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第381回:待望の11a/b/g/n同時通信+無線LANコンバーター
NECアクセステクニカ「AtermWR8700N」&「WL300NE-AG」


 NECアクセステクニカから、注目度の非常に高い無線LANルーター「AtermWR8700N(HPモデル)」が登場した。IEEE 802.11a/b/g/n同時通信の対応やUSBポート搭載による簡易NAS機能の搭載。また、5GHz帯でIEEE 802.11nを利用できる無線LANコンバーター「AtermWL300NE-AG」とのセットモデルも用意するなど、盛りだくさんの構成だ。その実力を実際に検証してみた。

上位モデルがお買い得に

 NECアクセステクニカから登場した「AtermWR8700N(HPモデル、以下AtermWR8700N)」は、通信機器としては珍しく高い注目を集めている製品だ。発表と同時に各メディアはもちろんのこと、ブログや掲示板などでも話題になったほか、個人的にもいろいろなところで「買おうかと思ってるんだけど……」と相談されることが多い。

 これまで、無線LANルーターはIEEE 802.11nの規格策定が長引いた点に加え、製品ラインナップの主流が2.4GHz帯のIEEE 802.11b/g/n対応製品だったこともあり、低価格な製品はともかく、価格の高いハイエンド製品に手を出しにくい面もあった。

 特に5GHz帯を使いたいユーザーにとっては、製品の選択肢がほとんどなく、ごく限られたIEEE 802.11a/b/g/n同時通信対応製品を選ぶか、切り替え式のIEEE 802.11a/n対応製品を購入し、IEEE 802.11b/g/n対応製品との2台設置で運用するといった使い方を強いられてきた。


2.4GHz/5GHzの同時通信に対応したNECアクセステクニカの「AtermWR8700N(HPモデル)」および無線LANコンバーター「AtermWL300NE-AG」

 しかし、このような悩みもようやく解消されそうだ。今回登場したNECアクセステクニカの「AtermWR8700N」は、IEEE 802.11a/b/g/nの同時通信に対応。そして、USBポート搭載で簡易NAS機能も搭載していながら、実売価格は単体モデルで1万3000円前後とリーズナブルな設定になっている。

 これまで、無線LANルーターは150Mbps対応製品など、比較的低価格でありながら、そこそこ速度が出る製品のお買い得感が高かったが、本製品の登場によって、むしろハイエンドの高性能製品のお買い得感がグッと高まった印象だ。

イメージを一新した本体デザイン

 それでは、実際に製品を見ていこう。今回試用したのは「AtermWR8700N(HPモデル) イーサネットコンバータセット」で、親機となる「AtermWR8700N」に、IEEE 802.11a/nとIEEE 802.11b/g/n切り替え式の無線LANコンバーター「AtermWL300NE-AG」がセットになったモデルだ。

 なお、「AtermWR8700N」の単体モデル自体はすでに発売中だが、「AtermWL300NE-AG」およびセットモデルは4月中旬の出荷予定となっている。このため、今回試用した製品は発売前の評価版であることをあらかじめお断りしておく。また、実際の製品と性能などに若干の違いがある可能性があることをご了承願いたい。

 まずはデザインだが、これは従来モデルから変更された。これまでNECアクセステクニカのIEEE 802.11nに対応した無線LANルーター製品はホワイトを基調したカラーとなっていたが、今回のモデルはブラックへと一新されている。曲面を使ったやわらかいイメージも変更され、ラインによって面構成がしっかりと目立つようになった。横幅が若干広くなったこともあり、どことなく力強い印象を受ける製品だ。


「AtermWR8700N」本体正面

 「AtermWR8700N」の機能面としては、IEEE 802.11a/b/g/nの同時通信に対応した無線LANルーターで、2ストリームのMIMOとデュアルチャネルの利用によって、理論値で最大300Mbpsでの通信が可能だ。アンテナは内蔵タイプの送信×2/受信×2の構成となっており、有線インターフェイスはWAN×1、LAN×4ですべて1000BASE-Tに対応している。

 無線LANやルーターとしての機能は、ほぼ従来モデルを踏襲しているのだが、新機能として背面にUSBポートを搭載し、USB接続型のHDDやUSBメモリーなどを簡易NASとして利用できるようになった。実は、KDDIの光ファイバー接続サービス「auひかり」向けに提供されているNECアクセステクニカ製の無線LANルーターなどでは、すでに同様のUSB機能が搭載されていたのだが、他社製品での採用が進んできたこともあり、この機能を市販製品にも搭載したことになる。


「AtermWR8700N」の側面(左)と背面(右)

 一方、「AtermWL300NE-AG」は、NECアクセステクニカの無線LAN製品から長らく姿を消していた無線LANコンバーターだ。IEEE 802.11a/b/g/nに準拠しているが、クライアントとなるため、2.4GHz帯のIEEE 802.11b/g/nと5GHz帯のIEEE 802.11a/nのどちらか一方で親機側と接続する。なお、標準では5GHz帯で設定されている(側面のスイッチで2.4GHz帯との切り替えが可能)。

 有線LANインターフェイスは本体に2ポート用意されているが、親機側と同様に1000BASE-T対応となっている点が特徴だ。同様の無線LANコンバーターとしては、バッファローの「WLI-TX4-AG300N」などが発売されているが、これと比較するとLANポート数は2個少ないものの、「AtermWL300NE-AG」は1000BASE-T対応で転送速度が高く、本体サイズも若干小さい。無線LANコンバーター単体で製品を選ぶとすれば、100Mbpsで良いからより多くの機器をつなぎたいというなら「WLI-TX4-AG300N」だが、スピードを求めるなら「AtermWL300NE-AG」といったところだろう。


「AtermWL300NE-AG」の正面(左)、側面(右)

3階でも50Mbpsで通信可能

 パフォーマンスに関しては、非常に高いと判断して良さそうだ。

 発売直後の一部単体モデルでは、Intel製の無線LANチップとの間での相性の問題があったが、3月1日に公開された最新ファームウェアで同問題の改善が図られている。筆者の環境でもこの問題を確認できたが、最新ファームウェアにアップデートすることで、現在は解消されている。こういった対応の早さは、自社で開発をしている通信機器メーカーならではの強みと言って良いだろう。

 さて、肝心のパフォーマンスを見ていこう。以下のグラフは木造3階建ての筆者宅において、1階に「AtermWR8700N」を設置し、各フロアからインターネット上の速度測定サイト「Radish Network Speed Testing」を利用して計測したものだ。回線には下り最大200Mbpsの「フレッツ 光ネクスト ハイスピードタイプ」を利用している。


グラフ1

 Intelチップを搭載した「ThinkPad X200」、Atherosチップ(AR5008X)を搭載した「LOOX R/A70」、さらに「LOOX R/A70」と無線LANコンバーター「AtermWL300NE-AG」との組み合わせと、複数クライアントを利用した結果を掲載している。クライアント側のチップの特性などの違いもあるが、かなり優秀な結果だ。

 近距離の1階では、どのクライアントの場合でもほぼ下りで60〜70Mbps前後、上りでは80Mbps後半での通信が可能となっている。タイミングによっては下りで100Mbpsを超えることもあるのだが(回線は200Mbps)、これは回線状況にも左右されるので通常は70Mbps前後と考えると良いだろう。長距離の3階でも、上りで17Mbpsという結果も出ているが、下りではおおむね30〜50Mbpsと高い結果となっている。

 前掲のグラフだと少々見にくいので、「Intel Wi-Fi Link 5300AGN」の下り速度結果だけを抜き出して各階の速度をグラフ化してみたのが以下だ。この結果を見るとよくわかるが、速度の落ち込みがかなり抑えられている。また、無線LANコンバーターの測定結果も掲載しておくので参考にして欲しい。


グラフ2

無線LANコンバーターを利用した場合の速度測定サイトの結果。左から1階、2階、3階の結果となる

 本製品は5GHz帯と2.4GHz帯で各2個ずつ、合計4個のSSIDを設定できる「マルチSSID」機能を備えているが、実際に利用する際にPCからSSIDが4個見えるというのは、なかなか贅沢な風景だ。PCで接続先を選ぶときなど、2.4GHz帯のWPA/WPA2とWEP、5GHz帯のWPA/WPA2とWEPがズラリと並ぶ。わかってはいても、どれにつなごうかと迷ってしまうほどだ。


Windows 7のワイヤレスネットワーク。4つのSSIDが表示される

1階と3階の間でAVCHD 17Mbps映像も楽々再生

 無線LANコンバーターを利用したパフォーマンスもかなり優秀だ。むしろ、ノートPC内蔵の無線LANを利用するよりも、「AtemWL300NE-AG」との組み合わせで利用した方が、安定性やパフォーマンスが高い印象がある。

 具体的に、どれくらいのパフォーマンスで通信できているのかを撮影してみたのが以下の動画だ。前述のベンチマークと同じ環境で、「ThinkPad X200」に「AtermWL300NE-AG」を有線接続。インターネット上の速度測定サイトでの計測、および詳しくは後述するが、「AtermWR8700N」のUSBポートに接続したHDDに保存するAVCHDの動画をLAN経由で再生してみた(動画はパナソニック「HDC-SD9」を利用して、17MbpsのHAモードで撮影したもの)。


動画再生の様子

 AVCHDなので再生直後はCPU負荷などもあり若干もたつくが、数秒もすると動画が安定してスムーズに再生されることがわかる。無線LANでここまでの再生ができるのは大きな進歩と言えるだろう。

 「AtermWL300NE-AG」の場合、用途として家庭用のテレビやHDDレコーダーなどを無線化が想定されている。この実力であれば、「アクトビラ」や「ひかりTV」などの動画配信サービスを利用したり、HDDレコーダーで録画したコンテンツをDTCP-IPで配信しても帯域としても問題ないだろう。

 なお、セットモデルの場合、標準で「AtermWL300NE-AG」の接続設定が完了しているので設定を変更する必要はないが、親機同様にWebブラウザーから設定画面を表示することが可能だ。ここから、動作モードの設定や周囲の電波状況の確認ができる。

 動作モードは、出荷時で「拡張モード」という設定で、「TVモード」と呼ばれるIPv6マルチキャストに適したモードとなっている(親機が非対応の場合、通常の標準モードになる)。また、標準では「AtermWL300NE-AG」のMACアドレスを使って親機と通信するが、MACクローンモードを利用することでクライアントのMACアドレスを利用した通信も可能となる。


動作モードを設定することが可能 電波状況も確認可能。親機側のチャネル設定の参考にすると良いだろう

あくまでも“簡易”なNAS機能

 一方、新機能として注目されるUSBポートを利用したNAS機能だが、こちらは“簡易NAS機能”と呼ばれている点からわかるとおり、必要最低限の使い方のみが可能だ。

 使い方は簡単で、USBポートにUSB接続型HDDやUSBメモリーを装着するだけで、設定などは特に必要ない。これでLAN上のPCからは「\\ATERM-XXXXXX\デバイス名」という共有名で、USBポートのデータにアクセスできるようになる。


市販のUSB HDDケースを利用し、500GBのHDDをFAT32でフォーマットして接続。問題なく認識できた Windows 7から共有フォルダーにアクセスしたところ。接続したUSB機器の名称が自動的に共有名に設定される

 ユーザー名とパスワードを指定して認証したり、アクセス権も読み込みに限定した設定も可能だが、1アカウントしか登録できないので第三者の不正なアクセスを防ぐためのパスワードのようなものと言える。基本的には、データの一時的な保管やUSBメモリーからのデータのコピーなどに手軽な用途で利用できるだろう。

 また、「AtermWR8700N」から接続した機器を認識するには、ストレージがFAT32でフォーマットされている必要がある。このため、HDDの場合はオンラインソフトなどを使ってフォーマットする必要がある点にも注意が必要だ。


接続した機器は自動的に共有設定される。アクセス状況なども確認可能 パスワードによるアクセス制限も利用可能

 パフォーマンスに関してはさほど高くはない。以下は、500GBのHDDをUSBでPCに接続した場合と「AtermWR8700N」に接続して有線LANからアクセスした場合の「CrystalDiskMark2.2」のテスト結果だ。クライアントには「LOOX R/A70(Core2Duo SL7100/RAM4GB/OCZ Vertex120GB/Windows 7 Ultimate 32bit/内蔵1000BASE-T)」を使用した。また、参考値として、ATOM230を搭載した「Windows Home Server機(RAM2GB、WD10EADS、RealTek 1000BASE-T)」の値も掲載している。

 結果を見ればわかるとおり、ローカル接続時の半分程度のパフォーマンスとなり、Windows Home Serverなどと比較しても、あまり転送速度が速くないことがわかる。アクセス権などの設定もできないため、本格的なファイル共有に利用するのは厳しいと言えるだろう。


「AtermWR8700N」のUSBポートに500GBのUSB HDDを接続した際の値 USB HDDをPCに接続した場合の値 Windows Home Serverの結果

 このほか、メディア共有機能も標準で有効になっている。これにより、「AtermWR8700N」に接続したUSB機器の「contents」フォルダーに音楽や写真、動画などを保存しておくことで、DLNAクライアントなどから各コンテンツを再生できる。JPEGの写真、WMAの音楽、WMVの動画を保存して試してみたところ、「Windows Media Player 12(WMP12)」や「プレイステーション 3(PS3)」からはすべてのコンテンツを再生できた。

 動画に関しては、このほかMPEG、MOV、MTS(AVCHD)などの拡張子のデータも試してみたが、MPEGはWMP12とPS3、ソニーの「BRAVIA KDL-30J3000」などで再生できたが、他のフォーマットは認識されなかった。このあたりは、クライアント側の対応状況も関係するので環境次第と言ったところだろう。


メディアサーバー機能を搭載。標準で有効になっている Windows Media Player 12を利用して動画を参照したところ。WMVやMPEGなどを再生可能。PS3からも利用できる

 なお、複数機器の接続に関しては不可能なようだ。USBハブを利用して、HDDやUSBメモリーなど複数の機器を接続してみたが、USBハブを接続した時点で機器を認識することができなかった。取扱説明書によると、過電流監視機能によって500mA以上の電流が流れると給電を停止すると記載されているので、このあたりの制限が関係しているのかもしれない。

WL300NE-AGセットモデルでの利用がオススメ

 以上、NECアクセステクニカの「AtermWR8700N」と「AtermWL300NE-AG」を実際に利用してきたが、汎用的な2.4GHz帯でPCやゲーム機などを利用しつつ、空いている5GHz帯を利用して映像伝送などに快適に利用できる。

 今回はあまり触れなかったが、「らくらく無線スタート」や「WPS」によるボタン設定、異なるSSID間の通信を分離できる「ネットワーク分離機能」、無線LANの停止だけでなく上限速度を最大65Mbpsへの設定も可能な「エコモード」、「悪質サイトブロック」機能など、従来のAtermシリーズから踏襲した機能も引き続き搭載している。

 もちろん、親機単体だけ購入してもお買い得な製品だが、個人的には無線LANコンバーター「AtermWL300NE-AG」とのセットモデルをおすすめしたい。相性の良さによるパフォーマンスも抜群だが、出荷時状態で接続設定(5GHz接続)があらかじめ設定されているため、無線LAN機器を初めて使う人でも、まったく設定が必要なく利用できる。

 一方、NAS機能は、やはり簡易なものと割り切った方がいいだろう。ファイル共有が目的であれば、個人的には「Windows Home Server」やNAS製品を使った方が効率的と言える。とは言え、基本となる無線LAN機能についてはかなり高性能で、価格的にもじゅうぶんリーズナブルだ。これから無線LANを導入しようと考えている人はもちろんのこと、買い換えにもおすすめできる製品と言えそうだ。


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2010/3/2 06:00


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 7」ほか多数の著書がある。自身のブログはコチラ