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第464回:Atermシリーズのフラッグシップ機、450Mbps対応「AtermWR9500N」を試す

〜実測200Mbpsオーバーの実力派


 NECアクセステクニカから、450Mbps対応のIEEE802.11n/aと300MbpsのIEEE802.11n/b/gの同時利用に対応した無線LANルーター「AtermWR9500N」が発売された。同じ本体を2台同梱したコンバータセットモデルでは実効200Mbpsを超える速度を実現可能な実力派だ。そのレビューをお届けしよう。

現時点のド本命

 無線LANのFTP転送テストで、瞬間的な値も含まれるにせよ、「33909.80KB/秒」や「28.88MiB/s」といった結果をディスプレイ上で目の当たりにしたのは、今回の「AtermWR9500N」が初めてだ。

NECアクセステクニカの「AtermWR9500N」。450Mbps対応機ながら、アンテナを本体に収容し、従来からのすっきりした筐体デザインを継承した。縦置き(写真左)だけでなく、横置き(右)にも対応する

 本コラムでは、これまでにも3ストリームMIMOによって450Mbpsを実現したIEEE802.11nの無線LANルーターを取り上げてきたが、筆者の環境で実際にテストしたところでは、実効で100Mbps前後の値しか計測できなかった。

 これに対して、NECアクセステクニカから登場した「AtermWR9500N」は、この値をあっさりと更新。詳しくは後述するが、瞬間的な最大値を除いた平均値でも200Mbps前後の値をたたき出すことに成功している。

 無線LANルーターに関しては、今後、2.4GHz帯のIEEE802.11n/b/g側の450Mbps対応も予定されてはいるため、買い時の判断が難しいところだが、付加機能よりも純粋な通信性能を求める場合、現時点では、かなり有力な選択肢の1つとなる製品と言えそうだ。

こだわりのアンテナ内蔵

 それでは、実際の製品について見ていこう。まず外観だが、従来のAtermシリーズからデザインが一新され、薄型で角に丸みを帯びたスタイルとなった。

 サイズ的には、従来のAtermWR8700Nなどと比べて、幅、高さ、奥行きともに若干小さい程度なのだが、丸みを帯びたデザインと段差を付けた前面のパネルの印象からか、かなりコンパクトな印象だ。

AtermWR9500Nイーサネットコンバータセットは、450Mbpsの11n/aと300Mbpsの11n/b/gに対応した無線LANルーターが2台同梱されている 従来のAtermWR8700N(右)との比較。サイズはひと回り小さくなっている
AtermWR9500N 側面 AtermWR9500N 背面

 インターフェイスは、従来とほぼ同等で、前面にecoモード、らくらくスタートの2つのボタンを搭載。側面には、1000BASE-T対応のLAN×4、WAN×1に加え、USB HDDやWebカメラを利用するためのUSBポート×1、モード切替スイッチを搭載している。

 違いとしては、後述するコンバータモードの利用のためにモード切替スイッチに「CNV」が追加され、前面のLEDにも「CONVERTER」ランプが追加された点くらいだろう。

 外観のポイントはやはりアンテナ内蔵という点だろう。NECアクセステクニカは、2007年発売のAtermWR8500N以降、アンテナ内蔵の製品を投入し続けて来たメーカーだ。450Mbps対応のIEEE802.11n製品の登場以降は特に顕著だが、他社がアンテナを巨大化するのとは対照的に、外部アンテナを搭載せず、すっきりとしたデザインにこだわり続けている。

 一般的なイメージからすると、巨大な外部アンテナを搭載している方が電波が遠くまで届くようなイメージがあるが、同社は内蔵アンテナでも同等、もしくはそれ以上の通信範囲やパフォーマンスを実現していることになる。

 巨大なアンテナはむしろ調整が難しいという面もあるため、すっきりとした外観で置き場所を選ばないだけでなく、しかもアンテナ調整などに悩まされることがないAterm WR9500Nは、一般ユーザー層にとってありがたい存在というわけだ。

Atermの全機能を踏襲

 機能面でも、ハイエンドモデルらしい高い完成度の製品となっている。まず、ネットワーク機能だが、無線LANに関しては、冒頭でも少し触れた通り、IEEE802.11n/a(5GHz)とIEEE802.11n/b/g(2.4GHz)の同時通信に対応しており、このうち5GHz側が3ストリームMIMOの450Mbpsに対応。2.4GHz側は2ストリームMIMOの300Mbps対応となっている。

 有線LANは全ポートGigabit対応で、有線のスループットは公称872Mbps(ローカルルーター時)と、こちらも高速だ。実際にLAN側とWAN側にPCを接続し、ローカルルーターモードでFTPの速度を計測してみたところ、以下のように下りで900Mbpsを超える結果も確認できた。

有線スループット実測値
※サーバー:Core i7 860/RAM8GB/HDD2TB
※クライアント:ThinkPad X1(Intel Core i3-2310M 2.1GHz/RAM2GB/HDD320GB/Ultimate-N 6300/Windows7 Professional 64bit)
※WAN側にサーバーを接続し、LAN側のクライアントから1GBのファイルをFTPで転送して計測

 無線のパフォーマンスについては後述するが、無線、有線ともにパフォーマンス的には文句ナシといった印象だ。

 純粋な新機能としては、実は地味で、省電力型イーサネット機能(IEEE802.3az)に対応し、有線LANがリンクアップした状態で通信を行なっていないときの電力を抑えることが可能になっている程度だ。しかしながら、この機能も標準でオフになっているので、実は機能的な目新しさはあまりない。

 他社製の無線LANルーターや世代の古いAtermから買い換える場合は、スマートフォン向けの連携機能やUSBカメラ機能などが目新しい機能となるが、これについてはAtermWR8600Nと同等の機能となるため、本連載のAtermWR8600Nレビュー記事を参考にしてほしい。

AtermWR9500Nの設定画面。従来のAtermシリーズの機能がほぼすべて搭載されている

圧巻のパフォーマンス

 さて、いよいよ気になるパフォーマンスについて見ていこう。今回のテストでは、AtermWR9500N(HPモデル)イーサネットコンバータセット「PA-WR9500N-HP/E」を利用した。

 これは、AtermWR9500N本体が2台同梱されたセットで、1台が通常の親機、もう1台が親機に接続するコンバータモードの子機として設定済みとなっている製品だ。同社では、従来から設定済みの状態のイーサネットコンバータをセットしたモデルを販売していたが、今回のように親機と同じモデルのコンバーターが2台同梱される製品は初だ。

 個人的には、今回のAtermWR9500Nを購入するのであれば、ぜひこのセットを買うことをおすすめする。設定済みなのでネットワーク家電などを手軽に接続できるというメリットがあるのはもちろんだが、この組み合わせが、もっとも450Mbpsの威力を体験しやすい環境となっているからだ。

 実売価格は2万7000円前後と高くなるが、単体のAtermWR9500N(1万5000円前後)を後から2台揃えるよりも割安となるので検討してみるといいだろう。

 前置きが長くなってしまったが、ベンチマークテストの結果を見ていこう。以下が、木造3階建ての筆者宅におけるFTPテストの結果だ。

FTPベンチマーク

 帯域Up/Down1F
(Mbps)
2F
(Mbps)
3F
(Mbps)
コンバータ5GHzDown192.17149.08111.73
Up150.82132.16104.01
ThinkPad X15GHzDown148.6472.7462.92
Up89.0261.6352.64
2.4GHzDown148.6472.7462.92
Up89.0261.6352.64
MacBook Pro5GHzDown242.26113.4143.78
Up139.6791.1039.00
2.4GHzDown84.2278.6843.78
Up81.0379.7739.01
有線LAN(参考)Down927.52
Up762.19
※サーバー:Core i7 860/RAM8GB/HDD2TB
※クライアント:ThinkPad X1(Intel Core i3-2310M 2.1GHz/RAM2GB/HDD320GB/Ultimate-N 6300/Windows7 Professional 64bit)
※クライアント:MacBookPro 2011(Intel Core i5 2.3GHz/RAM8GB/HDD320GB/Broadcom BCM43xx/Mac OS X Lion)
※サーバー上に作成した4GBのRAMDISK上に100MBのテキストファイルを保存しFTPにてファイル転送した際の速度を計測

 今回のテストでは、3つのクライアントを利用して計測した。1台はもちろんAtermWR9500Nのコンバータ、もう1台はIntelのUltimate-N 6300を搭載したThinkPad X1、最後はMacBook Pro(Broadcomチップ)だ。

 結果を見てもわかる通り、もっとも優秀な結果を出したのはMacBook Pro利用時で、同一フロアで最大242.26Mbpsを実現した。非常に通信も安定しており、平均して250Mbps前後で通信できる印象だ。

 一方、ふるわなかったのはThikPad X1で、設置場所や向きなど、いくら試しても最大で150Mbps前後しか実現できなかった。Windows 7の無線LANの状態を見ていると、450Mbpsでリンクすることが希で、270Mbps〜405Mbps前後の速度で頻繁にリンク速度が変わっていたので、この影響で速度が思ったほど伸びなかったと考えられる。ドライバは最新版を利用したので、別のPCやチップであれば、結果は変わる可能性もありそうだ。

 注目のコンバータは、最大速度こそ192.17Mbpsとなったものの、2Fや3Fでも比較的高い速度が実現できるのが特徴だ。特に3Fで実効100Mbpsを超えたのは驚きで、離れた部屋や別のフロアでの通信に非常に有効だ。

 実は、コンバータでも瞬間的には270Mbps前後を記録することもあったのだが、筆者宅の環境では連続して2回以上計測することができなかったため、今回の結果では平均を計算する際に値から除外している。

コンバータ利用時のテスト結果。250Mbps前後の速度も計測できたが、平均すると200Mbps前後となった

 おそらく設置場所や方向をうまく調整すれば安定して250Mbps前後の通信もできそうだが、今回は3つのクライアントを同じ環境でテストしたので、最高速のみMacBook Proに譲ったというわけだ。

 2F、3Fの結果を見る限り、もっとも特性が良いのは明らかにコンバータなので、この組み合わせで使うのが、もっともAtermWR9500Nの性能を発揮できるだろう。

2.4GHzは300Mbpsでもいい

 以上、NECアクセステクニカの「AtermWR9500N」を実際に試してみたが、圧巻のパフォーマンスはもちろんのこと、使いやすさ、そして何より安定性ともに文句ナシといった印象の製品だ。

 機能の豊富さで言えば、まだまだライバル製品に及ばない面もあるが、付加機能についてはユーザーによってニーズが異なるため、純粋な通信機能では本製品の優位性が目立つ印象だ。

 もちろん、他社製品と横並びで比較したわけではないので、まだ決断を下すのは早いかもしれない。このあたりについては、機会を設けて、同一環境で450Mbps対応無線LANルーターの同士の対決を企画したいところだ。

 欠点をあえて挙げるとすれば、前にも少し触れたが、2.4GHz側が300Mbps対応のままという点になるだろう。ただし、現状、2.4GHzは混雑によって、干渉を避けずに40MHz幅を確保することが難しい状況にある。

 また、クライアントの対応状況を考えても、450Mbps通信が可能な製品は、PCですら機種が限られるうえ、スマートフォンやタブレットに関しては11n対応と言ってもデュアルバンドどころかMIMOさえも使わない72Mbps対応のケースが多いため、実用性に課題がある。

 であれば、2.4GHzは300Mbpsで十分と割り切り、5GHz帯のコンバータで450Mbpsを堪能するという使い方でも、現状はもちろんのこと、今後も問題ないと言える。

 正直、5GHz帯でここまでの速度を見せられると、2.4GHzは割り切って考えることができるので、今購入しても損ではないだろう。むしろ混雑した2.4GHzで製品を待ち続けるよりは、早々に5GHz帯に逃げてしまった方が幸せと言えそうだ。


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2011/11/1 06:00


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 7」ほか多数の著書がある。自身のブログはコチラ