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第441回:自宅のレコーダーの映像をストリーミング配信
挑戦者「VULKANO FLOW」


 アイ・オー・データ機器の挑戦者ブランドから、ストリーミングTVアダプター「VULKANO FLOW(ボルカノフロー)」が発売された。先行して発売されているイーフロンティアの「Slingbox PRO-HD」やかつてのロケーションフリーとのライバルになる製品だ。その実力を検証してみた。

リーズナブルな価格のストリーミングアダプター

 本体価格1万2800円、携帯端末向けのプレーヤーソフトの価格がiPhone/iPad用が1500円、Android用が12.99ドル。

 確かに、これくらいの価格であれば、無理なく購入することができる。

 挑戦者ブランドの製品として、アイ・オー・データ機器から発売された「VULKANO FLOW」は、これまでのライバル製品の半額程度となる低価格を実現したストリーミングアダプターだ。本コラムで以前にイーフロンティアの「Slingbox PRO-HD」を取り上げた際、その欠点として価格を挙げたが、今回の製品では、この弱点が克服されているというわけだ。

 実際、同製品の販売状況は好調なようで、初回出荷分として用意した数百台は発売後、すぐに完売となる盛況ぶりだったようだ。興味はあるが、価格が高くて手が出しにくい……。そう考えていたユーザーが多かったのだろう。

アイ・オー・データ機器から発売された「VULKANO FLOW」。低価格が魅力のストリーミングアダプタ

 

ケーブルの準備を忘れずに

 では、実際の製品を見ていこう。本製品は、テレビチューナーやレコーダー機器の映像をインターネット経由で配信できるストリーミングアダプターだ。

正面 側面
背面 薄型なのでラックのすき間などにも十分設置可能。無線LAN搭載なので配線も楽

 本体背面のコンポーネント、もしくはコンポジット端子に、レコーダーなどの機器を接続すると、その映像をリアルタイムにトランスコードしながら、ネットワーク経由で配信することができるようになる。これをPCやスマートフォンなどのアプリを使って、外出先などから視聴できるという製品だ。

 通常、レコーダー機器を使って映像を見る場合は、テレビの画面を見ながらリモコンで操作するが、これをネットワーク経由で行なうことをイメージするとわかりやすい。映像はテレビ画面の代わりにアプリに表示され(スルー端子を接続すればテレビ側にも同じ映像が表示される)、チャンネル切替操作はリモコンの代わりにVULKANO FLOWに接続した赤外線送信機によって行なわれることになる。

 セットアップはさほど難しくはないが、いくつか注意点がある。まずはケーブルの準備だ。レコーダーの背面にある出力用のD端子とVOLKANO FLOW背面の入力用コンポーネント端子をケーブルで接続する必要があるのだが、付属のケーブルは両端がコンポーネント端子となっているため、D端子-コンポーネント端子のケーブルが別途必要になる。

 Slingbox HD-PROでは、このケーブルが付属していたが(箱の外側に貼り付けられている)、本製品では付属しないので本体注文時に一緒に購入しておくといいだろう。

背面のコンポーネント端子にレコーダーなどを接続し、その映像をネットワーク経由する。コンポーネットケーブルは付属するがD端子用ケーブルは付属しないので別途購入が必要

 続いて、ネットワークの接続方法だ。本製品にはIEEE802.11b/g/n準拠の無線LANも内蔵されているが、初期設定をネットワーク経由で実行する必要があるため、初回は有線LANでの接続が必要になる。

 個人的には、通信の安定性を考えても有線LANでの接続を推奨したいが、接続機器の近くにネットワークの配線がない場合などでも利用できるのはメリットだ。無線LANの設定は手動となるが、PCからアクセスポイントの設定ページを参照して、暗号キーなどをコピーすれば手間なく設定できるだろう。

 なお、ネットワーク接続の際には、49177(TCP)と56123(TCP/+UDP)の解放が必要になる。UPnPによる自動設定も可能だが、うまく設定できない場合は固定IPの設定と上記ポートの転送を忘れずに設定しておこう。

 物理的な接続が完了したら、本体の設定を実行する。発売元であるMONSOON社のWebサイト(http://www.monsoonmultimedia.com/)からアプリケーションをダウンロードして実行するだけで良いのだが、このアプリは英語版のままとなっている。

 映像の入力方式などを選びながらウィザードを薦めていくだけなので、さほど難しくはないのだが、メッセージをよく読みながら設定を進めていく必要がある。なお、同梱の取扱説明書も英語となる。製品情報ページから日本語の設定ガイドをダウンロードできるので、これを見ながら設定するといいだろう。

 最後はリモコンの設定についてだ。初期設定の際、利用する機器のリモコンを選択できるが、ここは海外版の製品しかリストアップされない。Slingboxでは、海外製品と国内製品の対応をWebサイトで公表されているが、本製品では情報が提供されないため学習機能を使った設定となる。

 これがなかなか手間がかかる。アプリ側のソフトウェアキーとリモコンの物理キーを割りあてる作業となるため、再生や一時停止、ボリューム調整、チャンネルボタン、番組表、録画一覧表示など、アプリ側の設定選択とボタンを押すという動作を繰り返す必要がある。

画面上に表示されるソフトウェアリモコンのボタンに、物理的なリモコンのボタンを学習させていく。これが一苦労

 この設定はファイルに保存することができるため、設定済みの値を読み込ませることも可能となっているが、現状は設定済みのファイルなどは提供されない。近日中にアイ・オー・データ機器製品の設定ファイルが提供されるようだが、どちらかというと国内メーカーのレコーダーなど一般的な製品の設定ファイルが欲しいところだ。

 なお、挑戦者ブランドとなるため基本的なサポートは行われないが、同社では自分で設定できないユーザー向けに有償の設置サービスの提供も予定している。指定場所に訪問して機器の設置やルーターやリモコン設定、視聴用端末のセットアップなどが行なわれ、金額は1万数千円前後が予定されている。

 このサービスを利用しても、他社製品に比べて価格的なアドバンテージがあるため、やはりお得感は高いと言えそうだ。

画質は回線次第

 設定が完了すると、PCやスマートフォンからの視聴が可能となる。PC版のアプリケーションは無償で提供されているので、まずはこれで動作を確認してみた。

 同一LAN内(無線LAN接続)で利用した場合は、かなり快適だ。Slingboxのようにブラウザ(プラグイン利用)で視聴することはできないが、アプリケーションさえインストールしてしまえば、手軽にテレビを視聴することができる。

PC用のアプリケーションは無償で利用可能。2Mbpsもビットレートがあればかなり高画質

 チャンネルの切替時などは、一瞬、画面が暗くなるが、4秒程度で切替ができるので、タイムラグはほとんど気にならない。画質に関しても、かなり良好で2Mbps前後のビットレートが確保されれば、かなりきれいでスムーズな映像を楽しむことができる。

 WAN経由の場合も、かなり快適だ。auのIS03、およびiPhone4の両方で試してみたところ、バッファに時間がかかる場合があるものの、画質は必要十分といった印象だった。特に低ビットレートでの画質は、思った以上に良好で、100kbpsのビットレートでも十分視聴に耐えうる画質の映像を再生できた。

iPhoneやAndroid端末でも視聴可能。低ビットレートの画質が高いため、3Gでも実用的
【Flash動画、クリックで再生】IS03(3G)での視聴の様子。100kbps以下のビットレートでも文字の判別が可能とクリアな画質を楽しめる。映像の動きもスムーズだ

 Slingboxの場合、接続直後の画質が非常に粗く、次第にビットレートが上がって安定してくるまで若干時間がかかるが、本製品では接続直後から比較的安定した画質が表示される印象だ。これに対して、VULKANO FLOWは、あまり回線速度を気にしなくて良い。この点も大きなメリットと言えそうだ。

 なお、タブレット端末の場合、OSのバージョンによっても画質が変化する。Android 3.0搭載タブレットでは、Android 2.x系よりもストリームされる映像の解像度が高く設定されているため、画質が若干良好だ。もちろん、回線速度が遅ければ、そのアドバンテージを活かせないが、いずれにしても、スマートフォン系での視聴は悪くない印象だ。

あると便利なストリーミングアダプタ

 以上、挑戦者ブランドの「VULKANO FLOW」を実際に試してみたが、1万数千円の出費で、外出先からのテレビ視聴環境が整えられるのは非常に魅力的だ。性能的にもライバル製品に比べて遜色ないので、個人的にはおすすめできる製品と言える。

 ただし、ルーターや無線LAN、リモコンの学習など、設定を自力で行なう必要がある点に注意が必要だ。基本的にサポートは受けられないので、設定やトラブルを自力で解決する決心がある場合のみ購入するといいだろう。

 また、3G環境で利用する場合は、通信事業者の帯域制限にも注意が必要となる。仮に500kbpsのビットレートで1時間映像を視聴した場合、単純計算で転送量は225MB程度となる。通信事業者によっては、転送量が多いと速度が制限される場合もあるため(直近3日間で300万パケット/約366MBなど)、長時間の利用や連日の利用で帯域制限される可能性がある。

 速度を考慮しても、現状、制限がないとされているWiMAXなどでの利用を想定した方がいいだろう。

 このような点にさえ注意すれば、1台あるだけで、テレビの楽しみ方が変わる製品と言える。ライブでテレビを見るのはもちろんのこと、録画した番組を外出先で見たり、外から録画予約をするといった使い方ができる。購入を検討したいアイテムの1つと言えるだろう。


関連情報

2011/5/24 06:00


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 7」ほか多数の著書がある。自身のブログはコチラ