清水理史の「イニシャルB」

NECアクセステクニカ「AtermWG1800HP」VS バッファロー「WZR-1750DHP」

~最大1300Mbps対応Draft11ac機の2強を比較

 バッファロー「WZR-1750DHP」に続き、NECアクセステクニカからも最大1300Mbpsの通信に対応するDraft11ac対応機「AtermWG1800HP」が発売された。独自の基盤技術とアンテナ技術によって、高速化だけでなく、驚くほどの小型化を実現した製品だ。WZR-1750DHPと比較しながら、その実力を検証してみた。

並々ならぬアンテナへのコダワリ

 現段階でも、「11ac対応で、よくここまで小型化したなぁ」と感心させられるが、仮に将来的に4ストリーム以上がコンシューマー向け製品で入手可能になったとしても、恐らく、この技術のおかげで、Atermはアンテナ内蔵と小型化というアドバンテージを持ち続けることができそうだ。

 NECアクセステクニカから新たに発売された「AtermWG1800HP」は、5GHz帯で最大1300Mbpsの通信を実現するDraft11acに対応しただけでなく、スリムかつスタリッシュなデザインを実現した新世代の無線LANルーターだ。

NECアクセステクニカのDraft11ac対応無線LANルーター「AtermWG1800HP」
2台セットの「AtermWG1800HP/E」では、片方が親機、もう片方がイーサネットコンバーターモードで接続済みの子機として出荷される

 筆者が記憶する限り、同社製の無線LANルーターでアンテナが外付けされていたのは、最大300MbpsのDraft11nに対応したAtermWR8400Nあたりが最後ではないだろうか。長らくアンテナにこだわってきたAtermシリーズらしく、今回の製品もアンテナ内蔵を堅持したうえ、さらにノイズを遮断する「μEBG構造」と米粒ほどのサイズながら全方位に電波を飛ばすことができる「μSRアンテナ」と呼ばれる独自技術を投入し、通信品質の向上と小型化を同時に実現することに成功した。

 無線機器の場合、通信の妨げとなるノイズをどう防ぐか、通信品質を保つためにどのようにアンテナを配置するかが、設計上、非常に重要になる。このため、これまでの製品では基板にある程度の余裕が必要だったが、今回の「μEBG構造」と「μSRアンテナ」によって、ギリギリまで基板スペースを省略でき、通信品質を向上させながら、さらに小型化まで実現できたというわけだ。

 ノートPCやタブレットなどのクライアントにも活用して欲しい技術ではあるが、とにかく、今回の新しいAtermWG1800HPの特徴は、単にDraft11ac対応となるだけでなく、コンパクトなのに速いという点にある。

正面
側面
背面
付属の台座を上部に取り付けると横置きにも対応する
背面のスイッチでコンバーターモードへの切替が可能

スペックをライバルと比較してみる

 それでは、ライバル製品となるバッファローのWZR-1750DHPと比較しながら、実際の製品について見ていこう。本体は、小型化された基板によって、デザインの自由度も広がったおかげか、通信機器としては、これまでになかったスタイリッシュな姿となっている。

 実際には、それほど薄いわけではないのだが、本体は、両端を斜めに軽く折り曲げた板のようなデザインになっており、見た目にスリムでスッキリとした印象がある。先に発売されたバッファロー製のDraft11ac機「WZR-1750DHP」と比べると、サイズが半分程度となっているだけでなく、その印象も対照的だ。

バッファローのWZR-1750DHP(左)とNECアクセステクニカのAtermWG1800HP(右)
重ねるとAtermWG1800HPのコンパクトさがよくわかる

 バッファローのWZR-1750DHPは、マットなブラックに赤のワンポイントが映え、玄人好みの攻撃的なデザインとなっている。これに対してAtermWG1800HPは、ピアノブラックの光沢とサイドのシルバーのワンポイントが上品な印象で、控えめながら存在感のあるデザインとなっている。

 個人的には、いかにも速そうなWZR-1750DHPのデザインも好みだが、万人受けするのは、間違いなくAtermWG1800HPだろう。実際、コンパクトなだけでなく、さりげないデザインのため設置場所も選ばない印象だ。

 続いてスペックを比較していこう。以下は、AtermWG1800HPとWZR-1750DHPの主要なスペックを表にまとめたものだ。

【スペック比較】
NECアクセステクニカ
AtermWG1800HP
バッファロー
WZR-1750DHP
基本実売価格18980円19800円
本体サイズ
(幅×高さ×奥行きmm)
33×170×111/400g34×212×183/580g
消費電力最大17W最大18.2W
無線対応無線規格Draft 11ac、IEEE802.11n/a/b/gDraft 11ac、IEEE802.11n/a/b/g
通信速度1300Mbps(5GHz)/450Mbps(2.4GHz)1300Mbps(5GHz)/450Mbps(2.4GHz)
アンテナ3x3(内蔵)3x3(内蔵)
μEBG構造/μSRアンテナ×
ビームフォーミング×(対応予定)
中継機能
ゲストポート○(パスワード認証、時間制限あり)
有線WAN10M/100M/1000M×110M/100M/1000M×1
LAN10M/100M/1000M×410M/100M/1000M×4
USBポートUSB2.0×1USB2.0×1/USB3.0×1
簡易NAS
メディアサーバー
デバイスサーバー×
Webカメラ×
設定WPS
AOSS×
らくらく無線スタート×
スマートフォン向け接続設定QRコードAOSS2
スマートフォン向け設定画面専用画面
通信機能QoS○(Advanced QoS)
ペアレンタルコントロール○(ファミリースマイル)○(i-フィルター)
VPN×PPTPサーバー

 基本的なスペックは、どちらもほぼ同等となっているものの、細かな点でいくつかの違いがある。たとえば、価格は、実売価格でAtermWG1800HPの方が若干安く、サイズも前述した通りAtermWG1800HPが小さく、消費電力もわずかながらAtermWG1800HPの方が低い。

 アンテナに関しては、前述した新技術の投入がAtermWG1800HPの特徴となるが、WZR-1750DHPはDraft11acのオプションとして定義されているビームフォーミング(通信対象の端末の位置を判断して電波を集中させる)が、現段階で実装済みとなっている。同じく、ビームフォーミングに対応したクライアントが必要となるため、現状はWZR-1750DHP同士の組み合わせでのみ利用可能な機能だが、全方位になるべく遠くまで電波を飛ばそうという考えのAtermWG1800HPと、限られた出力の電波を特定のクライアントに対して集中的に絞り込むことで高効率な通信をするWZR1750DHPといった違いになるだろうか。

 なお、NECアクセステクニカによると、AtermWG1800HPでも、将来的にビームフォーミングに対応予定とのことなので、おそらく、ビームフォーミング対応クライアントが一般化してくるあたりには、同等の機能を備えることになるだろう。

 ハードウェア的な違いで目立つのはUSBポートだ。WZR-1750DHPは、USB2.0×1に加え、USB3.0×1も搭載しているが、AtermWG1800HPはUSB2.0×1のみとなっている。ただし、WZR-1750DHPの現状のファームウェアでは、USB3.0の性能を完全に引き出すことができておらず、将来的なバージョンアップで最適化予定としている。将来的にWZR-1750DHPを高速のNASとしても扱えるようになるのはうれしいが、現状は単純にUSBを2ポート使えるというアドバンテージに留まりそうだ。

 また、USB関連の機能では、WZR-1750DHPが将来的なファームウェアのアップデートでデバイスサーバー機能にも対応する予定となっている一方で、AtermWG1800HPはWebカメラを利用した監視ソリューションに対応している。このたありは、どちらの機能が自分にとって必要かで判断すべきだろう。

 設定面では、スマートフォン向けの機能に注目だ。WZR-1750DHPは、AOSS2に対応しており、端末を問わず、クライアントアプリ不要で、ボタン設定が可能となっている。対して、AtermWG1800HPは、QRコードによってスマートフォンやタブレットの接続設定を簡単に実行することができるが、あらかじめアプリをダウンロードする必要がある(Android4.xはWPSを使えばアプリ不要でボタン設定可能)。

 どちらも簡単に設定できるため、使い勝手は互角と言って良いが、AtermWG1800HPは、アプリダウンロードする一手間が必要な点と、iPod touchなど無線LAN以外に通信手段を持たないiOS搭載機で接続する場合は、手動設定が必要になるのが違いと言えるだろう。

 このほか、WZR-1750DHPには、VPN接続に活用可能なPPTPサーバー機能、ゲームなどのジャンルを選択するだけでQoSを簡単に設定可能なAdvanced QoS機能が搭載されているが、これらの機能はWZR-1750DHPをルーターモードで利用した場合のみ有効になる。既存のルーターの配下にアクセスポイントとして接続する場合は使えないので、これらの機能目当てで購入する場合は接続方法に注意しよう。

AtermWG1800HPでは、QRコードを利用してスマートフォンを簡単にセットアップ可能
AtermWG1800HPの設定画面。標準ではW52(36/40/44/48chの5.2GHz帯)をすべて利用し、80MHz幅を確保
USB2.0のみの対応となるが、USBメモリーやUSB HDDを接続して簡易NASとして活用可能

パフォーマンスを比較する

 さて、本題とも言えるパフォーマンスを比較してみよう。以下は、木造3階建ての筆者宅の1階に、AtermWG1800HP、WZR-1750DHPを設置し、各フロアから同一機種をイーサネットコンバーターとして利用し、FTPで速度を測定した結果となる。

(1)FTP転送速度(専用クライアント)

【(1)FTP転送速度(専用クライアント)】
親機子機使用周波数帯・速度GETPUT
有線LAN1000BASE-T887.18893.52
AtermWG1800HP5GHz-1000BASE-Tコンバータ5GHz(1300Mbps)1F186.71463.31
2F186.43400.94
3F127.26236.02
WZR-1750DHP5GHz-1000BASE-T中継5GHz(1300Mbps)1F190.69500.37
2F169.72364.7
3F154.25283.29
  • クライアント:VAIO Z VPCZ21(Intel Core i5-2410M 2.3GHz、メモリ4GB、128GB SSD、Windows 7 Professional 64bit)
  • FTPサーバー:Synology 1512+(3TB HDD×5 RAID6、メモリ1GB)
  • 100MBのZIPファイルを転送
  • 2.4GHz帯は標準で20MHz幅に設定されているため20/40MHz自動選択に変更して計測
(1)FTP転送速度(専用クライアント)

 1階の結果はWZR-1750HPの500Mbps越えが優位だが、2階ではAtermWG1800HPが400Mbpsを越えており、ほぼ互角と言って良い結果となった。それにしても、3階でコンスタントに100Mbps越えでファイルを転送できるのだから、どちらの製品も実にたいしたものだ。こういった値を目の当たりにすると、Draft11acの威力をあらためて実感させられるところだ。

コンバーターモードに設定された子機側のAtermWG1800HPの設定画面。リンク速度やチャネル利用状況などを確認できる

(2)FTP転送速度(ノートPC内蔵無線LAN)

 続いて、クライアントにノートPC内蔵の無線LAN(Intel Centrino Advanced-N 6250AGN)を利用して、同じく、FTPを計測した結果を見てみよう。

【(2)FTP転送速度(ノートPC内蔵無線LAN)】
親機子機使用周波数帯・速度GETPUT
AtermWG1800HPIntel Advanced-N 6250AGN5GHz(300Mbps)1F112.9186.43
2F77.84129.36
3F42.88105.47
2.4GHz(300Mbps)1F74.9591.11
2F59.457.28
3F38.9236.28
WZR-1750DHPIntel Advanced-N 6250AGN5GHz(300Mbps)1F117.9200.47
2F82.68119.59
3F58.9583.51
2.4GHz(300Mbps)1F90.12148.57
2F56.0791.11
3F54.1867.95
  • クライアント:VAIO Z VPCZ21(Intel Core i5-2410M 2.3GHz、メモリ4GB、128GB SSD、Windows 7 Professional 64bit)
  • FTPサーバー:Synology 1512+(3TB HDD×5 RAID6、メモリ1GB)
  • 100MBのZIPファイルを転送
  • 2.4GHz帯は標準で20MHz幅に設定されているため20/40MHz自動選択に変更して計測
(2)FTP転送速度(ノートPC内蔵無線LAN)

 こちらは、5GHz対では大きな差はなかったものの、AtermWG1800HPでは2.4GHz利用時のパフォーマンスが若干劣る結果となった。これは、恐らくデュアルチャネルの利用可否の影響だ。WZR-1750HPは、2.4GHz対の設定で20MHz幅と40MHz幅のどちらを利用するかの2択となっており、標準は20MHz固定なので今回は40MHz幅固定でテストしたが、AtermWG1800HPは20MHz幅と40MHz幅を自動選択となっているため、標準設定のままでテストした。その結果、筆者宅の環境では20MHz幅での接続となったことから、近距離でも若干劣る値となっている。

 もちろん、環境によっては40MHz幅が確保されるうえ、AtermWG1800HPで40MHz幅を優先的に確保するように設定することもできるので、この差はあまり重要視する必要はないだろう。

2.4GHz帯は標準設定で自動切り替えになっているが、混雑している状況ではほぼ20MHz幅となる。優先設定にすると40MHz幅で確保されやすくなるが、結果は環境次第

 ここまで、本コラムで以前から採用してきたFTPによる計測結果を掲載したが、FTPではPUT(クライアント→サーバー方向)の速度に比べて、GET(サーバー→クライアント方向)の速度が半分程度になってしまう傾向が見られる。上限速度が低い今までの無線規格ではあまり差を気にする必要はなかったのだが、実効で数百Mbpsの通信となるDraft11acでは、この差が倍程度にまで広がってしまうため、今回は測定方法にiperfを加えることにした。

(3)iPerf速度(TCP Window Size 256K)

 iperfによる測定は、NECアクセステクニカも公称のスループットの計測に利用しているため、公称値との比較という意味でも判断しやすいだろう。

 まずは、NECアクセステクニカがWeb上で公開しているデータと同じく、TCP Window Sizeを256kに設定したときの値を計測したのが以下の結果だ。

【(3)iPerf速度(TCP Window Size 256K)】
親機子機使用周波数帯・速度UPDOWN
有線LAN1000BASE-T819938
AtermWG1800HP5GHz-1000BASE-Tコンバータ5GHz(1300Mbps)1F497513
2F432426
3F251298
WZR-1750DHP5GHz-1000BASE-T中継5GHz(1300Mbps)1F466488
2F352366
3F303274
  • PC1:VAIO Z VPCZ21(Intel Core i5-2410M 2.3GHz、メモリ4GB、128GB SSD、Windows 7 Professional 64bit)
  • PC2:Intel DC3217IYE NUC(Core i3、128GB SSD、メモリ4GB)
  • サーバー側:iperf -s -w256k、クライアント側:iperf -c [IP] -w256k -t60 -i1
  • サーバーとクライアントを変更してUPとDOWNを計測
(3)iPerf速度(TCP Window Size 256K)

 厳密に値を比較すれば、1階と2階ではAtermWG1800HPが若干高いが、測定タイミングなどの影響もあるので、ほぼ互角と言って良い結果と言えそうだ。とは言え、いずれも1階で500Mbps前後となるため、公称値と比べると物足りない印象がある。

(4)iPerf速度(TCP Window Size 4M)

 公称値と比べると物足りない数字となっているので、iPerfのパラメーターを調整して、さらに計測してみた。まずは、TCP Window Sizeを4Mにまで拡大して計測したのが以下の結果だ。

【(4)iPerf速度(TCP Window Size 4M)】
親機子機使用周波数帯・速度UPDOWN
有線LAN1000BASE-T823943
AtermWG1800HP5GHz-1000BASE-Tコンバータ5GHz(1300Mbps)1F432395
2F331356
3F252232
WZR-1750DHP5GHz-1000BASE-T中継5GHz(1300Mbps)1F853863
2F415473
3F388343
  • PC1:VAIO Z VPCZ21(Intel Core i5-2410M 2.3GHz、メモリ4GB、128GB SSD、Windows 7 Professional 64bit)
  • PC2:Intel DC3217IYE NUC(Core i3、128GB SSD、メモリ4GB)
  • サーバー側:iperf -s -w4m、クライアント側:iperf -c [IP] -w4m -t60 -i1
  • サーバーとクライアントを変更してUPとDOWNを計測
(4)iPerf速度(TCP Window Size 4M)

 AtermWG1800HPは、256kと4Mでさほど大きな違いはないが、WZR-1750HPは一気に800Mbps越えを実現することができた。実際の通信でTCPのWindow Sizeが4Mに達するかどうかは環境に依存するが、どうやら大量のデータを一気に転送する際にパフォーマンスが最大化される方向性で最適化されているようだ。

(5)iPerf速度(TCP Windows Size 256K, Parallel 3)

 今度は、「-P」オプションを利用し、3つのデータを並行的に送信し、その合計値(SUMで表示された値)を計測してみた。

【(5)iPerf速度(TCP Windows Size 256K, Parallel 3)】
親機子機使用周波数帯・速度UPDOWN
有線LAN1000BASE-T833930
AtermWG1800HP5GHz-1000BASE-Tコンバータ5GHz(1300Mbps)1F631728
2F510560
3F306333
WZR-1750DHP5GHz-1000BASE-T中継5GHz(1300Mbps)1F674675
2F468466
3F383321
  • PC1:VAIO Z VPCZ21(Intel Core i5-2410M 2.3GHz、メモリ4GB、128GB SSD、Windows 7 Professional 64bit)
  • PC2:Intel DC3217IYE NUC(Core i3、128GB SSD、メモリ4GB)
  • サーバー側:iperf -s -w256k、クライアント側:iperf -c [IP] -w256k -t60 -i1 -P3
  • サーバーとクライアントを変更してUPとDOWNを計測
(5)iPerf速度(TCP Windows Size 256K, Parallel 3)

 すると、今度はAtermWG1800HPが1階のDOWNで728Mbps(269Mbps+224Mbps+235Mbpsの3ストリーム)という値をマークし、2階でも500Mbpsを越えるという良好な結果が得られた。iperfによる計測となるため、あくまでも目安でしかないが、複数端末が同時に通信するような環境でも、豊富な帯域をうまく分割して、各端末で100Mbpsを越える通信を実現することができそうだ。もちろん、WZR-1750DHPも1階で600Mbps後半をマークしているので、このあたりもほぼ差は無いと考えてかまわないだろう。

(6)iPerf速度(ノートPC内蔵無線LAN、TCP Window Size 256k)

 最後に、ノートPC内蔵の無線LANから、iPerfを実行した結果を掲載しておく。こちらも、前述したFTPと同様に20MHz幅利用の関係で、AtermWG1800HPの結果が若干劣るものの、目立つような大きな差はなく、それぞれ安定した通信ができていると言えそうだ。

【(6)iPerf速度(ノートPC内蔵無線LAN、TCP Window Size 256k)】
親機子機使用周波数帯・速度UPDOWN
AtermWG1800HPIntel Advanced-N 6250AGN5GHz(300Mbps)1F188182
2F147128
3F84.8109
2.4GHz(300Mbps)1F84.291
2F45.456.7
3F36.642.9
WZR-1750DHPIntel Advanced-N 6250AGN5GHz(300Mbps)1F189173
2F161144
3F7658
2.4GHz(300Mbps)1F149162
2F121111
3F80.568.6
  • PC1:VAIO Z VPCZ21(Intel Core i5-2410M 2.3GHz、メモリ4GB、128GB SSD、Windows 7 Professional 64bit)
  • PC2:Intel DC3217IYE NUC(Core i3、128GB SSD、メモリ4GB)
  • サーバー側:iperf -s -w256k、クライアント側:iperf -c [IP] -w256k -t60 -i1
  • サーバーとクライアントを変更してUPとDOWNを計測
(6)iPerf速度(ノートPC内蔵無線LAN、TCP Window Size 256k)

好みで選んでOK

 以上、Draft11ac機の本命とも言える2製品を比較してみたが、パフォーマンスとしてはほぼ同等と考えて差し支えなさそうだ。当初、個人的には、優れたアンテナ技術で全域で安定的なAtermWG1800HPに対して、高い処理能力とビームフォーミングによって最大パフォーマンスを高めているWZR-1750DHPといった印象を持っていたが、結果的には、どちらもDraft11acのパフォーマンスを余すところなく発揮できる製品に仕上がっている。

 このため、パフォーマンス以外の視点で製品を選んでしまってかまわないだろう。サイズとデザイン優先ならAtermWG1800HP、USB3.0やVPNなど豊富な機能を重視するならWZR-1750DHPと、用途や好みで選んでも、まったく後悔することはないだろう。

 とは言え、ネックになるのは、どちらも価格だろう。現状、Draft11acの性能をフルに発揮させるには、どちらも同一機種を2台揃えなければならないため、4万円近い出費を強いられることになる。

 高速な無線LANは、Appleの手によってMacにいち早く搭載されることが多いが、その噂もまだ聞こえてこない。この春以降に登場予定のスマートフォンで採用が見えているが、やはりPCで標準的に使いたいところだ。このあたりはIntelにがんばってもらうほかないだろう。

 現状、リビングのテレビやレコーダーなどを無線LANで繋ぎたいというニーズがあるのであれば、文句ナシに、セットで購入することをお勧めしたいが、PCの対応状況や価格を見ながら、ゆっくり検討するといいだろう。

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。