmyThingsに対応しているウェブサービスやハードウェアを使って、新たなサービスやハードウェアを開発できるようになります。
「つながる」ことが重要なIoTにとって、myThingsのように最初からつながる先を用意してくれているサービスは、今後IoTがますます広がるために重要なサービスと言えるでしょう。
※次回掲載は、12月13日の予定です。